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双鬼  作者: 鷹棒
22/78

21話 右側

キリがいいので短めで。

 俺が地面に近づくにつれ、辺りの風景がより鮮明に見えてくる。


 異能生物はまだ暴れていないようで、その周りだけが荒れている。


 他の部分は以前の襲撃のままだった。


 ようやく人の顔が視認できるほど地面に近づいた。


 異能生物の足元にいる人は、20歳くらいの女性だった。


 その女性は、()()()()()()()()()()()()()()()()ように見える。


 その事を不思議に思いつつも、女性を助けようと軌道を修正した。


 女性との距離が5メートルくらいになっただろうか。無表情だった女性の顔に、急に表情が浮かんだ。


 歪な、歓喜に満ちた笑みだった。


 俺は反射的に後退してしまう。


 女性は俺の事を見つめながら言う。


「やっと見つけたわ!()()()()()!」


 何を言っているんだ?双鬼(そうき)?右側?


 俺は一つの考えに至った。


 虎徹さんが言っていた。マフィアに左側がいると。


 2対の鬼で双鬼?


 しかし何故()()()を探していたんだ?


 俺の思考を遮るように女性は声を発した。


「さぁ熊ちゃん、右側を捉えて!」


 女性は異能生物に指示を出した。


 異能生物はその指示に従うように、俺に向かって顔を向けてくる。


「おい!逃げやがれ!」


 虎徹さんの声だ。


 俺は言われるがまま、全力で後方に跳ぶ。


 周りを見ると、偵察に行った3人は住民の避難を済ませたようで、俺の近くに寄ってくる。声を出してくれた虎徹さん達は全員揃っているようで、これもまた俺の方に走ってくる。


 全員揃ったところで、敦さんが状況の説明を求める。


 これに対して、まずは潤さんが答えた。


「えー、まずは僕たちが来たときはあの熊はまだ小さかったです。住民の避難誘導してる間にすっごい大きくなってました。あとは、あそこにいる女性は最初から一切動いてません。同様に熊も暴れていません」


 それに続いて、俺が説明する。


「俺があの女性を助けようとしたら、こう言われました。やっと見つけた、双鬼の右側。と。その直後に異能生物に、俺を捕まえるように指示を出していました。敦さん達が来たのはその直後です」


「なるほど…。状況は理解した。敵は戦闘の意思があるようだな。俺たちは鉄平を捕らえられないように敵を倒す。マフィア、協力してくれるな?」


 敦さんがそうまとめた。まるで何故俺が狙われているのか、知っているかのように。


「当たり前だ、足引っ張んなよ!」


 虎徹さんは敦さんの問いかけに、当然だと言わんばかりに返事をした。



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