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『竜一君、私も君が嫌いでこのような事を言い続けているんじゃないんだよ。
君がどれだけ頑張っているかはよく知っている。
君が彼らを本当に大切に思っている事も、彼らに対して本当の兄のように尽くしている事もよく知っている。
だが、彼らをこのまま里子として扱うのなら。そして君自身の人生を考えるなら、彼らを施設に戻すべきじゃないか?
せめて他の2人はともかく、洸君は施設に戻し専門里親の方に任せるべきだ。
君の両親には、私も公私共に本当にお世話になったし今でも友人だと思っている。その実子である君にこれ以上の無理はさせられん。
このままでは身体も精神も病んでしまうぞ』
「ですから藤堂さん、何度も申し上げていますように、彼らを養子に迎えてもいい、そう願い出ている人を連れて来てください。そうして頂ければすぐにでも里親をやめます。」
『いや、だからそうではなく、君が三人を養』
「失礼します」
『竜一君っ!』
いつもの電話をいつものように切り、家計簿ソフトを起動させる。
独身で、歳も若く、子供に関わる職業についている訳でもなく、何処にでもいる普通のサラリーマンでしかない。
しかも、親父やお袋のように専門里親としての経験もない。
鈴香や洸や夕菜が今、家で元気に暮らしてくれているのは、全部親父とお袋のおかげだ。俺が何か出来た訳じゃない。
藤堂さん(親父達の友人で、児童養護施設の施設長をしている)が心配するのも当然だろう。
「身勝手で、すみません」
結局いつも言えない謝罪の言葉を、虚空にむかい呟いた。