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男らしさランキング最終日。
イウスは考え、考え、考え続け、あるひとつの結論に達していた。
(もうひとつの本は手に入れられる場所にある……。おそらく……)
レーミエからポイントを与えられ最下位から救われ、それからずっと彼の想いに答えるために考えていた。ヒースの不正を暴き、それを証明する方法を。
(だが、いまあいつを止めたとて順位は変わらない……)
クーイヌの点数も合わせれば、ついにヒースの点数はゼリウスをも上回った。
すでにプリフェクトの権力の停止だけではどうにもならない段階に来ている。
(それでも……)
イウスは立ち上がった。
「どこに行くんだ? イウス」
突如立ち上がったイウスに、驚いた表情のルータスが尋ねた。
「約束だからな。行ってくる。あいつを止めるために」
(俺にできることはあいつのプリフェクトの権力の停止だけ。あとは他の仲間たちに託す)
イウスがやってきたのはゴルムスのところだった。
「ゴルムス、いまからお前の本を借りていってもいいか? 最近、筋トレにいろいろと興味がでてきてな。勉強してみようと思うんだ」
「ん? いいぜ。部屋なら空いてるから勝手に持っていけよ」
イウスはゴルムスに部屋に入る許可を得た。ゴルムスの性格ならそう言ってくれると思っていた。
そのまままっすぐゴルムスの部屋へと向かう。
(今年の寮則の本は二冊存在した。図書館においてあったものと、この北の宿舎にもとから置いてあったものだ。
あいつは勝負のときに言っていた。あの持っている本は図書館から借りてきたものだと。そういう設定であいつは動いている。その理由はおそらく借り手という立場を利用して、占有権を主張し本の調査を妨害するためだ。
ならば、もう一冊の本の行方は?)
階段を昇り、北の宿舎で暮らす見習い騎士たちが寝泊りする部屋があるフロアへとたどり着く。
(休憩室の本があった場所には、俺が調べたときにはすでに本は無かった。俺は当初、それもヒースが確保したのだと思っていた。事実、本質はそうだろう。
だが、あいつが持っている本が図書館から借りた物というシナリオで動いているなら、休憩室の本には対外的には別のシナリオが加えられているはずだ。すでに図書館から本を借りているあいつが二冊も確保しているのは不自然だからだ。
だから休憩室の本は別の誰かが持って行って、どこかにいってしまったという話になっているはず。
じゃあもうひとつの本は実際にはどこにある。あいつの部屋に誰にも見つからないように隠してある? もしくはクーイヌの部屋?
いや、それはリスクが高い。
あいつは疑惑を追及されるときふたつの可能性を想定したはず。ひとつは俺がやったようにあいつが持っている本に対する追求。そしてもうひとつは部屋を直接調べさせてくれというものだ。
あいつがプリフェクトに就任した当初に証明したように部屋の隠し場所は有限だ。どこに隠してもいずれは見つかる。見習い騎士全員で調査をすれば、追求の目を逃れることは不可能に等しい。
ならば、あいつは本をその調査には掛からない別の場所に隠したはず)
イウスはゴルムスの部屋の前に立ち、ドアノブに手をかけた。
がちゃりと扉はあっさりと開く。
(つまり見習い騎士たちの部屋の調査に乗じて、本をその見習い騎士たちの部屋に隠した!)
わりと整頓されているゴルムスの部屋が視界に入る。
(そしてその場所は普段ヒースと仲が良く、よくお互いを知っていて、いざとなったら融通を利かせやすいゴルムスの部屋が最有力。調査を一度跳ね除けたのに、ヒースはクーイヌのみでもう一度再調査をした。それは部屋に本を隠すためだ)
イウスは本棚に並ぶ筋トレの本にはほとんど目を向けず、すっと目をつむった。
(ヒースが隠したのなら短時間での調査で見つけるのは難しい。だが、隠したのがクーイヌならそうではない。あいつの性格は単純。俺にも読めるはず。トレースしろ、クーイヌの思考を!クーイヌならどこに隠す!)
