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双鬼  作者: 鷹棒
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40話 兄さんの過去

書き忘れていましたが、鉄平と松島は以前からの知り合いです。鉄平が1人で歩いているところを松島が発見し、そのまま養成所に引き取りました。例えるなら全く関わりがない副担任の先生くらいの距離感です。

「どうした?鉄平?」


 急に大きい声をかけたのにも関わらず、優しく返してくれた。


 この少しの会話だけでも、やっぱり兄弟なんだと自覚する。


 一緒に過ごした記憶はないのに……。


「兄さんは俺と一緒にいた記憶があるんだよね?」


「あぁ、あるよ。お前がなんで記憶を失ったのかも、()()()のことも」


 父さん?やっぱり夢や記憶に出てきた人は父さんだっあのか?


「あの、父さんって……?」


 俺の言葉を意図的に遮るように兄さんは言った。


「いや、それよりお前のことだ」


 俺はその言葉に従い、素直に「分かった」と了承する。


「お前が以前の記憶を持ってないのは、簡単に言えば頭を打っただけだ」


 それだけ?それだけで勿体ぶって言う必要あるのか?


 兄さんはこの疑問に答えるように言った。


「頭を打つって言っても、空から瓦礫が降ってきてそれが頭に当たったんだ」


 それの何がおかしいんだ?


「辺りには一切の建物がなかった。そして人間の足音も聞こえた」


「それってつまり?」


「故意的にやられたってことだ。相手はだいたい見当がついてるだろ?」


 もちろんだ。


「昨日の?」


「まず間違いないと思うぞ。俺とお前、そして父さんはあの組織からずっと逃げていた。お前が記憶を失ってから1年くらい経ったくらいで俺ははぐれたから、その後のことは全く知らない」


「はぐれた?じゃあどうやって生きてきたの?」


「たまたま司さんがいてな、それからずっとマフィアで育てられたよ」


 だろうな。俺がたまたま松島さんと出会って養成所に入ったのと同じような感じか。


「お前が覚えている最後の記憶はどのくらいだ?」


 兄さんに聞かれて俺は記憶を辿る。


「最後の別れだけは鮮明に覚えてるけど、その前の記憶はぼんやりとだけ……」


「別れっていうと?」


「父さんだよ」


「父さんは最後になんて言ってた?」


「それは……」


 答えようとした瞬間、松島さんが叫んだ。


「異能生物が出現したらしい!この近くだ!すぐに討伐するぞ!」


 さっきまでの和気藹々とした雰囲気は一転、すぐに引き締まった。


「了承」


 機動力のある桃ちゃんと拓人君、潤さんが真っ先に現場に向かい、俺たちは走ってそれを追いかけた。


「ごめん兄さん、また後で」


「分かった」

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