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親父とお袋は、本当に凄い人達だった。

2人は、結婚してすぐ最初の里子を迎え入れた。お袋が子供を望めない、そう言われたからだと聞いている。

何故養子縁組をしなかったのかは結局判らずじまいだったが、2人なりに何か理由があったんだろうと思う。

特に、家庭事情に問題がある子供を里子として迎え入れていたのは、両親とも児童養護施設の職員で仕事柄そういった子供達とかかわる事が多かったのも関係しているだろう。

2人が里親になる事により、養子縁組に至り家族を得る事が出来た里子の数は14人。

俺が生まれてから里子になったのは桜達だけだが、それでも皆さん養父母と一緒に家に遊びに来てくれていたので、

俺は小学校にあがるまで自分にはとてもたくさん従兄弟がいるんだと思っていた。

両親が亡くなった今でも、線香をあげに来てくれたり差し入れを持ってきてくれたりしてくれるのは、親父達の人徳の賜物だ。

2人のようには出来ない。それ位、誰に言われなくても俺が一番よく判っている。


「固定資産税の支払いがあるから、今月は赤字だな」


見事に真っ赤なそれを見てため息をつく。


「力不足なのも、意地を張っているのも、判っている」


両親の生命保険と相続した貯金に、俺は手をつけていない。

それだけではなく、里親手当にも手をつけていない。

俺達5人分の生活費、猫3匹牝牛1頭雌鶏2匹(牝牛と雌鶏は獣医大から引き取った)の食費。

トラクターを使う規模の家庭菜園、牛乳卵乳製品は自家製、家の水は飲用も含めて全部井戸水(親父が生前業者に発注し改造した)、太陽光発電によるオール電化。

無駄に広い敷地の三割程度に太陽光パネルを設置しているので、水道光熱費に関してだけ言えば全額タダだ。(その分固定資産税の時期になると頭が痛い)

その分他の家庭に比べれば随分と楽だろうが、他の諸費用は全部俺の稼ぎだけで賄っている。

桜が毎月入れてくれるお金も全部貯金してある。嫁に出す時に渡してやるつもりだ。

本当は俺が嫁にしたかったんだが、振られた時にそれはきっぱり諦めている、と思いたい。


「頭では、藤堂さんの言う事が正しいのも判っているんだが」


判っている。独りよがりだと、十分に判っている。

相続したものに手をつけたくないのは、両親の命と引き換えにした金を使いたくないだけ。

そして、里親手当に手をつけたくないのは……皆と確実に離れなくてはならない事を、忘れていたい為。


「あと、3年」


3年経ったら、洸と夕菜は18になってしまう。


「あと、8年」


8年経ったら、鈴香も18になってしまう。

3人とも、桜のように家を出て。関係も、切れてしまう。

桜ももう24だ、いつ嫁いでしまってもおかしくない。




『ごめん、竜一。あたしは、あんたの、……家族には、なれない』




皆、いなくなってしまう。


「一緒にいられる、間は」


どれ程傲慢で身勝手か判っている。

それでも、せめてその間だけは。


「ごっこ遊びでいい」


家族で、いたいんだ。

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