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双鬼  作者: 鷹棒
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10話 謎

毎日午後6時に投稿を目安にしていましたが、外出していたため遅れたしまった事をここにお詫び申し上げます。

 俺たちはその後も調査を続けたが、何の手掛かりも見つける事が出来ずに本部に帰る。


 得られた情報は、確証はないがマフィアのリーダーの名前のみ。


 ありえないほど綺麗な路地裏と、懐かしい雰囲気を漂わせた男について。


 謎を多く残した調査となった。



「ただいま帰りました」


「おかえり」


 敦さんに挨拶を済ませた俺は軍服を脱ぎ、荷物を片付ける。


「あれ、山本さんは?」


「まだ任務から帰ってきていない」


「任務?」


「あぁ、異能生物が現れた」


「またですか…」


 どうやら異能生物の大量発生は昨日だけの出来事ではなかったようだ。


 でもまぁ予想はしていたからそんなに驚きはしない。



 そろそろ太陽が沈もうとしている。


「シャワー行って来ますね」


 俺は任務でかいた汗を流すために服を脱衣所に脱ぎ捨て、風呂場に直行する。


 蛇口を捻り、桶にお湯を溜めながら考える。


 あの男は誰だったのか、と。


 まず違和感なのが、俺の記憶と夢に見た人物が違う事だ。


 記憶では俺ともう1人、40歳弱くらいの男。


 対して夢では記憶にあった俺を含めた2人と、俺より少しだけ背の高い少年。


 確か記憶の時の俺の年齢は7歳。


 だが夢ではもう少し幼かった。


 どっちかの情報が間違っている…?


 それともどちらも合っていて、その間に何かが起きた…?


 何はともあれ、考えても分かるようなものではない。


 まぁ可能性としては、あの男が赤の他人の可能性もあるしな。


 そう割り切ってみたものの、気になるものは気になる。


 そう考えつつ、俺はシャワーを浴び終わり、風呂場を出る。


「どけー!!」


「うわぁぁ!!」


 山本さんが全裸で飛び蹴りをかまして来た。


 包み隠さずだ。


 風呂場には山本さんを躱す事の出来るスペースなんてない。


 直撃だ。


「何するんですか!?……ってどうしたんですか、その怪我?」


「ん?まぁ色々とな……」


 今日顔を合わせるのは二度目だが、いつもと違う表情なのは火を見るよりも明らかだった。


 怒っているような、でも悔しそうな、そんな表情をしていた。



 俺は山本さんに風呂を譲り、服を着てリビングまで行く。


 そこでは敦さんとかりんさんが話し込んでいた。


「本当ですか!?」


「あぁ、山本が持ち帰った情報から推測するに、まず間違い無い」


「なるほど……やっぱりあそこが……」


「何の話ですか?」


 俺は2人の会話が気になったので質問をする。


 山本さんがあれほどまでになって得た情報。それが何なのかを知りたい。


「山本がマフィアのリーダー、龍宮寺司と戦ったんだって…。それであんだけ怪我して…」


「龍宮寺と!?やっぱりマフィアのリーダーだったんですか!?」


「そうよ。それで戦闘が終わった時に情けで渡さらた物がこれ」


 かりんさんはそう言って俺に一枚の紙を渡す。


「これって…!」


 なるほど、さっきのかりんさんの反応にも納得がいく。


 そこに書かれていたのはマフィアのアジトの位置。


 あの綺麗すぎる路地裏だった。


「ですがあそこはあくまで路地裏ですよ?アジトに出来るスペースなんて……」


「地図をよく見ろ」


「はい」


 敦さんに言われた通りに、路地裏を指している地図をもう一度見直す。


 すぐに分かった。


 路地裏の形が俺たちの探索した形じゃない。


 いくつもの広いスペースがあり、そこに通路が延びている。そんな印象を受ける。


 でもどういう事だ?


「これってつまり?」


「マフィアのアジトは地下にある」


 そういう事か、どうりで見つからなかったわけだ。


「ともかくこれである程度の情報が揃ったな。マフィアのリーダーとアジト。これが分かれば後はマフィアの構成員だけだ」


「そうですね」


「では明日からはアジトの周りで調査をする」


「了解」



「あー気持ちよかった」


 山本さんが風呂から出てきた。


『あれ?山本さん、怪我は…?」


 さっきまで確かにあった、おびただしい量の傷がなくなっている。


「ん?あ、ほんとだ」


 そういえば昨日の俺もそんな感じだった気がする。


 なんなんだ、この現象は?


 ただ怪我の治りが早いだけ?


 いや、それはないだろう。


 異能の力?


 今まで擦り傷とかは治るのに時間がかかってたぞ。


「まぁ難しい顔すんなって。とりあえず治ったんだからいいだろ」


 山本さんはそう言って俺の背中を勢いよく叩く。


 だが、いつもの山本さんのような元気さはなかった。


「そうですね…」


 異能の謎は深まるばかりである。



「ご飯出来ましたよー」


 桃ちゃんがみんなに声をかける。


 異能警察官ではみんなで食卓を囲んでご飯を食べるのがルールだ。


 まぁ、誰かが決めたわけじゃないけど…。


 食卓にはサラダや焼き魚、味噌汁などの多種多様な料理が並んでいる。


「うまそうだな!」


 山本さんが犬のように舌を出して寄ってきた。


「ちょっと山本!行儀悪いでしょ!」


「あ"ぁ"?飯がうまそうなんだから別にいいだろ!」


 良かった。いつもの元気な山本さんに戻ってる。


 とりあえず、何があって元気をなくしていたのかは聞かない方がいいだろう。


 そんな事を考えている内に、みんなが食卓についていた。


「いただきます」


 全員が同時にそういうと、大皿に乗っていた唐揚げが一瞬で消失した。


「ちょっと山本!みんなの分も残しなさいよ!」


「ううへえ!あやいおんあちあろお!」


「食べながら喋るな!」


 おそらく「うるせえ!はやいもんがちだろ!」とでも言ったのだろう。


 だからといって大皿いっぱいの唐揚げを一気に消しますかね〜?


 こんな騒がしい食卓でも残った3人は静かに食べている。


 ときどき敦さんが料理を褒めて、それに対して桃ちゃんが感謝しているようだ。


 うーん、温度差がすごいな。


 片や取っ組み合いをはじめ、片やパクパクとご飯を食べ進めている。


 俺も敦さんを見習って料理を褒めてみよう!


「いやー、桃ちゃんが来てから料理が美味しくなったよね」


「ありがとうござ…」


「ねぇ、それって前までの料理が美味しくないって事?」


 桃ちゃんが感謝しようとしてくれている途中で、かりんさんが口を挟む。


 桃ちゃんが入隊するまでは料理担当はかりんさんだったのだ。


「いやーそのー……そんなつもりで言ったわけではなくてですねーはい…」


「でも言ってる事はそういう事よね?」


「あーはい、そのーえっとー……」


「すんませんでした!!!」


 俺はかりんさんに向かって、天地を穿つ程の勢いで土下座をして謝罪する。



「ご馳走様でした」


 災難だった。かりんさんの機嫌を損ねるとあんなに大変だったとは…。


 食事の後は各自で自由に過ごしている。


 敦さんは筋トレ、山本さんとかりんさんは追いかけっこ、桃ちゃんと拓人くんはテレビを観ている。


 俺は特にしたいこともないので明日の支度だけ済ませて寝室に向かう。


 時刻はまだ8時くらいだが、まぁいいだろう。


 今日出会った謎の男と、怪我の治り方について考えていたはずが、いつの間にか眠ってしまった。

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