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双鬼  作者: 鷹棒
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47話 ストーカー

「これが父さん……?」


 勝手なことだが、想像していた人物像との違いが生じていた。


 口調はさっきの本で分かっていたが、まさか普通に恋する人だったとは……。


 そういえば父さんが俺の父さんであるってことは母さんがいるはずだよな?


 それが彩花さん?


 いや、もしかしたら振られて違う人と結婚した可能性も?


 そこまで考えて俺の頭に一つの疑問が浮かび上がった。


 そもそもなんで夢に母さんがいなかったんだ?


 今も生きているのか?それとも……。


 いや、やめよう。


 そんなことを考えるより日記を優先だ。


 ———


 彩花さんについて、出せる限りの全力を尽くして調べ上げた!


 彩花さんの趣味、好きな食べ物、嫌いな食べ物、生年月日、恋愛経験、経歴。さらには行きつけの店や住所まで!


 まずは食べ物だよね。なんと好きな食べ物はラーメンだそうだ。あんなに可憐な見た目をしているのにね、ギャップだね。でも俺はそんな彩花さんも愛しているよ。僕もラーメンが好きなんだ。一緒に食べに行きたいなぁ。嫌いな食べ物はピーマンらしいね。あぁ、大人びた風格を漂わせているのに子供みたいな感覚をしているね。とっても可愛いと思うよ。そうだ、彩花さんは手芸が得意だそうだ。私は手芸はサッパリだからね。是非とも教えて欲しいよね。そうそう、彩花さんはなんと恋愛経験がないそうだ。あんなに可愛いのに恋愛をしていなかったんだ。意外だ。でも我が彩花さんの初めてなんだよね。それはとっても嬉しいよ。驚くことに彩花さんはそこまで頭が良かったわけじゃないらしいんだ。中学生までは普通の市立学校に通っていたらしいね。そこからこの高校に入学したっていうことは、とてつもない努力家なんだね。部屋の照明は机のみ。時計の針は0時を回っているのにも関わらずワークと向き合う彩花さん。なんて素敵なんだ。彩花さんは部活には所属していないんだよ。部活をせずに放課後は一人で遊んでいるみたいだね。誰とも群れない孤高の戦士。うーん、カッコいい。いやぁ、素晴らしいよ。一人で何しているかっていうと、なんとラーメン屋を巡っているらしいんだ。ワイルドだね。好きなラーメンを、最高なラーメンを探す旅。一緒に行きたいね。そして彩花さんの住所は!


 ーーー


「一旦やめましょうか」


 松島さんが全力で朗読しているところをかりんさんが焦るように止めた。


「どうした?気分が悪くなったか?」


 松島さんは不思議そうに聞いた。


「いやまぁ、それは否定しませんが……。それより!その文章絶対読まなくていいですよね!」


 かりんさんの意見に賛同する様に桃ちゃんと美玲ちゃんが強く頷いている。


 しかし松島さんが子供のような反論をした。


「この文章がな、興奮して書いたせいかもの凄く字が汚いんだ。しかも一切改行されていない。それを誠心誠意読んだ俺の努力は無駄だと?」


 ……無駄なんじゃないか?


 それは同感らしく。


「無駄に決まってるじゃないですか!」


 かりんさんはなんでこんなに怒っているんだ?


 女性として許せないことでもあったのか?


「そうピーピーピーピー騒ぐな。耳が痛ぇ」


「同感です。もう少し静かにできません?ここ地下なんで声響くんですけど」


 虎徹さんと潤さんが不満を訴えた。


「うるさい、レディの問題に口出ししないで……。そもそも治はどう思ってる……?」


 美玲ちゃんの問いに兄さんはこう答えた。


「正直いうと面白い」


 兄さんが表情一つ変えずに言ったからか、女性陣がとてつもなく引いた気がする。


「治、さいてー……」


 呟くような美玲ちゃん。


「兄さん、仮にも父親なんだよ」


「……早く続きを読みましょうよ」


 返事に困ったか、本当に早く続きを知りたいのか。


 正直なところ俺もどうなるのか気になっているので早くして欲しい。


「分かった。読み上げるぞ」


 女性陣はまだ納得していないようだが、まぁ仕方ない。


 これも任務のためだ。

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