25話 弱点
今まで、鉄平以外の視点は三人称で書いてたんですけど諸事情により鉄平視点にしました。
俺たちは言われるがまま、かりんさんの所へ向かう。
時間はあまりない。敵がもう一度攻撃する前に戻りたいな。
よく見ると、かりんさんたちは敵に爪を突き刺して静止していた。
あの硬い外壁に刺さるものなのか?
この疑問が顔に出ていたのか、かりんさんが答える。
「こいつの外壁は勢いのある攻撃、つまり桃ちゃんのとかね。それは通さないけど、ゆっくりと沈み込むようにやったら刺さるみたい。でもまぁ、これしか刺さらなかったけどね」
つまりは、攻撃に反応して防御しているけど、攻撃とみなされなければ防御されないわけだ。
しかしそれを知ったところで俺に攻撃する手段があるわけでも、余裕があるわけでもない。
「そんな事より弱点ね。ほら、ここの奥見える?」
かりんさんはそう言いながら敵の内部を指差す。
敵のちょうど中央だろうか?異能のオーラで見づらいが、そこだけ色が違う。
オーラは茶色だが、その部分は焦げ茶色。まさしく本物の熊の色と言っても過言ではない。
しかも、よく見ると形も熊に似ている気がする。
「確かに弱点みたいですね」
「私の攻撃が効かねぇんだったら力押しは無理だろ?どうすんだよ?」
桃ちゃんの言う通りだ。
ゆっくり掘り進むにしても、ちょうど腕一個分しか刺さらない。力押しも無理。
となるとどうするのか?
「そりゃ今から考える!方法思いついたらまた伝える!」
山本さんがそう言った。考えてなかったらしい。
了解、と言おうとした瞬間、はじめて聞く声が聞こえた。
「考えても無駄、バカなんだから黙ってて…」
「あぁ?テメェはじめて喋ったと思ったらいきなり悪口か?悪口はよくねぇ事なんだよ!分かったか!」
どうやらフードの少女の声だったようだ。
凄く透き通った声だったが、まさか毒舌少女だったとは…。
そんな事を考えているうちに、敵が体勢を立て直した。
「拓人君、行くよ!」
「了解ですー」
俺と拓人君は再度上空に飛び立った。
その頃、敦さんたちは女性と交戦していた。
戦闘が始まってから十数分は経っている筈だ。
しかし、敦さんと虎徹さんの2人でもまだ傷一つつける事が出来ていない。
身体の使い方とかそういう次元じゃない。
異能の使い方が違うのだ。
ただ纏うだけではなく、異能の力を放出する事。そしてそのタイミング。使わない部分の異能は解放せずに必要な部位に力を回す。
俺たちからしたら虎徹さんも異能の扱いが上手いと思っていたが、その何倍も上手い。
「何故そんなに異能の使い方が上手いんだ?」
虎徹さんの問いに対して女性はこう答える。
「当たり前でしょ?貴方たちよりも身近で異能を見てきた。使い方も教えてもらった。この異能が何なのかも知っている。貴方たちみたいな憶測だけの知識とは違うのよ」
「憶測だぁ?まるで異能の全てを知ってるみてぇな言い方だなぁ」
「あら?そう言ったつもりだったけど分からなかった?」
会話を聞いていた敦さんが口を開いた。
「ならばその知識、意地でも頂くとしよう」
「やってみなさいよ!」




