33話 情報
「俺に異能が宿った後、国に実験として利用されていたことは知っているな?」
もちろんだ。国からしても未知の力。知らないまま放置はできないだろう。
「俺が知っている情報はその実験の結果だけだ。何故異能生物が現れたのか、そもそも異能生物とは一体何なのか。核心に至る情報は一切ない。……いや、心当たりはあるがこれは明日話す」
「なんで明日なんですか?」
純粋に疑問に思った。
「そもそもマフィアと協力しなければ何も進まないからだ」
「なるほど…。さっきみたいに俺たちを信用していないとかじゃないんですよね?」
ついつい疑心暗鬼になってしまう。
「もちろんだ。そう思わせてしまったこと、謝罪する。すまなかった」
敦さんがこうも謝ってくると調子狂うな…。
「話を続ける。まずは異能の治癒力についてだな。鉄平や山本はもう体験したと思うが、異能を持つ人間は治癒力が異常に高くなる。その治癒力は調整可能で、短時間で治そうとすればするほど疲労が襲ってくる」
それを知っていればもっと戦いやすくなるのに何で教えてくれなかったんだ?
疑問に答えるように敦さんが言う。
「お前たちが知ってしまうと、体を犠牲にして戦うかもしれないと思った。俺はそんなお前たちを見たくなかった。そして今も見たくない。そもそも何故治癒力が高くなるかも分からないんだ。不用意に使うものではない」
「すいませんでした…」
俺は自然と誤っていた。
治癒以前に体をボロボロにして戦ってしまっていた。
「もう絶対に心配させません!」
敦さんは満足した顔をして言う。
「そうか、頼んだぞ」
「はいっ!!」
何があっても心配させない。そう心に決めた。
「次だ。山本とかりんが量産型と言われた件についてだ。結論から言おう。これについては完全に推測でしかない」
「それでもいいっす。教えて下さい」
珍しく真面目な顔つきで山本さんが聞いた。
「山本、お前たちが養成所にいたとき、周りの子供たちの異能は何だった?」
思い出そうとする山本さんに代わり、かりんさんが答える。
「犬と猫…だけでした」
「桃や拓人はどうだった?」
確認する敦さんに2人も同じように答えた。
「何人かは違いましたが大体はそうでした」
「同じくですー」
これってつまり…?
「友好性の異能生物は基本的に犬か猫が多い。それとさっきの戦闘で確信しただろう?異能生物は何者かによって作られている。この2種類の生物が大量に生み出されているんだ」
なるほど、でも何で量産型って名付けられたんだ?何者かが作ったっていうのはただの仮説だったはずだ。
俺は疑問をそのまま敦さんにぶつけた。
「それはただ一番有力な仮説だったというだけだ。20年前にも異能生物を使って街を襲おうとした人間がいたからな」
人間による襲撃は今回が初めてではない?
「話を戻すぞ。虎徹との戦闘中に山本は言われただろう?量産型しにては強い、と。それはつまり…」
「つまり俺たちはなるべくして弱くなったって事ですか…?力や機動力で桃や拓人に負けているのは量産型だからってことですか!」
山本さんは立ち上がりながら言った。
「やめて山本!」
「お前は納得してんのかよ、偶然得た異能の優劣で使える使えないが判断されることによぉ!」
「そうじゃない!敦さんの話はまだ終わってないでしょ!」
山本さんが敦さんの目を見た。
「考えてみろ。あの女性が言っていただろう?さらにいい異能を貰える、と。強力な異能はもう作れるんだ。なのにまだ量産型が作られている。量産型にも何かあるんだ。その何かはまだ分からないが…」




