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双鬼  作者: 鷹棒
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46話 恋心

「大丈夫か?」


 松島さんが俺に向かって聞いてくる。


「どうしてですか?」


 特に心配される理由が思い当たらず、キョトンとした顔で答えてしまった。


「いや……、親父さんの過去について書いてあった。かなり辛い過去だからな。気分が悪かったら一度休憩を挟むか?」


 そういうことか。


 親の……親族の悲しみを知って俺が……。


 でも俺は父さんのことをあまり知らないからな。


「お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫です。続けて下さい」


 俺の言葉に続いて兄さんも。


「俺も大丈夫です」


 松島さんは数秒考えた後、覚悟を決めたように言った。


「分かった。次は日記を読むぞ」


 松島さんは父さんの日記を()()()()()に取り、そしてその姿からは迷いが感じられた。


「先に言っておくぞ。俺は一度この日記を読んだことがある。この日記はお前たちにとって辛い内容となるだろう。辛くなったらいつでも言え。その都度休憩を入れる」


「……分かりました。お願いします」


 ここまで心配してくれるのか……。


 気を引き締めなければな。


 ———


 天才は日記をつけていたらしい。


 よって俺も今日から天才になるために日記をつけようと思う。


 俺の夢、原点と言い換えてもいいな。


 それは、天才科学者になること。


 将来は人のため、日本のため、世界のためになる発明をするんだ。


 今、俺は10歳だ。


 80歳まで生きられるとしたら、だいたい70年しか研究できない。


 じゃあ後10年で知識を蓄え、20歳から研究を始めよう。



 やっぱり化学っておもしろいな!


 化学反応式にはロマンが詰まってる!



 数学やっべぇ!


 ピタッとハマった瞬間が気持ち良すぎる!



 なんだよ、国内最高峰の高校なんて名前だけじゃねぇか。


 もっと詳しいこと学ばせてくれよ。


 図書室にも学生用の本しか置いてないし、大学見学のついでに論文でも読みにいくかぁ。


 それにしてもさっき見かけた子、可愛かったな。


 多分同級生だよな?


 機会があったら話してみてぇ!



 ウッヒョー!


 人生17年目にして恋を体験中!


 恋は心の病とかいうバカみたいな論文を信じてた俺がバカだったよ!


 恋は薬だ。


 乾ききった心を潤してくれる、神秘の水だ!


 一目惚れだったからな、告白しようかな?


 いや待て、計画もせずに告白して成功するはずがないだろう。


 少し考えれば分かるだろう。


 今まで蓄えた知識を総動員しろ。


 彩花(あやか)さんを振り向かせる方法を!

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