14話 マフィアの実力
投稿時間が徐々に遅くなっている事、お詫び申し上げます。
俺は真っ先に虎徹さんの懐に潜り込む。
「お!速ぇなぁ!」
そう言いながらも虎徹さんは俺の拳を素手で受け止める。
「ほら!お返しだ!」
俺の腹に、しかも異能を纏っていない左側に衝撃が走る。
俺の拳を受けながらも回し蹴りを繰り出して来た。多分山本さんと同じだ。戦闘のセンスがいい。
だがこちらは2人いる。
回し蹴りの後の隙をかりんさんが見逃すはずがない。
かりんさんは虎徹さんの右足があった場所に滑り込む。体勢的にそこには攻撃出来ないからだ。
「おっ!やるな!」
虎徹さんはそう言うが、焦っている様子は全くない。
かりんさんが両手の爪で虎徹さんの背中を引っ掻く。
当たった!
誰もがそう思った。
しかし、虎徹さんは軸になっている足を使って、ヒョイっと跳んだ。
蹴りの勢いが残っているはずなのに片足だけで2メートル以上の跳躍。人間業じゃない…。
「あんまり女子は蹴りたくねぇんだけどな…」
それは本心なのか、かりんさんの後ろに着地し、襟を掴んで投げ飛ばす。
「異能警察官だろ!もっと真面目に戦ってくれよ!」
虎徹さんはまだまだ余裕があると言わんばかりに俺たちを煽る。
さぁ、どうやって戦う……?
この攻防と同時に、拓人君たちも戦っている。
路地裏のように、壁が多い所は桃ちゃんの独壇場だ。能力の都合上、立体的な動きが出来るからだ。
その強みを活かして、桃ちゃんは縦横無尽に跳び回る。
だが、潤さんは惑わされる事なく落ち着いている。おそらく桃ちゃんが攻撃しても防がれるだろう。
それは拓人君も分かっている。
翼でバサッ!という音を響かせ、空に飛翔する。
そのまま空中で舞うように動きながら、足を使って攻撃し続ける。
潤さんは全ての攻撃に翼を使い、冷静に対処する。
だが今回は拓人君の方が一枚上手だった。何度目かの攻撃で、蹴りではなく掴みを繰り出した。
それを避ける事が出来なかった潤さんの翼は、拓人君に投げられ大きく仰け反る。
ガラ空きになった潤さんの腹に向かって、すかさず桃ちゃんが急接近する。
「キャハハハハハッッ!!やっと開けてくれたなぁ!」
桃ちゃんがそう叫びながら前蹴りを放つ。
それに対して潤さんは、空中なのにも関わらず、翼を使わずに身体を捻り、掴まれていない方の翼で受け止める。
その瞬間、潤さんの背中から衝撃波が発生した。
堪らず桃ちゃんが質問をする。
「何やったんだよ?」
「何って…、衝撃を受け流しただけですけど…。ていうか怖!」
平然と言っているがこれも人間業じゃない。
桃ちゃんと拓人君が後ろに飛び退き、話し合う。
「どうしますかー…?」
「頑張る!」
そっか、拓人君はまだ桃ちゃんのこういう所を知らないんだ…。
俺がそんな事を考えていると拓人君は、さも当たり前かのように言った。
「ですよねー。それ以外の選択肢なんてありませんよねー!」
全面的に同意している…。
4人全員が後退した。2対4なのにだ。そのくらい敵の2人は強い。
「おいおいお前ら!揃いも揃って同じような戦い方ばっかだなぁ!まさかその戦い方しか教わってないのか!?」
「何が言いたいんですか…?」
虎徹さんの言葉に思わず質問を返す。
「ん?あぁ分からなかったか?要するにだなぁ、お前ら弱すぎる。話にならん!前も言ったよなぁ、その程度でこの街が守れんのか?ってな」
確かにマフィアと比べると俺たちは弱い。だが一つ気になる。
「街を守るために法を守らないんですか?犯罪者を捕まえるのは警察の仕事です。俺たちの仕事じゃない」
「は〜、なんも分かってねぇな…。国を、街を、人を守るために法律があるんだろ?なんで法律が俺たちを邪魔するんだ?どうしてそうなってるか知ってるか?」
虎徹さんは締めくくるように言葉を紡ぐ。
「司さんが元暴力団のボスだからだってよ…。くだらねぇよなぁ!司さんは暴力団やる前から国に訴えてたんだよ!国が聞く耳持たねぇから暴力団やってたんだよ!不用意に人を傷つけた事すら無ければ、守り続けてたのにだぞ!おかしいとは思わねぇのか?」
当たり前の事だがマフィアにも俺たちにも考えがある。
そうなった時に出来る事は3つだ。現状維持。どちらかの意見に従う。そして、双方が納得する妥協案を提示する事だ。
今の俺たちが取るべき選択肢は3つ目だ。
探せ!探し出せ!最高の答えを!
