9話 マフィア
そういえば私は前書きというものを全然書いていないような気がします。かと言って書くこともないんですけどね。
あっTwitterのフォローよろしくお願いします。くだらない事を呟いています。→@Takabo_narou
「なんか変な所に出ましたねー」
俺たちはスーツの男が消えていった路地裏を進んでいた。
拓人君の言う通り、普通の路地裏とは少し違う気がする。
綺麗すぎるのだ。
当然人はいないし、ゴミも無ければシミもない。よく見れば、今は点いていないが照明もある。
「とりあえずこのまま手当たり次第に探すしかないね」
かりんさんの言う通り、それ以外無いと思う。
だが、この道は枝分かれが多い。まるでアリの巣のようだ。手当たり次第といっても時間がかかりすぎる。
「手分けして探索しますか?」
俺はこう提案した。それに対して桃ちゃんが、
「それは得策では無いと思います。もしここがマフィアのアジトなのだったら、スーツの男も居るはずです。ただでさえ戦力差があるこの状況で戦力を分散させる事はリスクが大きいと考えます」
「そうね。1人や2人の状況で出会しても多分勝てない。だったら少しでも安全を取りたい」
かりんさんも桃ちゃんと同意見のようだ。
「そうですね」
そんな事を話していたら大通りに出た。
流石東京だ、人が多い。
「どうしますー。戻りますかー?」
「いえ、あそこがアジトって確証がないからこのまま進むよ」
「分かりましたー」
俺たちは人混みを掻き分け、一直線に進み続ける。
「マフィアってなんでそんな偽善者みたいな事してるんですかねー?」
拓人君が疑問を溢す。
「さぁ?でも、平和を守るために法が邪魔なんじゃないかな?」
「そうかもね、犯罪者を止める事の出来る力を異能生物に対してしか使えないのがもどかしいのかもね」
「私は過去に、警察官に異能の行使を認めるか否か。という議題で国会が会議してるのを見たことがありますよ」
「それいつの話?」
「確か15年前だったと思います」
「って事は1歳の時に見た……?」
「いえ、再放送です」
「ですよね〜」
という事は、マフィアは国の方針が気に食わないのかな?
「そういえばその議題の結果に猛反対した人が居るって聞きましたよ。名前は確か…龍宮寺司。だった気がします」
「それって!?」
さっきまで聞いているだけだったかりんさんが反応した。
「かりんさん、何か知ってるんですか?」
「うん、龍宮寺って確か当時の暴力団のボスとして有名だったはずよ」
「暴力団のボスがなんでその結果に反対したんですか?……まさか!?」
「まぁ予想だけど多分そうだと思う…」
確信は持てないが、手掛かり…それも特大の手掛かりを得る事が出来た。
「帰ったら調べてみますか……ッ!」
「どうしたの?」
「いえ、なんでも」
今俺の隣を1人の男が通った。
俺より少し背丈が高く、スーツに身を纏っていた。
そして何より懐かしい雰囲気を感じた。
今までに会った事がある…?いや、ない。ないと思う。
じゃああの懐かしさはなんだ?
確かめるように俺は勢いよく振り返ったが、男は人混みに溶け込むように消えていった。
「鉄君?行くよ?」
「…はい」
なんだったんだ……。
一方その頃、山本と敦は本部の中で暇を持て余していた。
山本は常に何かしていなければ気が済まない人間だ。任務もなければ話し相手もいない。そんな山本は遂に敦にちょっかいをかけ始めた。
対して敦も、新聞を読み終わり暇なのか、けん玉をしていた。
「敦さーん。何かしましょうよ〜。って上手くないスカ!?」
山本は敦のけん玉を見て驚愕する。
それもそのはず。敦のけん玉の腕は全国でも有数だ。
「そうか、けん玉なら教えるぞ?」
「いや…他のでお願いします…」
「ではコマにするか?それともおはじきがしたいか?」
「なんでそんなお爺ちゃんみたいな趣味してんスカ!?」
2人が雑談をしている時に警報が鳴った。
「なるほど、危険度2の猿型か…。山本、行けるか?」
「当たり前っスよ!ちょうど暇を持て余してたんでいい運動ですよ!」
「分かった。任せたぞ」
「了解!」
山本は勢いよく飛び出し、異能を解放して現場に走りだした。
猿型と山本の戦いはあっさりと終わった。
猿のアクロバティックな動きなど山本の戦闘センスの前には無意味だった。
攻撃がどこから来るかを予測し、そこに攻撃を合わせる。それを繰り返す事5分、被害0で戦闘は終了した。
「危険度2と3の差がすげぇなぁ」
山本が独り言を呟く。
実際その通りである。鉄平達は気付いてきなかったが、あの現場には異能警察官や民間人の他に1人居たことに山本は気付いていた。
「まぁそんな事はどうでもいいや。帰るか…」
山本は帰路の途中、不穏な空気を感じ取った。
「ちょっといってみるか…」
怪しげな路地裏を進んで行くと、山本の耳に怯えた3人組の声が聞こえた。
「やっやめてくれぇ!」
「悪かった!俺たちが悪かったから命だけはぁ!」
「反省してる!この通りだ!」
3人に対して言葉を発するのは1人。
「ほう、反省したら許されるのか…。お前たちが生きる世界は随分と甘いのだな…。」
「ひぃぃ!」
「寄ってたかって人を立てなくする程殴っておいて無責任だとは思わないのか?」
山本は塀に身体を預けながら声の発する方を見る。
そこには、怯える3人の男と、1人の老人と、血を垂らしながら項垂れている男がいる。
「思う!思うよ!本当に悪い事をした!」
「ではお前たちがする事はなんだ?」
「自首する!だからどうか命だけは!」
「それだけか……。まぁいい、早く行け」
「はっはいぃぃ!!」
3人は小物のような声を出して走り去っていった。
「おい、そこのお前。盗み聞きとは趣味が悪いな」
「バレてんのか……お前何してたんだ?」
「何してる…か…。強いて言うなら人助けだが、何か問題が?」
「異能を使って人を脅す事がか?」
「つまりお前は何が言いたい?」
老人が、常人だったら怯えて逃げ出すほどの威圧感を放ちながら問う。
それに怯むこともなく山本は言葉を発する。
「そうだな…。お前マフィアか?」
「そうだと言ったらどうする?」
「捕らえる!」
山本は老人に向かって、異能を使わずに走り出す。
「ほう、異能を使わないのか」
老人はそう言いながら片手で山本を投げる。
山本でも何をされたのか、理解出来ない速度の投げ。
投げられた事を理解した時には山本の首筋に老人の異能が突きつけられていた。
老人の右手には、竜の腕のようなものが現れている。
「まぁ異能を使ったところで結果は変わらないがな」
「クソが!」
山本は異能を解放して必死にもがくがびくともしない。
「異能警察官もこの程度か…」
老人はそう言って再度山本を投げ飛ばす。
「待てよ!まだ終わってねぇぞ!」
背を向けて立ち去ろうとする老人に向かって山本は言う。
だが、老人は一言残すだけだった。
「平和を守る身ならもっと強くなれ」
山本がまばたきをした瞬間、老人は一枚の紙を残して消えていた。
「クソッ!このくらいハンデじゃないってか!?」
紙には老人の名前とマフィアの場所が書かれていた。
老人の名前は龍宮寺司。
偶然にも鉄平達と山本は同時に敵のリーダーを知った。




