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双鬼  作者: 鷹棒
12/78

11話 山本

キリがいいので今回は文字数少なめです。

 夢だ。昨日の続きの。



 俺を庇うように走っていた少年が転んでしまった。


「大丈夫か!」


 すかさず中年の男が少年に駆け寄り、安否を確認する。


 それに対して少年は無事を伝えるように、


「大丈夫だよ、それより怖い人たちは?」


「あぁ、それなら大丈夫だ。なんとか撒けたよ」


 男が少年を、安心させるような優しい声で語りかける。


 少年が言った『怖い人たち』とは、おそらく俺たちの事を追っていた人物たちだろう。


 男の声で安心したのか、少年は元気な声を出す。


「そっか、じゃあ()()()ゆっくりご飯食べれるね!」


 それに対して男は笑顔で、だが少し申し訳なさそうに答える。


「そうだな!今日はご馳走だぞ!」


「ご馳走?なになにー?」


 少年は興味深そうに男の顔を覗き込む。


「そう焦んなって」


 そう言って男は少年の肩を掴み遠ざける。


「よーく聞けぇ!」


「うん!」


「今日のご飯は………米だ!!」


「え……、本当?」


「本当だぞ!」


「やったー!!」


 少年は、信じられなさそうな顔を浮かべた後、飛び上がって喜んでいた。


 この頃は、良くて芋、いつもは人参などを拾って食べていた。


 そんな中で米を食べられるなんて、そりゃ飛ぶほど喜ぶだろう。ましてや子供だ。


「いただきまーす!」


 少年は元気に声を出し、米を頬張る。


「おいしー!」


「そうか、よかったよかった」


 男は心の底から嬉しそうだった。


「どうだ鉄?お前も食べるか?」


 男は俺にも声をかけてきた。


 その言葉に対して「食べる!」と返そうとした途端、頭に衝撃が走る。



「ん?なんだ?」


「くかー、くかー」


 どうやら山本さんの腕が俺の顔に落ちてきたようだ。


 時刻は6時丁度。


「起きるか」


 俺は布団から出て、リビングに向かう。


 リビングには昨日と変わらず敦さんと桃ちゃんが居る。


「おはようございまーす」


「おはよう」


「おはようございます」


 2人から優しさに包まれたような声音で挨拶を返された。


 俺は朝のシャワーを浴びて服を着替えた。


 時計を見ると、6時半を指している。


 リビングを見ると、寝起きなのか少し髪がボサボサしているかりんさんが欠伸をしていた。


 そんな事より時間だ。


「そろそろ2人を起こしてきますね」


「任せた」


 もうすぐ桃ちゃんのご飯が出来る。


 やっぱりご飯は出来立てが一番美味しいからな。


 まずは拓人くんからだ。


「拓人くーん、起きてー」


「むにゃむにゃ、スペシウムサイクロンインフィニティアタックをくらえ……」


「それはどういう事!?」


 良くわからんが放置だ。


「山本さん!起きて下さーい!」


 さぁ、まずは軽いジョブだ。


 すると、


「ん?あぁ、分かった。おはよう」


 山本さんはそう言って布団から出てきて、すぐにリビングに向かう。


 どういう事だ?まさかあの山本さんが風邪を!?


 いやいやまさか、バカは風邪をひかないとかなんとか。


 そんな事よりも拓人くんがまだ起きていない。


「拓人くーん」


「むにゃむにゃ、スペシウムサイクロンインフィニティアタック零式でも倒せないだと?」


 なんか増えたし…。


「とりあえず起きろー!」


 俺はそう言って拓人くんの布団を引っ剥がす。


 だが、異様に重い。


 それもそのはず、拓人くんが布団を全力で掴んでいたからである。


 拓人君ごと布団を宙に放り投げた。


 すると拓人君は体操選手のように宙を舞い、綺麗に着地する。


 うーん、97点!


 拓人君は欠伸をしながらリビングに向かう。


 それに続いて俺も行くと、そこには朝食とは思えない程豪華な料理が並んでいた。


「いただきます」



「ご馳走様でした」


 桃ちゃんの料理を食べ終わった俺たちは、昨日決めたように、調査の続きのための準備をする。


「行ってきます」


 山本さんが1人で外に出て行った。


 買い物か?


 いや、買い物に軍服を着ていく必要はない。


「敦さん、山本さんってどこ行ったんですか?」


 俺は気になって敦さんに聞いてみた。


「昨日の夜、鉄が寝た後に1人で俺の所に来てな。「単独でマフィアの調査させて下さい!」と、頼んできたんだ」


「にしても早くないですか?まだ7時ですよ?」


「まぁあいつなりの考えがあるんじゃない?」


 かりんさんがそう予想した。


「何か知ってるんですか?」


 かりんさんの言い方から、何か事情を知っているかのように感じた。


「ん?あいつの性格の問題よ」


「そういえば養成所の頃からの付き合いですもんね」


 養成所で5年、異能警察官で4年、合わせて9年の付き合いだ。


 9年っていうと、だいたい小学校と中学校で毎年クラスと班が同じ。だと考えたら分かりやすいか。


 かりんさんたちは19歳、だいたい人生の半分くらいを一緒に過ごして来たんだ。


 そりゃ性格について語れるのにも納得だ。


「普段の山本さんからは考えられませんね」


「確かにね。あいつ普段はバカやってるけど、正義感は人一倍強いからね。龍宮寺を逃したのに負い目とか感じてるんだと思う」


「でも情報は持ち帰ってくれましたよね?」


「言ったでしょ?情けで貰ったって。それが悔しかったんでしょ」


「なるほど」


 確かに山本さんらしいな。


 そう思っていた途端、急にかりんさんが提案してきた。


「そうだ!聞きたい?山本の昔話」


 山本さんにはお世話になっている。


 心の強さでも、戦闘の強さでも頼りになる。


 そんな山本さんの過去か…。


「是非お願いします」

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