「どうする、まだやるか?」
これに対して、かりんさんはどう答えるか悩んでいる様子だ。
退くのが正解か、戦うのが正解か。ここで退いたらもう話す機会は無いかもしれない。だが戦って俺たちの実力を示せるような気もしない。
数秒後、かりんさんは俺たちに小声で聞いてくる。
「まだいける?」
かりんさんはやる気みたいだ。
それを感じ取った俺たちは「はい」と肯定した。
ただ戦うだけでは駄目だ。この後どうするか考えないと…!
「やる気みたいだな、さっきまでのが本気じゃない事を望むぞ!」
戦闘が再開した。
先手必勝と言わんばかりに桃ちゃんが虎徹さんに向かって跳躍する。
さっきの分担だと絶対勝てないから臨機応変に対応するよう、かりんさんから言われたからだ。
虎徹さんは桃ちゃんの前蹴りを半身で躱す。
「クソッ!なんで避けれんだよ!」
桃ちゃんは悪態をつきながらも、着地と同時に跳躍し、何度も攻撃する。
虎徹さんはそれを軽々といなし続ける。
桃ちゃんだけでは勝てないなら2人で攻撃するまでだ。
3人の中で桃ちゃんと同じような攻撃が出来るのは俺だけだ。
いつものように、直線的な跳躍のための姿勢になり、虎徹さんが桃ちゃんの攻撃をいなした瞬間に跳ぶ。
いなすために半身を反らした姿勢の虎徹さんに回し蹴りを放つ。
だが虎徹さんは、そうなるのが当たり前かのような自然な動きで躱し、また俺の左半身に蹴りを入れる。
「ガハッ!」
肺の中の酸素が抜ける。
「お前もあいつを見習えよ、……あぁ!あいつって言っても知らねぇんだったな!」
虎徹さんがよく分からない事を言うが、既に桃ちゃんは虎徹さんを射程範囲内に収めてる。
かなり厳しい姿勢で俺を蹴ったため、おそらく回避は不可能。
そう思っていたが、今まで何の存在感も発していなかった潤さんが止めに入る。
それと同時に拓人君とかりんさんが飛び出す。
拓人君は一直線に潤さんの所へ、かりんさんは桃ちゃんの攻撃を躱された時の為に虎徹さんの後方へ。それぞれが、仲間が絶対に失敗しないと思っている。いつも一緒にいるからこその信頼関係だ。
拓人君は潤さんを掴み、少しだけ位置をずらした。
その少しが有れば桃ちゃんは攻撃を当てられる。
桃ちゃんは頭上から急降下しながら縦に一回転して勢いをつけ、踵落としを繰り出す。
流石の虎徹さんでも避けるのは困難だったのか、かなり無理な姿勢に身体を捻る。
その無防備な身体にかりんさんが四方八方から爪を使って攻撃する。
ようやく攻撃が当たった。ように見えたが、一瞬の内に桃ちゃんとかりんさんが光の如き速度で吹っ飛ぶ。
「はぁ〜、女子を傷つけちまった…。どうしよう…」
そこに立っていたのは、手先から長く伸びた爪を生やした虎徹さんだった。
さっきまでは爪なんてなかった筈だ…。まさか異能を部分的に解放している…?そんな事出来るのか?
いや、今はそんなことより2人の心配だ。
「拓人君!少し抑えてて!」
「了解ですよー!」
一瞬の迷いもなく了承してくれたが、その顔には焦りが浮かんでいた。
早くしなければ!
そう思っていたところに潤さんの声が聞こえた。
「いやいや、僕たちも今君たちを襲うほど大人気なくはないよ」
そう言って力を抜いて両手を上げていた。
虎徹さんも同意見なのか、一切動かない。
拓人君は敵の2人を信用してこっちに来る。
かりんさんと桃ちゃんの2人とも特に目立った傷はなかった。
おそらく手加減されていたのだろう。
数秒も経つと、2人は目を覚ました。
それを見計らってたかのように虎徹さんが言う。
「お前らのコンビネーションはいいと思う。正直俺たちより良い。だけど個人としての戦闘力が弱すぎる。兎と鷲がギリギリ及第点ってとこだな」
虎徹さんがいきなり俺たちの分析をし始めた。
「何のつもりですかー?」
拓人君が少し怒りの混ざった声で質問をする。
「なぁに、別に俺らはお前らが強くなってくれた方が嬉しいんだよ。今はそんな雑魚でも一応平和のために戦ってるみてぇだしな」
虎徹さんが嘘偽りなく言う。
「あとそこの鬼、お前の異能はもっと強ぇんだから使いこなせよ。使い方に無駄がありすぎる」
思い出したかのように俺に向かって言う。
まるでこの能力を知っているかのように……。
ようやく戦闘シーン書けました!書くのに時間がかかるけど書いていて1番楽しい!
ここで一つお願いなのですが、お時間がございましたら感想を書いていただけないでしょうか?今の私の作品は、自分が自己満足のためだけに書いているような状態です。ですが、書くからには面白い作品に仕上げたいです。「ここが良い」「ここが悪い」それだけでも今後にとても役立ちます。この作品をより良い作品にするために、よろしくお願いします!