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 フィーとクーイヌは宿舎の前まで来た。

 木造の二階建ての建物。

 なんだか不思議と懐かしい感じがする。


 玄関に入ると、エントランスのところにレーミエがいた。

 レーミエもフィーたちのことを見つけて、こっちに笑顔で駆け寄ってくる。


「あ、帰ってきたんだー。おかえり~」

「ただいまー」

「ただいま」


 フィーとクーイヌもただいまの挨拶を返す。


「レーミエは早めに帰ってきたんだね」

「うん、家にいてもあんまり自由にできなくて。お裁縫するなら、こっちのほうがいいお店もいっぱいあるしね」


 レーミエは貴族の家系だ。実家にいるといろいろと大変らしい。

 アットホームでリラックスして過ごせる、クーイヌの家みたいなのは、貴重なのかもしれない。


 フィーは他の二人が見当たらないことに気づいた。


「あれ、スラッドとギースは?」


 フィーはレーミエと仲の良い、赤髪の元気な少年と、背の高い黒髪の無口な少年のことをたずねた。


「スラッドならまだ休みを満喫し足りないって、川遊びにいったよ。ギースは危なくないようについていくだって」

「なるほど~」


 スラッドとギースは王都生まれの下町っこだ。

 あんまり実家に帰るという意識はなく、お休みを満喫していたらしい。


「ゴルムスは?」


 それからしばらく顔を合わせていない友人に尋ねる。


「ゴルムスなら部屋にいると思うよ」

「ありがとう~」


 二階にあがり、ゴルムスの部屋をノックすると「おう」という声が聞こえてきた。

 扉を開けると、腕立て伏せをしているゴルムスの姿があった。


「なにしてるの……。ゴルムス……」


 そうたずねると、ゴルムスはニヤッと笑った。


「休み前はクーイヌに負けっぱなしだったからな。鍛えてんのよ。休みの間も道場に泊まり込んで修行してきたぜ。今年こそ勝つから覚悟してろよ!」


 ゴルムスはお休み終わり早々、クーイヌに宣戦布告する。

 というか、休まなかったらしい。この調子では、実家に帰ったかも怪しい。


「わかった。でも負けるつもりはない」


 クーイヌもキリッとした顔になって頷く。なんだか燃え上がった表情だ。

 なんだかんだ二人とも単純である。


「それじゃあ、荷物部屋においてくるから、夕飯の時間にまた会おう」

「うん」


 そういってクーイヌとも別れ、フィーは部屋に戻った。

 半年以上過ごしてきた部屋は、私物が増えてちょっとちらかってる。でも、クーイヌやゴルムスの部屋がきれい過ぎるだけで、汚すぎるほどではない。

 旅の荷物を置いていると、コンコンとノックをする音がした。


「はーい」


 扉を開けると、くすんだ赤髪のそばかすの少年がどこか緊張した顔で立っていた。

 その顔を見てフィーは笑顔を浮かべる。


「アベル、どうしたの? めずらしいね」

「よ、よぉ……。ちょっと……、話したいことがあっ……」


 そういったアベルだが、言葉が途中で止まる。

 顔を見上げると、目を見開いて、呆然と部屋の中の一点を見つめていた。

 アベルの視線を辿ると、鉢植えに植えられたマーレッタの花があった。マーレッタはテーブルの上で白くきれいに咲いている。


「そ、その花……」


 フィーは笑顔でアベルに言った。


「ああ、マーレッタ? きれいだよね。帰ってきたとき花屋で見つけたから、育ててみることにしたんだ」


 さすがに目の前のアベル本人にもらったとは言えなかった。

 旅先にもっていって、ちゃんと面倒をみていたのだ。アベルのくれた花は、今日もきれいに咲いている。


 この日、アベルはフィーに謝るつもりだった。


 しかし、ヒースの部屋で目撃したマーレッタの花は、アベルにとっては地味にショックだった。

 せっかくのフィーさまとのきれいな思い出が汚された気分になってしまったのだ。アベルの中で、フィーはとにかく美化されまくっていた。


 花びんが置かれてるテーブルが、小物で散らかってたのも悪かったかもしれない……。


「それで用事って何?」

「なっ、なんでもねーよ! バカ野郎!」


 聞き返したフィーに、アベルはそう叫んで自分の部屋に戻っていってしまった。


「うーん、もしかしたら仲直りできると思ったのになぁ。なかなか、うまくいかないね」


 フィーはそんなアベルの背中を、苦笑いしながら見送った。


 フィーは荷物を終えると出し終えると、部屋をでる。

 第18騎士隊の集会所にいこうと思ったのだ。


 休みの間は会えなかったから、みんなに会いたい。


 宿舎の階段を降り、玄関を出て、王城の庭を走り集会所へと向かう。


(誰がいるかな?)


 急に帰ってきたから、コンラッドさんはいないかもしれない。たいちょーに会うのも、時間がかかるだろう。オールブルさんは任務でなければ会えるかも。また花についてたずねたい。パルウィックさんはまた練習しているから弓術所のほうにいるかもしれない。ガルージさんは工房か、集会所のどちらかにいるだろう。カインさんはまた木の上にいるんだろうか。


(クロウさんはいるかなぁ……?)


 どうだろう。よく会いに来てくれるけど、いろいろと予定が入れば忙しいのが彼だ。

 フィーは楽しそうな笑顔になって、集会所を目指した。




みんなに会う描写もしたかったんですけど、ちょっと今の時間に更新したかったのでここで切らせていただきます。

活動報告にて、さらに新しい情報が公開されました。

あの人気キャラのラフデザインが! 是非みていただきたいです!

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