22話 アドバイス
敵が動き出した。
巨体故か、動きが遅く見える。
「お前ら!早く逃げろ!」
虎徹さんが大きく跳躍をしながら言う。
余裕を持って避けられると思っていたが、取り敢えず指示に従って俺も跳躍する。
跳んだ直後、俺たちがいた場所は敵の腕が薙ぎ払われて抉られた。
腕が近づくにつれて加速したのだ。いや、加速したように見えたのだ。
「気を付けろよ、動きは遅く見えるが実際はあそこにいる鷲くらいは速ぇ」
虎徹さんは俺の近くに着地してそう忠告してくれる。
しかし拓人君クラスの速さか…。全力で躱そうとしなければ避けられないな。
「忠告ありがとうございます。しかしあれ、どうやって倒しますか?」
俺は感謝を述べながら、虎徹さんの考えを聞く。
それに対して、虎徹さんは腰に手を当てながら言う。
「そうだなぁ、正直分からん!まぁ取り敢えずあそこの女捕らりゃなんか聞けるだろ」
「適当ですね…」
「なんも分からねぇときは適当に考えた方がいい。分からねぇ事考えても分からねぇんだからよ。つまりだなぁ、お前は考えすぎだ!もっと適当にやった方が強くなるぞ!」
虎徹さんはそう言いながら、俺に指を刺してきた。
異能の爪を出したまま…。
爪が目の前に来た瞬間、「ヒィィ!」と、情けない声を出してしまったが、すぐさま姿勢を整える。
適当にやる。か…。
作戦を立てない方がいいという事か?それとも大筋だけを決めておく?
考えていると、また虎徹さんが俺に声をかける。
「そういうとこだ」
虎徹さんはそれだけ言って、女性の元は走っていった。
俺は状況を確認するために辺りを見回す。
偵察部隊の3人は、敵に攻撃を与えているが、全く効いている様子はない。
フードの少女、山本さん、かりんさんも同様に、敵に攻撃をしている。
偵察部隊の3人は、倒す事を目的とした攻撃を。山本さん達は、弱点を探るような攻撃を。
しかし、敵にダメージは一切ない。桃ちゃんの全力でさえ効かないのだ。
敦さんと虎徹さんは、女性を囲むようにして話をしている。
字面だけ見ると変態だが、至って真面目だ。
「結論から言え、あれを止める方法を教えろ」
敦さんが、威圧感のある声を発する。
それに対して女性は、
「知らないわよ、まぁでも右側を渡してくれたら考えてあげる」
「そんな事されるわけねぇだろうが!ふざけてんのか!?」
「至って真面目よ。早めに渡した方がいいと思うわ。街が大事ならね」
抵抗されても捕まえる自信があるらしい。それはあの2人も感じ取ったと思う。
しかし答えは揺らがなかった。
「仕方ないな。あれは止める、お前も捕らえる。街も守る、被害は出さない。そして何より、鉄平を守る」
敦さんの言葉に対して、女性は不敵に笑いながら言う。
「いい度胸ね、特別に全力で相手してあげるわ!」
女性は異能を解放させた。




