18話 量産型
俺の思考を遮るように桃ちゃんがドゴン!という音を辺りに響かせながら壁を蹴る。
虎徹さんに向かって突進しているが、虎徹さんは一切動かない。
まさか気付いていない?
そんなわけないだろうと思っていたら、拓人君の声が聞こえた。
「すいませんー!そっち行きましたー!」
拓人君の言う通り、潤さんが拓人君の拘束を難なく振り解き、虎徹さんと桃ちゃんの間に入る。
空中にいる桃ちゃんに避けれる筈もなく、勢いのついた蹴りは潤さんによって防がれる。
潤さんの後方には、さっきと同じように衝撃波が発生している。
桃ちゃんの攻撃は一撃では終わらず、空中で回りながら横蹴りやかかと落としなどを繰り出す。
しかし、すべての攻撃は潤さんによって防がれる。
強力な一撃でも、素早い連撃でも、潤さんの防御を突破する事は出来ない。全ての攻撃の衝撃を後ろに流されるから……、いや、突破できるかも知れない!
しかしこの作戦にはみんなの協力が必要だ。フードの少女と虎徹さんを抑えて貰いつつ、潤さんも自由に動かさない。そんな事が出来るのか…?
そんな事を考えていると虎徹さんが言葉を発する。
「お前らに俺たちを突破できるか?攻撃、防御、速度が揃ってる俺たちに比べてお前らはどうだ?そこそこ速くて、そこそこ強い、鬼と兎。そして異能の扱いがそこそこ上手い鷲か。そこの犬は量産型にしては強いな。あとそこに突っ立ってる中年はなんだ?上司面してるだけか?…あ〜、もう一方の量産型は逃げ出したか?まぁお前らの中で一番弱いからな、仕方ねぇか」
なんなんだ、量産型って…?
俺が疑問を言葉にする前に、潤さんが虎徹さんの発言に言葉を重ねる。
「いやいや、それは可哀想ですよ。あの猫が普通なんですよ、むしろ犬の方を褒めてあげましょうよ」
「ん?まぁ確かにな!そこの犬、お前は凄い!名前はなんだ!?」
虎徹さんの言葉に対して、山本さんはこう答える。
「量産型がどうとか知らねぇよ……だがよ!かりんを馬鹿にする奴に教える名前なんてねぇよ!!」
「あれ?お前ら量産型知らねぇの?」
虎徹さんは、山本さんの名前に対する興味など失せたように、話を切り替える。
「あぁ?量産型だぁ?そんなの聞いたこともなければ興味もねぇよ!」
「そうか?その割にはそこの中年の顔が暗いが?」
虎徹さんの言う通り、敦さんは少し顔を落とし、表情を暗くしている。
しかしそれも数瞬だけだ。
敦さんは覚悟を決めたように言う。
「この戦いに勝ったら俺の知ってる情報を全て教えてやる。だから山本、かりん、勝て!」
山本さんはこの言葉に対してなんの疑問も持たず、
「当たり前っスよ!」
と、威勢の良い返事をした。