39話 移動
書きたいことというか、書かなきゃいけない情報を書くのを忘れてしまったので次回の前書きで補足しときます。今回、その情報は全く関係ないのでお気になさらず。
「なんか周りから見られてますねー」
拓人君の言う通り、街を歩くたびに市民の視線が俺たちに注がれる。
「それもそうでしょ。側から見れば軍服とスーツを纏った集団が固まってあるいてるんだよ?僕でも不思議に思うよ」
確かにそうだ。異能警察官が6人、マフィアが5人、そして松島さんの計12人。それが堅苦しい服装で歩いているんだ。それもそうだろう。
「あとどのくらいで着きますか?」
俺はもともとあまり目立ちたくない性格だ。
この注目がいつ終わるか分からない苦しみから早く逃げたいがために、松島さんに聞いた。
「本部を出る前に30分かかると言っただろう?出てからまだ5分も経っていない」
「つまり?」
「あと30分弱だ」
終わったな。
異能警察官だけだったらまだよかった。
少し目立つだけだから。
だが異能警察官の軍服とマフィアのスーツの見た目の相性が悪すぎる。
正直めちゃくちゃ目立つ。めちゃくちゃだ。
しかもそれだけではない。
気まずい。話づらい。会話が弾まない。
俺がそう考えていると、周りから会話が聞こえた。
「君って兎の子だよね?君の攻撃ホントに凄かったよ。威力だけでいえば虎徹さんより凄かったよ」
「ありがとうございます。しかしなぜマフィアの方々はあんなにも強いのですか?」
「それは司さんの鍛え方がすごいからかな?異能警察官とは違って異能の使い方じゃなくて、異能をどう使うかを学んできたからね」
「なるほど、もう少し聞かせてくれますか?」
「僕もお願いしていいですかー?」
「もちろん」
潤さんと後輩たちはもう順応しちゃってるよ……。
会話は別のところからも聞こえてきた。
「おい女!俺はまだバカって言われたこと許してねぇぞ!」
「はぁ、バカらしい…」
「お前バカしか言えねぇのか?語彙力が少ねぇなぁ!」
「語彙力は低い、又はないって言う…。無理して難しい言葉使わなくていい…。バカがバレる…」
「テメェやっぱりバカしかいえねぇんだろ?他に俺を罵倒してみろ!」
「阿呆、愚鈍、単細胞…」
「おいそれどういう意味だ!」
「これだからバカは…」
全面的に少女に同意しよう。
ん?そういえば名前知らないな。
俺は、チャンス!と思った。
今、名前を聞けば自然な感じで会話に入れる。
「あの……」
「そういえば君の名前ってなんていうの?」
先を越された!かりんさんめ!今日限りは恨ませていただく!
「狼美玲…。呼び名はなんでもいい…」
「おう、じゃあガキって呼ばせてもらうぞ!」
「好きにして、バカ…」
「私は美玲ちゃんって呼んでいい?」
「分かった…」
しかもスムーズに会話が進んでいるだと?
他には、虎徹さんと敦さん。松島さんと龍宮寺さんが話している。
余った。完全にあまりものだ。
待てよ?今話しているのは10人だよな?
つまりあと1人!
……兄さんだ!ちょうどいい!話したいこともたくさんあったしいい機会だ!
「……あの!兄さん!」