イウスは目を開いた。
「ここだ……!」
ベッドの下にしゃがみこみ、そこに手を入れる。すると、こつんと固いものに手が当たった。
それを慌てて引き出して確認する。
それは間違いなく北の宿舎の寮則の本だった。
「あった……!」
イウスは慌ててページを開き、本の中身を確認する。ヒースが良く開いてまわりに見せていたページ。それをめくって広げると、そこにはプリフェクトの記述は一切無かった。
イウスの手が震える。
(見つけた……。見つけたぞ。ついに証拠を……レーミエ……!これをはやくみんなに……!)
そう思って顔をあげようとした瞬間、イウスは凍りついた。
ゴルムスの部屋に転がる鉄アレイの綺麗な鏡面に、歪んだクーイヌの表情がこちらを見下ろしていた。みしっと床がきしむ音がかすかになる。一歩一歩、クーイヌはこちらに近づいてきていた。
(な、なぜ察知された……! いや、今は逃げなければ!)
イウスは証拠となる本をふところに入れ、クーイヌの不意をついて扉の方へと駆け出した。
ぜぇぜぇとイウスは荒い息を吐く。
奇跡だった。本当に奇跡的にクーイヌの追跡を撒くことができた。
だが、このままでは危ない。
(これは俺が持っていちゃいけない。みんなが集まる時間まで、誰かに預かってもらわないと……)
そのときイウスの視界にルータスの姿が見えた。
こちらに歩いてきている。
イウスの心に希望の光が差し込んでくる。
「イウス! 大丈夫か?」
こちらを呼ぶ声に、「ルータス! 頼みがある!」、イウスはそう叫びながらルータスのほうに走り寄る。
北の宿舎の裏手になった場所でルータスと向かい合う。
「ちょうどいいところに来てくれた。頼む、これを預かっていてくれ。ようやく確保した大事な証拠の品だ」
そういってようやく手に入れた証拠をルータスに渡そうとしたその瞬間、なぜか背中の右後ろ方向にぞくりと悪寒が走った。
振り返ると、そこにはクーイヌが立っていた。こちらを暗い表情で見つめながら。
(なぜ、ここにクーイヌがいる……!?)
疑問に答えを出す間もなく、一瞬でクーイヌに組み伏せられる。
疑問に覆われた思考で顔をあげると、ルータスは何もせずその光景を静観していた。
(なぜ……なぜだ……)
そう思いながらも、イウスの頭には昨日の勝負でどうやってヒースが追求を避けたのか、パズルのように答えが組みあがっていく。
クーイヌがいた方角から、さらにひとりの少年がゆっくりと歩いてくる。
その表情に宿るのは恐ろしいまでに凝り固まってしまった執念と、暗く外道に堕ちた笑みが浮かんでいた。
「イウス、まさか君がここまでやるとは僕は思ってなかったよ。正直言って君を見くびっていたことを認めなきゃいけない。
言ってたんだ、ルータスが。君はこういうとき絶対に真実にたどり着いてく男だって。一見平凡なように見えるが、決して侮ってはいけない人間だって。必ず警戒しておけって。忠告を聞いておいて良かったよ」
その言葉にイウスは悟らざるを得なくなる。受け入れたくなかった答えを……。
クーイヌに押さえつけられたまま親友の顔を見上げた。
イウスの親友だったルータスは邪悪な笑みを浮かべ自分を見下ろしていた。その人差し指と中指の間には一枚の便箋が握られている。それは侍女たちとのお茶会への招待状。
「悪いな相棒。俺はお前という犠牲のもとで、お茶会でカリーナちゃんと仲良くなり、彼女持ちという高みへと昇ってみせる。さよならだ」
ルータスはそれだけ言うときびすを返し去っていった。
イウスは叫んだ。
「ルータス、お前もかぁあああ!」
北の宿舎の裏手でイウスの叫び声がむなしく響いた。
「さあイウス。君を今日一日、僕の部屋でおもてなしするよ。クーイヌ、連れてきてあげて」
(すまん……、レーミエ……)
レーミエの願いむなしく、イウスは戦いに敗れた……。
ルータスネタを早くに見破られる方がいっぱいいてびっくりでした。
なんかもうばればれですけど、私もやりたかったのでやらせていただきました!
まだ戦いはもうちょっと続きます




