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(この人がわたしの騎士隊の隊長……)
フィーが自分の隊の隊長を見て思ったことはやっぱり。
(なんで仮面をつけているんだろう……)
しかし、あまり本人にたずねてみる気はおきない。
もし機嫌を損ねて、採用を取り消すなんていわれたらこまる。
それに、イオールはどこか近寄りがたい雰囲気をもっていた。
イオールが簡潔な紹介を終えると、ほかのメンバーたちの紹介に移る。
「俺はコンラッド。よろしくね、新人ちゃん!」
まず地味顔の青年が、名前をつげて挨拶する。
若干細めの中世中肉に、あまり特徴のない顔だち。性格は明るくて、さっきお茶をだしてくれたことを考えると面倒見もいいようだ。
でも、普通、特徴がないとか、地味とか、意識しないものじゃないだろうか……。なのに見てると、そう思えてくるのだ。
(なんか、あやしい人……)
フィーはそう思った。
次は、あの大柄な男の人だった。
「……」
といっても、オールブルと書いた紙を見せて、親指をぐっと突き出して、ばっちりウインクしただけだったが。
「オールブルは喋れないんだ。うちではその恵まれた体を生かして戦闘や武器の運搬を担当する。趣味は植物栽培」
クロウがそういって補足すると、オールブルが「ガーデニングな」と書かれた紙を取り出す。
「騎士になって王城の庭でガーデニングするのが夢だったらしいが、うちの部隊だと借りれなくてな」
それで鉢植えに大量の花を植えているらしい、と少ししょんぼりした顔になったオールブルをクロウが解説した。
「そうなんですかぁ」
その話を聞いてフィーは少しかわいそうに思った。
(あの離宮の庭つかわせてあげられれば良かったんだけどなぁ)
小さな離宮だが、一応庭と花壇はあった。ずいぶんと長い間つかわれてなくて、荒地みたいになっていたが。
まあ、側妃としては離宮を抜け出せず、ヒースとしては離宮の庭の使用許可なんてだせない。結局、無理な話だった。
「オールブルさんの植えた花とっても綺麗です。いつかちゃんとした花壇がもらえるの楽しみにしてますね」
フィーがそういうと、オールブルは少し照れたように、嬉しそうにわらった。
いい人なんだと思った。
「パルウィックだ。この部隊では遠距離射撃を担当している」
簡潔にそう自己紹介したのは、眼帯をつけた男だった。
「弓の名手でな。200メートル先の的も外したことがない」
クロウがまた付け加える。
フィーは素直にすごいと思った。デーマンでいちばん弓がうまいといわれてた男でも、120メートル先の的に7割ぐらい当たる腕と言われてたから。




