耳が聞こえない僕と目の見えない君の物語
なんとなく降ってきた恋愛小説的な何かです()
朝目が覚めると今日も静寂が来る
音を聞いたことがない僕には静寂は恐怖などの感情を抱くものではなくただの日常となっていた
よく、声が聞こえないと怖いだとか不便だとか言うがその状態でもう十数年も生活していると慣れてしまった
それより、目が見えない方が怖いんだろうななどとふと考えながらいつもと同じように準備をして学校に行く
音が聞こえないからといってそこまで危ないこともなく歩いて学校に向かい授業をする
ただ、クラスというか学校は耳が聞こえない人たちが集まっているクラスだというのが他と違う点だろうか
皆が同じような境遇の為耳が聞こえない者同士で会話が弾む、まぁ会話といっても手話なんだけどもね
そんな僕たちの学校はそのような体にハンデを持っている人たちが来ている学校で他のクラスだと手足が動かない子や目が見えない子のクラスもあるらしい
余り接点がないから詳しくは知らなかったんだけどね
でも、今日からは違った
いつものように授業を受け昼食の時間になりご飯を買った時に水筒を家に忘れたことに気づき自動販売機へと向かった
それが僕の人生の分岐点だったんだ
そこで出会った彼女を見た時音が聞こえた気がしたんだ
もちろん今まで聞こえたこともなかったし気のせいだとその時は置いておいた
とりあいず自動販売機でジュースを買おうとすると突然服を掴まれた
彼女が服を掴んで何か言っていた
耳が聞こえなかったから分からなかったけど口が動いていたから何か話しかけてくれたんだと僕は思ってその彼女に手話で語り掛けた
でも彼女は服を掴んだまま何か言い続けていた
そうやっている内に先生がやってきて彼女を連れて行った
その後先生と話して分かったのは彼女は目が見えなくてちょっとした迷子になっていたんだそうだ
そんな中で自動販売機の音が聞こえてそこに向かって人に触れたから掴んだらしい
そうだったのかと思いながらまず喋ることをしない僕には何もできなかった
少し可哀そうだったなと後悔しながら午後の授業が終わりいつも通り家に帰ったころには音が聞こえたような気がしたことは忘れていた
その次の日、さらに次の日も何もなく忘れかけていた頃に彼女をまた学校で見かけた
その時にまた音が聞こえたような気がした
不思議となんだか彼女に目が留まり少し近づこうとしたが、近付いたところで彼女は目が見えないので自分は彼女に何もできないなと思ってその日は近づけなかった
でもなぜかその日から毎日ふとした瞬間に考えていたのは彼女のことだった
だからと言って彼女に接した日があったわけではなく見る事すらない日の方が多かった
そんなある日、また学校で彼女を見かけた
その時は横に先生が居たから今日なら話せるかもと思い体が勝手に近づいて行った
近付いて先生に手話で話かけると先生は少し驚きながら話を聞いてくれた
そして彼女に伝えてくれた
なんてことはないただの雑談のような話だったがとても楽しかった
その日はそれで終わりそのまままた会えない日が続いた
見かける事すらない日が続いて忘れそうになると彼女を見かけ先生がそばにいると話しかける
先生が居ないと話せないせいか話せるのは月に1回あるかないかだった
そんな日が続いていくと僕は彼女と直接話したいと思い始めた
そこで見つけた二人が会話できるかもしれない手段
それは点字だった
彼女と話せるかもと点字を必死に覚えて点字を読めるようになった僕は次彼女に出会った時に話してみようとずっと考えていた
でもそこからなかなか会えない日が続いてすこしヤキモキしていたところでチャンスが来た
僕はその日初めて彼女と会話した
その会話はお互いに点字だったからすごく少なくてもどかしいようなものだったけどこれまでになかったほどの充実感だった
点字を介してなら会話できるようになった僕たちは少しづつ会う日が増えていった
会う日が増えるほどに会話も少しずつ早くなり一回に多くの話ができるようになっていった
そんな中で彼女はぽつりと何かつぶやいたようだった
でも彼女に何を言ったのと聞いても答えてくれなかった
それからも会っては点字で会話するという日が増えていきほぼ毎日会うようになっていった
僕の中で日常となったその会話はいつのまにかかけがえのない時間になり彼女もかけがえのない存在となっていった
でも、自分は耳が聞こえないし彼女は目が見えない
そう思うと好きという気持ちは嘘だとごまかして心の隅に置いておくしかなかった
そんな葛藤がありながらも会話は毎日続けていた
思わず好意を確認するような文を何度か伝えかけたが毎回やめてしまっていた
そんな日が続きある日のことだった
彼女との会話の中で突然彼女は質問してきた
「わたしとはなすのたのしい?」
全く予期していなかった質問にすぐに楽しいと答えた
僕は思わず「どうしたの?」と聞くと彼女は
「こうやってはなしかけてくれたのはきみがはじめてだから」
「じゅぎょうのかだいとかなのかなとおもって」
彼女はそう答えた
僕はそうじゃない、自分の意志で会話したいと思って勉強して君と会話しているんだ
そう答えた僕に彼女は笑いかけてくれた
そして彼女は前に呟いたことを教えてくれた
「きみのかおがみれたらいいのに」
その言葉は今まで感じた言葉の何よりも重くそして心に響いた
なぜか手が震える中勝手に返事をしていた
「ぼくもきみのこえがききたい」
その言葉を送ったところで先生が現れて彼女を連れて行った
時計が無かったことからか授業がもう始まる時間になっていた事に気づかなかった僕は急いで授業に向かった
その日は彼女とはもう会う時間が無く家に帰った
次の日学校に行くと僕の席の前で先生と彼女が待っていた
先生が言うにどうしても君と話したいと彼女が言っているらしく時間を作れないかと聞きに来てくれたようだ
僕は思わずいつでもいいですと答えるとじゃあ今から話そうかと僕ら二人を誰も居ない教室に連れて行ったあとにどこかに行ってしまった
少し驚きながらも彼女と僕は話し始めた
いつものようなとりとめのない雑談を挟みながら二人の話題は少しづつ昨日の話へと変わっていった
僕は思わずその話の中で言ってしまった
「すきです」と
彼女は驚いた顔をして何かつぶやいたように見えた
でもその後の彼女からの言葉はそれについてではなくそれまでに話していた話の続きだった
あーフラれたんだなと思いながら確かに顔を見たことがない人と付き合いたくないよななどと考えながら何もなかったように会話を進めた
というよりも何もなかったことにしたかった
その後卒業が近づき二人とも忙しくなり彼女と話すことは減っていった
そして卒業式のその日、久しぶりに彼女と話すことが出来た
卒業式の後だからか二人とも少し涙を流しながら話をした
彼女からはいつものような感じの話卒業式らしい話だった
「わたしとはなしてくれてありがとう」
「たのしかった」
「しょうらいはどうするの?」
「もっとはなしとけばよかったね」
「すごくおもしろかった」
「きみのおかげでね」
そんな彼女からの返答を読み取っているとふと彼女の顔が目に入った
なんだか寂しそうな少しうれしそうな表情だった
そこで気づくことが出来たんだ
彼女があの時呟いた言葉が何だったのか
勢いで書きなぐったのでおかしいところが多々あるとは思いますが初めて書いたラブコメ的な何かなので許してください!!