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餌やり当番の日。


楓と琥珀が、やたらと俺にすり寄って案じるように鳴いた。

そんなに疲れているように見えるんだろうか。

桜にも鈴香にも洸にも夕菜にも凄まじく心配されたが、まだ大丈夫の筈だ。


「大丈夫だ」


しゃがんで、撫でて。立ち上がろうとした時。

視界がぐにゃりと歪んで、一瞬目の前が真っ暗になった。

次の瞬間全身に衝撃を感じ、自分が倒れた事を自覚する。


楓と琥珀が駆けていくのが、判る。

かしこい2匹だ、きっと誰か呼んできてくれるのだろう。

そう思った時だった。


「にぃ、にぁ、にぃ、にぁぁ」


一度も近付いてこなかった、雪が。

必死に鳴いて、俺の頬をぺろぺろと舐めた。


まるで、起きて、起きて、と言っているかのように、必死に尻尾で俺を叩き、

俺の親指より小さな前足で、必死に俺を揺さぶっていた。


大丈夫だ。

大丈夫だから。


恐ろしい敵である筈の俺を案じてくれている、

優しい雪に声をかけようとしたが。

そのまま、気を失ってしまった。







目覚めたら。


「り ゅ う い ち」


阿修羅がいた。


「斎さんに全部聞いたわ。あんた残業とか言ってた癖に土建のバイトしてたんだって?」


斎、すまん。この阿修羅が問い詰めたんだ、さぞ怖かっただろう。


「熱がさがったら存分に説教したげるから、覚悟しなさい」


とりあえず阿修羅に土下座しておこう、と起き上がったら更に怒られた。

どうやら過労で熱が出ているらしく、往診してくれた内藤先生にも凄まじく怒られた。


「熱がさがるまでは安静じゃこの馬鹿が」

「すみません」

「全くお前は昔から自分を本当に大事にせんで」


お袋の腹にいる時から俺を知っている我が家のホームドクターに、口で敵う訳がない。

それにくわえて阿修羅と泣きじゃくる洸と夕菜、真っ赤な目をして2人をなだめる洸。


心配してくれて、怒ってくれて、泣いてくれる。

幻影だとしても、今この場に確かに家族の風景がある。

今、この時で時間が止まればいい、なんて。

心底……思った。

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