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 昼の食堂ではまたも少年たちが頭を抱えていた。

 勢い良く男らしく戦うと宣言してみたものの、誰も何も考えてなかったからだ。


「くそ、またポイントが詰まっている」

「ゼリウスは何してるんだよ!もう実家から帰ってきてるのに」


 すでに北の宿舎の1位、ゼリウスは帰還していたが、その点数はさほど伸びてなかった。逆にヒースの点数はまた伸びて差を詰めてきている。

 それが脅して点数を取ったものか、懐柔して点数をもらっているものか、少年たちには分からない。


 彼らの嘆きは、もはや唯一ヒースへ対抗できる存在であるゼリウスへの不満になっている。男らしくない……。


「あーあ、お前はいいよな、ゴルムス。ひとりだけ部屋も調査されてないし」


 この騒動において比較的中立の立場をとったゴルムスは、ヒースの攻勢もあっさりと避けていた。もともと仲が良いので、あしらい方もうまいのだ。


「いや、俺も一応調査は受けたぞ」

「え?」

「クーイヌがひとりで来て、泣きそうな目で部屋の前に立っていたからな。入れてやったら、少しだけ調べて帰っていった」

「なるほど……」


 そんな中、イウスは静かに昼食を取っていた。


(ゼリウスの点数の伸びが悪い理由はもう分かっている。集団の誘導だ。あいつはまわりに男らしい行動が目撃されることで点数をのばしていくタイプ。だからヒースはゼリウスがいる場所に繋がる通路に常に自分かクーイヌを配置し、ゼリウスと接触する人の流れを断っている。

 プリフェクトとしてみんなから接触を避けられている今ならそれが簡単に可能だ。目撃回数が減れば、ゼリウスの点数は伸び悩む)


「くそっ、図書館で本も確保できなかったし、このままじゃヤツの思うがままだ。……どうしたんだ?」


 向かい側で愚痴をいいながら食事をとっていたルータスは、急にイウスが立ち上がったことに驚く。


「勝負にいく……」

「勝負?」

「ああ、このままじゃ最終日の前にやつはゼリウスの点数を越す。そうなってからじゃ、プリフェクトの不正を暴いても遅い。いまあいつの不正を暴きにいく。そうすれば、すべてが解決する」

「お、おい。でも証拠が……」


 ルータスが制止しようとする間もなく、イウスは昼食を食べるヒースのもとへ向かっていった。

 それをまるで分かっていたかのように、ヒースは驚く気配もなくイウスのほうに振り向く。


「どうしたんだい?イウスくん?」


 その微笑は少女と見紛うごとく可愛らしくありながら、その青い瞳は冷然とした光を湛えていた。


「ヒース。お前に疑惑がある。お前が寮則から持ち出してきて就任したプリフェクトという制度。9年前に廃止になったという先輩の証言がある」


 その言葉に食堂がざわっと鳴った。


「それは記憶違いじゃないかな。ここにちゃんと書いてあるよ」


 しかし、ヒースはまったく動揺を見せずに、プリフェクトに就任してからいつも持ち歩いてる本を手で持ち上げてみせた。


「ああ、だからチェックさせてほしい。その寮則の本の中身が9年以上前のものとすり替えられてないか」


 食堂の空気が一気に緊張したものに変わる。二人のやりとりに、見習い騎士たちの視線が集まる。

 ヒースの目が細まった。


「これは僕が図書館から借りたものだからね。あんまり人には貸したくないんだ」


(やはり……!)


 イウスは疑惑を確信し、さらに言葉で追及しようとする。

 この方法しかない。みんなの視線があるこの場で疑惑を直接ぶつけ、不審を広げることにより、本をチェックさせざるをえない状況にもっていく。証拠は彼の持つ本そのもの。

 口の達者なヒースをうまくそんな状況にもっていけるかはわからない。

 でも、こちらが本を確保できなかった以上、これしか方法がない。


 しかし、次のヒースの言葉は完全に予想外だった。


「でも、構わないよ」


 イウスは戸惑う。本をチェックすればヒースの不正はばれるはずだった。だからそれを受け入れさせるのが一番の難所だと思っていた。最悪、ひたすらヒースの怪しいところを突っつき、不信感をみんなに広め、プリフェクトの権力を低下させるのでもいいと思っていたのだ。

 しかし、ヒースはあっさりとそれを了承した。


「ただし本に触れる人数は少なくしたい。破かれたりしたら困るからね。指定した人以外は触れられないようにしてほしい。それとそれなりに代償が欲しいとこだね」

「代償とは……?」

「違ったら君の男らしさポイント全部頂戴よ。投票分だけじゃなく、君に投票されたポイントも譲渡して全部ね」


 了承された時点では混乱したイウスだが、その言葉に確信する。


(ブラフだ……!)


 ポイントを失うリスクを負わせることで、こちらを引かせようとしている。

 イウスはその条件に即座に頷いた。


「わかった。俺の男らしさ全582ポイントを賭けよう」


 それを聞いたヒースは渋る。


「うーん、ちょっと少ないなぁ」


 イウスは完全に確信する。やはり本をチェックされてはまずいのだと。


「ルータス!」


 イウスがルータスのほうを振り向くと、ルータスがすぐさまにやりと笑って頷いた。


「わかったぜ相棒!俺が持っている投票用の320ポイントも全部賭けるぜ!」

「全部で902ポイントか。まあそれでいいよ」


 それにヒースも頷いた。

 いや、頷かざるを得ない状況だったのだろう。もうここまで来てしまったのだから


「じゃあ、チェックする役はルビーヌにお願いしていいかな。関係のない第三者じゃないと工作される恐れがあるからね」


 ヒースが本をチェックする役を指定する。それはイウスの予想通りの行動だった。

 そして少しわざとらしい。


(やはり焦ってるのか!)


 おそらくルビーヌは買収済みのひとりなのだ。おそらくあの5人のうちの1人。

 ならばとイウスははっきりと告げた。


「いや、それだとお前の方が不正をする可能性がある。お前が北の宿舎のうち何人かを買収しているという話は明るみにでてるからな。だから、チェックする役をもう1人増やさせてもらいたい。二人いれば不正はほとんど働けないだろう」

「……いいよ」


 少し沈黙したあと了承した。


「ルータス頼む」


 そしてイウスが選んだのは当然ルータスだった。




あとがきにちょくちょく顔をだしてすいません。

このたび作品をファンタジージャンルに移ることにしました。というのもある方から教えていただいたのですが、なろうの規定ですと90%以上が恋愛で構成されるものが恋愛ジャンルに該当するらしかったんです。無知で申し訳ありません!

移行を施してくださった方、励ましなどをくださった方、さまざまな意見をくださった方ありがとうございます。ジャンルについていろいろとお騒がせしてすいません。

恋愛ジャンルからという理由で読み始めた人、まことに申し訳ありません!

ただこの作品の目的は最終的にはキャラ同士の恋愛を描いていきたいと思っています。

また感想返信がまったくできてない状況なのですが、エピソード終わり(タイトルの変わり目)にいただいた感想に返信することを目指して、ほかはたまにって感じでいかせていただけたらと思います……。

エピソード終わりには終マークでもつけてみようかと……。

返信はほとんどできてない状況なのですが、いつもこの作品へ感想をありがとうございます!

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