34話 パシリ
サブタイトルが全く思いつきませんでした。
「とりあえず俺から話せることはこれくらいだ。これ以上は何も知らない。改めて隠していてすまなかった」
敦さんを責める人などもういない。
「大丈夫です。教えてくれただけでもありがたいです」
俺たちを代表してかりんさんが言った。
「そうか、ありがとう。明日のためにも早く寝ろよ」
敦さんはそれだけ言って寝室に歩いていった。
時計の針は10時を指している。
早く寝なければならないが、一つ気になることがある。
兄さんのことだ。
夢を信じるはバカらしいが、幼い頃は一緒にいて、7歳の頃にはもういなかった。
その間にはぐれたのか?
子供が1人で生きていけるのか?
そもそも何故兄さんは俺のことを覚えていて、俺は兄さんのことを覚えていないんだ?
考えても答えは出なかった。
俺は寝室に行くなり、倒れるように眠ってしまった。
起きたのは10時を回ったころだった。
寝室には誰もいない。
俺はリビングには誰かいるだろうと思って歩いた。
リビングにはみんなが集まっていた。
「鉄さんー、おはようございますー」
「おはようございます」
俺にいち早く気づいた拓人君と桃ちゃんが挨拶をしてくれたので、俺も挨拶を返した。
それにしてもなんで起こしてくれなかったんだ?今日は大事な日なのに…。
「鉄君昨日ボロボロだったでしょ?回復には体力を消耗するから疲れてるかな〜ってね」
疑問に応えるようにかりんさんが言った。
気遣ってくれたんだ。
「ありがとうございます!寝てた分も働けることありますか?」
「じゃあ飲みもん買ってこいや!サボってた分パシられやがれ!」
「了解です!金はどうしましょうか!」
「千円やる!釣りは好きにもってけ!」
「はい!行ってきます!」
寝起きなのに山本さんにパシられましたとさ。
近くのコンビニに行く途中、知っている人物に出会った。
兄さんだ。
「よう鉄平、怪我は大丈夫か?」
「大丈夫、兄さんは?」
「俺はお前と違って怪我してないからな」
そうだ、今は兄さんと2人っきり。昨日考えていたことを聞けるチャンスだ。
「兄さん、聞きたいことが…」
兄さんは話を遮るように言う。
「じゃあまたな」
兄さんは背中を向けて去っていってしまった。




