18
「そういえばヒースはどこの騎士隊所属なんだ?」
「ちなみにぼくとスラッドは第5騎士隊、ギースは第9騎士隊なんだよ」
そういってレーミエが、三人が所属する騎士隊をおしえてくれた。
「僕は第18騎士隊だよ」
フィーがハンバーグをむしゃむしゃ食べながらそう言ったとき、食堂が一気にざわついた。
まだ全員が宿舎にはいってないので、食堂の人数はまばらだったが、そのみんながフィーに視線を向けている。
それはフィーと食事をしている三人の少年たちも一緒だった。
「だ、第十八!?」
「その話、本当か!?ヒース!」
「うん、そうだけど?」
まわりの反応にちょっとだけ驚きながらも、フィーはあいかわらずご飯をたべながら頷く。
「そんなに驚くことなの?」
三人の反応に首をかしげると、血相を変えるほど興奮したレーミエがぐいっと顔を近づけた。
「驚くなんてものじゃないよ!第十八騎士隊はみんなの憧れなんだ!
基本的に見習い騎士でいちばん優秀な人間は第1騎士隊にいくんだけど、その第1騎士隊よりも行きたいって人は何人もいるんだよ!
僕たち見習い騎士だけじゃなく、本物の騎士の人達にも第18騎士隊に入りたいってひとはたくさんいるんだ!
でも、イオールさまから選ばれた人しか入れてもらえないし、見習いから18騎士隊に選ばれた人なんていままで誰もいないんだよ!
だから見習い騎士からは入れないってみんな思ってたんだ!」
「そ、そうなんだ……」
フィーはレーミエの言葉の内容より、おだやかでおっとりしているレーミエがこれほどまで饒舌になったことに驚いていた。
「いったいどうやって選ばれたんだ!?」
「そうだ、教えてくれ!ヒース!」
ギースもスラッドもちょっと顔が怖い。
少年たちの変わりように、さすがのフィーも気おされる。
でも、それは食堂の誰もが聞きたい質問だった。
理由が分かれば、自分たちにもチャンスがあるかもしれない!
食堂の見習い騎士たちは、フィーの話に興味津々だった。
「えっと、たいちょーが選んでくれたらしいんだけど」
「隊長って、イオールさま!?」
「うん」
(やっぱりイオールさまに選ばれたんだ!)
(いったいヒースにはどんな秘密が……)
誰もがこの少年がもつ秘密に耳を傾けた。
「ちっちゃかったかららしいよ」
その言葉に食堂がしーんっとなった。
三人の見習いたちも、食堂のほかの少年たちもフィーの姿を眺める。
たしかにちっさかった。
自分たちの中のいちばん体が小さいものより、ひとまわり以上は小さい。
もしかしたら騎士団の中でも歴代最小ではなかろうか……。
そして思う。
(なんだ、その理由は!)
と。さらに思う。
(俺たちには無理だ……)
体を大きくしろというなら、ご飯をたべて鍛えてどうにかなるかもしれないと思うが、体を小さくしろというのは完全に無理な話だった。
人はがんばっても小さくなれない……。
結局、第18騎士隊に入るという夢は、イオールやその騎士隊に憧れる少年たちには無理な夢だったということだ。
「あと、すばしっこくて、根性があったからだって」
希望が一気に打ち砕かれて露骨にがっかりする少年たちの様子に気づくこと無く、相変わらずフィーはぱくぱくご飯をたべながら、少年たちの憧れの第18騎士隊にはいれた追加理由をのべたが、もうフィーの話に耳を傾けているものはいなかった。
だって、第一条件の時点で、フィーにしか無理なのだから……。
「みんなどうしたの?」
一気にテーブルに突っ伏してしまった少年たちに、フィーが首をかしげた。