24話 張り手
サブタイトルがだんだん適当になってきてます。
その後も俺と拓人君は敵の攻撃を避け続けた。
一発二発と、被害が出ないように。
しかし、腕を薙ぎ払うだけだった敵が、攻撃方法を変えてきた。
敵は右腕を懐まで動かし、張り手の体勢を取った。
反射的にまずいと思った。
ヒグマの張り手を食らうと何十メートルも吹っ飛ぶと聞いたことがあるからだ。
例え運良く避けたとしても、風圧はさっきとは比べものにならないだろう。
そうしたら間違いなく被害が出る。
どうする!?
考えようとした瞬間、敵が動いたのが見えた。
「鉄さんー!」
拓人君はそう言いながら、俺を全力で上空に投げ飛ばした。
自分の体勢が崩れながらも。
張り手は拓人君に向かって勢いよく迫っている。
拓人君は避けれない。
俺も投げられた勢いで助ける事が出来ない。
瞬間、拓人君の姿が消え、その場には潤さんがいた。
「キャハハハッ!大丈夫か拓人!」
「なんとかー。ありがとうございますー」
「兎さーん、ちょっと怪我人の扱い雑じゃない?」
「うるさぇ!そんくらい働きやがれ!」
「いや、怖いな!」
考えるに、桃ちゃんが潤さんを連れてここまで跳んできた。そして潤さんを離して拓人君を回収した。という事だろう。
しかし何故潤さんを?
答えはすぐに出た。
張り手の先にはビルがあった。
あれに当たると瓦礫がどこまで飛ぶか分からない。そういう事だろう。
しかし潤さんでもあれは止められないのではないか?
答え合わせと言わんばかりに、張り手と潤さんの翼がぶつかる。
さっきの戦闘と同じように、潤さんの背中から衝撃が逃げた。
それもさっきとは比べものにならないくらい。
しかしそれも一瞬の出来事だった。
潤さんは張り手に耐えられず、音速を超える速度で上空に飛んでいってしまった。
幸いと言うべきかビルに当たる事はなかった。
もし当たっていたら、街の被害どころか潤さんの命が危なかっただろう。
潤さんのおかげで張り手は勢いを弱め、風圧で街が壊れる事もなかった。
いつまで耐えればいい?
俺たちは潤さんという貴重な戦力を失った。
いつまで耐えれる?
もう一度張り手が来たら耐えられない。
他の人たちの状況は?
俺は潤さんが飛ばされた衝撃から、そんな事を考えてしまった。
仲間を信じると決めたのに。
そうだ、信じるんだ!
いつまでだった耐えてやる。
そんな俺の意思に応えるように、かりんさんの声が聞こえた。
「やっと弱点を見つけた!鉄君たちは一回こっち来て!」




