不時着
その星は戦争が絶えなかった。
星中で銃声が鳴り響き、黒煙が上がり、悲鳴が聞こえてくる。
そんな星にバスターは産まれた。
バスターは女の子、緑の髪、赤い瞳、楽天家でいつもニコニコしている。考える事は苦手でぼーっとしてる事が多い。
黒猫のクロがいつも付き添い、指示を出し、バスターが従う。それが常だった。
バスターは人と違う所がひとつだけあった。
両掌に穴が開いており、そこから、どんなエネルギーでも吸い込む事ができるのだ。
飛んでくる弾丸の飛行するエネルギーを吸い、炎の燃えるエネルギーを吸い、人間が生きる生命エネルギーを吸う。
手をかざすだけでどんなものでも無力に出来る。
バスターはその能力が嫌いだった。
しかし、戦争をする者にとっては、これ以上ない利用価値のある存在なのは言うまでもない。
バスターは常に本人の意思とは関係なく戦争の最前線に配置された。
敵がバスターだと知ると逃げるしか手がなかった。
バスターを手に入れる為の戦争すら勃発していた。
科学者達の研究はバスター攻略に注がれた。その最中、重大な発見をした者がいた。
バスターは星自体のエネルギーを吸っている。
その情報は一瞬で星中に広がった、星がなくなれば戦争どころではない。
その時のバスターの所有者は一計を案じバスターに告げた。
「今までよく頑張ってくれた、気分転換に休みをやろう。他の星でも見てゆっくりしてくるといい。」
バスターは喜んだ、自分の目の前で人が倒れていくのを見なくて済む、誰も傷つけずに過ごせる。
そんな期待をしていた。
楽天的なバスターと違い、クロは全部理解していた。体裁よく言ってはいるが結局は厄介払いなのだということを。
喜ぶバスターを見ると、とても本当の事は言えないが‥
黒猫のクロはアンドロイド、言葉を話し、二足で歩く。
尻尾に大きな球体が付いていて、その球体で空を飛んだり、内蔵された武器で戦ったり出来る。
「クロから落ちないようにちゃんと縛ってやるからな。」
バスターは鎖で縛られ、クロの尻尾に固定された。
「色々な所をゆっくり見てくるといい。クロ、頼んだぞ」
(戻って来るなってことか)
その猜疑心とは裏腹にワクワク楽しそうなバスターを見てクロは言葉を飲んだ。
バスターとクロは惜しまれる事もなく、この星をあとにした。