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ゴルベーザの名前をレネーザに変更させていただきました。
感想欄でご指摘をうけて検索してみたところ有名RPGの鎧姿の筋骨隆々の男性がでてきました。男性名だったんですね(この前書きはあとであとがきに移行します)
夜会には休憩時間があり、フィールは与えられた一室で休息をとっていた。
ちょっと疲れてしまった。
と言うのも、パーティーの間中、トマシュ王子とレネーザ令嬢の関係が気になってしかたなかったのだ。
まわりには悟られないようにしていたけど、リネットはなんとなくフィールの様子がおかしいのに気づいていたらしい。
「何かあられたのですか?フィールさま」
リネットが側仕えになってもう4年ほどになる。
フィールにとってリネットはねえさまと同じく信頼できる相手になっていた。
フィールが事情を話すとリネットは驚いた顔をしたが、やがて真剣な顔をして頷いて見せた。
「わかりました。私がなんとかしてみせます」
そうして20分後のこと。
フィールはリネットに案内され、ひそかにある部屋の前に来ていた。
遠慮がちにノックすると、中から「はい」と男性の声が聞こえる。トマシュ王子の声だ。
フィールの胸がどきっと鳴った。
リネットからここがトマシュ王子の休憩部屋だと聞いてたけど、いざ声を聞くと緊張する。
「あのフィールです……」
「ああ、フィール。ひさしぶり」
あっさりガチャっと扉が開いて、トマシュ王子の顔が覗いた。お付きの人は居らず、彼が自分で開けたらしい。
予想外の対面の早さに、フィールは飛び上がりそうになってしまった。
周りからはなんでもできると言われているフィールだが、そんなことはないと本人だけは知っていた。特に運動がだめだ。早足で歩くだけでこけそうになることがたまにある。走ると目も当てられない。
箱入りで育てられてしまったせいだとフィールは思っている。
そんなフィールのきわめて優れない運動神経が今回は、咄嗟に飛び上がろうとする心の動作すら実現することはなく、フィールはトマシュ王子の前で挙動不審な動作をさらしてしまうことを回避できた。
フィールはほっと息をつく。
そしてついてから、ほっと息をついている場合ではなかったことに気づく。いまはトマシュ王子との会話中だったのだ。
「あのっ……あのっ……」
結局、取り乱してしまったフィール。
「とりあえず中に入る?立ち話もなんだし」
トマシュ王子は慌てるフィールを見ながら、不思議と見ているものが落ち着く笑みを浮かべて言った。
そうしてフィールはトマシュ王子と二人っきりの部屋でソファに座っていた。
お茶はトマシュ王子が入れてくれた。
フィールはソファに座りながらそわそわとする。
「それで今日はどうしたんだい?」
その反対側でいつものようににっこり笑みを浮かべて、トマシュ王子はフィールに用件をたずねてきた。
「あの……レ、レネーザさまとは……」
そう口にしてフィールは焦る。
(わたしいったい何をいってるの!?いきなりこんなこと聞いて怪しすぎる!どうしようどうしよう!)
いつもなら貴族同士での挨拶やパーティーでの必要な会話がすらすらと出てくるのに、なぜか今日はぜんぜんうまくしゃべれない。
どうしようもなく焦るフィールだが、トマシュ王子のほうはきわめてのんびりした顔で、お茶を一杯たしなんだりしながら、ゆっくりとした口調で返事を返す。
「ああ、レネーザかぁ。あの子、いま大変らしいんだよねぇ。どうにも言い寄ってきた王子を振ったら悪い噂を流されちゃったらしくて。まわりから変な目で見られるし、パーティーでもなかなか話し相手ができないんだって。
だからパーティーで見かけたら積極的に話しかけるようにしてるよ。確かに人への当たりはちょっと強いけど、すごくいい子だよ」
その言葉を聞いた瞬間、フィールは頭にズガーンと大きな衝撃を受けた。
(わたし……最低だ……!人を勝手な噂だけで判断して……。なんて嫌な人間なんだろう……)
猛烈にいたたまれない気分になる。
トマシュ王子は本当に優しくて立派な人だと思う。そんなトマシュ王子の前に、自分みたいな人間が立っているのが恥ずかしかった。
「あのっ……わたっ……わたっ……わたしかえります……」
赤面し涙目になりながら、フィールは帰ることを告げた。
一刻も早くトマシュ王子の目の前から消え去りたかった。でも、そんな風に去らなければいけないことが悲しかった。
そもそも唐突にやってきて、帰りますってなんなのだと思う。
きっとものすごく変な子として、トマシュ王子の記憶には刻まれてしまうだろう。
でもそれでもいい。はやく消えたい。
フィールはそのまま扉の方に駆け出そうとしたが、その手はトマシュ王子によって掴まれた。
見るとやさしげな、でも真剣な表情をしたトマシュ王子と目が合った。
フィールに語りかけるトマシュ王子の声はやさしくおだやかだった。
「君は本当に言いたいことを飲み込んじゃう癖があるみたいだね。だめだよ。ちゃんと言わないと伝わらない」
フィールはその言葉に息を呑んだ。
そんなフィールに優しい微笑を浮かべて、トマシュ王子は言った。
「だいじょうぶだいじょうぶ。ほら、言ってごらん。あんがい言ってしまえばなんとかなるもんだよ」
その笑みに釣られるように、フィールの口がたどたどしく、でも言葉をつむいでいく。
「あのっ……わたし……」
うまく口から言葉がでてこない。心臓がどきどきして、破裂しそうで、壊れてしまいそうになる。
「わたしっ…………」
フィールの言葉がとまってもトマシュはやさしい笑顔で待ってくれる。
フィールはぎゅっと目を瞑って、頭が真っ白なまま、自分の言葉を搾り出した。
「トマシュさまの…………お友達になりたいです……!」
赤面しながらなんとか言い切ったフィール。
フィールが言ってしまってから、怯えながら反応を待つ前に。
トマシュはすぐに手を差し出し、フィールと握手しながら言ってくれた。
「そっか。じゃあこれからよろしくね。フィール」




