2、合流
俺はチュートリアルエリアで剣をもらいコックを選択し次のフィールドに向かった。
フィールドに入ると既に3人が待っていた。
「スペード、お前おせぇよ」
「悪いな」
「スペードの王って名前か。なんかお前らしいな」
「お前もクローバーシールドって名前あってるぞ」
盾役のクローバーは赤毛のドワーフを選択したようだ。
身長が140㎝程度だが腕は俺のお腹よりも既に太い。
お酒に弱いくせにドワーフとは面白いな。
「まじで遅かったな!スペードの!」
「アチーブメントの検証に少し時間かけてしまってな」
「そんなのwiki見りゃいいじゃん!」
「実際の感覚が知りたかったのさ」
「らしいらしい!もっとも俺たちのこと忘れて没頭しちまうところがお前の悪いところだな!」
パフやデバフの管理役のダイヤはダークエルフを選んだようだ。
銀髪金眼尖った耳の黒いイケメン。身長180㎝。
いつもチャラ男風の外見にするのは何故だろう?
エロ本大好き下ネタ上等。いつもカバンにエロ本が入っている。
出先でシコシコしているのだろうか?
……こいつ、30代だけど童貞なんだぜ?俺もだけど。
「ほんと遅いですよ。スペードさん」
「悪い」
「もっときっちりしてくださいね」
魔法攻撃役のハートは金髪碧眼エルフを選んだようだ。
ひょろっとしたもやし体型で身長170㎝。
現実では身長160㎝体重80キロのチビでデブ。
PCを持ち歩き何かあるとすぐその場で開いて調べる。
ハンター二乗の試験で初めに脱落したちょいキャラに似ている。
夢は細身で背の高いイケメン。現実は厳しいものだ。
「じゃあ、パーティー誘うぞ」
「うぃーす」
「ちゃす!」
「はい」
このフィールドには20㎝ほどのスライムばかり色違いで数百匹はいる。
色が鮮やかすぎて目に痛い。
パーティーチャットに切り替えて発言していく。
「スライムか、まとめて狩ってみよう」
「盾スキルにヘイトを集めるスキルがある。
俺が敵を集めよう」
「じゃあ俺は投擲スキルでクローバーの範囲外集めようかな!」
「僕は範囲魔法で集まったスライム一掃しますね」
「俺は撃ち漏らしを片付けよう。
じゃあ開始だ」
「喝!」
クローバーが大声を前方にあげた。
ダイヤは足元にある石を遠くに向かって投げていく。
ハートはスキルを使い詠唱中を示す光陣を前方に展開した。
クローバーのスキルが呼び寄せたスライムは大凡10m圏内のほぼ全て。
ダイヤの投擲が呼び寄せたスライムは30m圏内で10匹程度。
クローバーが構えた盾にスライムはぶつかり続け押し合いへし合いをしているとハートの詠唱が終わった。
光陣から飛び出したのはバレーボールサイズの白い球。
ふわふわとチョウが飛ぶ程度の速度で5m程進む。
球が急激に萎みピンポン玉サイズになり、そしてパンっという軽い爆発音と共に破裂した。
まるで風船を割ったようなそんな音だな、なんて感じた。
爆発音と共に風が吹き荒れた。
爆風は前方のスライムを吹き飛ばし、爆心地のスライムは弾け潰れていた。
吹き飛んだだけでまだHPの残るスライムを俺は走りながら切り裂き止めをさしていく。
「これって気持ちいいね」
「見てる分にも爽快だ」
「見た目凄い派手でいいね!」
「威力に申し分ないな」
同じことを場所を変えて何回かすると1パターン過ぎて飽きてきた。
討伐報告のメールが凄いことになっている。
500近く倒したようだ。
ドロップのスライム玉も数がありこれでスキルも買えるだろう。
「町に行こう。ここでのんびり狩るのもいいが新しいスキルを買って次のフィールドに進まないか?」
「そうだな。スライムは温い攻撃しかしてこなくてつまらん」
「数いてもあれじゃあね」
「もういいかなー。つまらないもん」
町に入りストーリークエストで町内のNPCに挨拶回りした。
その際雑貨屋でスライムのドロップを売り払い図書館でスキルを購入した。
俺はコックのスキルがあるので剣スキルを覚えた。
このスキルツリーの進化先には刀術スキルがある。
部位欠損などのアチーブメントを多く入手することで進化するらしい。
ちなみに剣スキルの通常進化先の重剣スキルは受けることや壁向きの構成だ。
進化先には他にもあり、レイピアスキルは突くことを主眼としたスキルだった。
攻撃タイプとしては重剣スキルは叩くメイン、レイピアスキルは突くことメイン、刀スキルは斬ることメインという区分けだった。
剣は防御寄り、レイピアは攻撃、刀は部位欠損狙いのサポート。
そういう区分けだろうか?
スキルを購入するとき成長すると使い方によって特化していくとNPCが濁していた。
きっかけは対象アチーブメントの取得量だとか割合だとか掲示板で噂が立っている。
モンスター名だけで養殖されたプレイヤーは対象アチーブメント不足で嘆く可能性が高いだろうという話だ。
倒し方の工夫は重要だろうな。
俺は一定レベルまでのアチーブメントの取得割合が肝だろうと思う。
たっぷり切り刻んでいこう。刀は包丁と同じだ。
押しつぶしたり、突いたりして物の形を変えるんじゃない。
刃の当て方が重要なのだ。
力で斬るんじゃない。
技術で斬るのだ。
体術スキルもとった。
身のこなしに補正がつくので近接戦闘をするなら必要不可欠なスキルだ。
今は後2つ枠があるが埋める気はない。
すぐに必要だと感じるスキルもない。
クローバーは槌スキルと体術スキルを覚えた。
枠はあと1つだ。
「盾スキルってどうやってとったんだ?」
「受付で武器をもらうときに講習を受けるかって言われなかったか?」
「言われた気がしない……」
「盾だからか?……まぁ、物は試しで講習受けたら持ってたな」
ダイヤの投擲スキルもそうだったそうだ。
特殊な武器は講習を受けられるのだろうか?
まぁ、普通経験なければ使えそうにないが。
ダイヤは回復スキルと体術スキルで残り穴1つ。
ハートは。
「お前はスキルとらないのか?」
「どうもしっくりこなくて。
木工スキルよりも道具作成スキルで汎用性をとる……微妙だなぁ。
木工スキルにいいステータスはDEXだけだからINT極の僕にはいいものは作れない。
道具作成スキルならINTでも補正がつけられる」
「じゃあとればいいじゃないか」
「なんかしっくりこないんだよ。
後衛だから体術スキルで穴1つ埋めるのはもったいないだろうし」
「ゲーム内で考えるなよ。現実で考えておこうぜ」
「だな。今決まらないなら後で決めればよかろう」
「皆スキル買うもんだから僕もなんか買わなきゃいけない気がしたんだよ!」
「元々買う気はなかったんだな。
じゃあ、もういいから新しい狩場に行こう。
現実で相談にのってやるから今はな」
「わかったよ。今いくさ」
憎々しげにスキル一覧表を睨み付けハートはようやく歩き出した。
ハートは空気読もうとして空気読めないタイプだものな。
ダイヤがハートをフォローして回るのだが少し口が悪くなりがちだ。
ダイヤがモテない理由はハートにあるのかもしれない。
いや、やっぱりカバンに常駐しているエロ本の方が原因だろう。
町の南東にある道を行き草原に出る。
今日はここで猟をするか。