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「なかなか懐いてくんねぇなぁ、雪」
「そうだな」
橙色の子猫に『琥珀』と名付け。
洗ったら見事に真っ白な毛並だった灰色の子猫には『雪』と名付けた。
琥珀は野良としての警戒心がないのか雪が徹底的に外敵を排除してきたのが良かったのか、すぐに俺達に懐いてくれたが。
雪は、ミルクは飲んでくれるが、俺達がいる場所に決して近づこうとはしなかった。
家の中に入ろうとすらしない。無理に入れたら即座に脱走する。
縁の下に置いてある猫砂トイレはちゃんと使うのだが……どうやら、俺達はまだ敵のようだ。
すり寄ってきた楓と琥珀をあやしつつ、遠くにいる雪を見る。
「琥珀や、同じ猫の楓に対してはそこまで警戒しないんだが……」
「雪ー、顔の怖い竜兄に怯えるのは判るけど、俺にまで怯えなくていいんだぜー」
とりあえず今日の餌やり当番である洸の頭に拳骨を落とす。
「いでっ!ちょ、単語が零れ落ちた!ぜってぇ落ちた!」
「竜兄様に変な事言うからですわ」
「てめぇ夕菜こら生意気だぞ洗濯板の癖」
ばっこん。
餌やりを手伝っていた夕菜が、盥で洸の頭を力強くぶん殴った。
「こ、この暴力女っ、俺の脳細胞があああ」
「元々ミジンコ位の脳細胞しかありませんでしょう、多少減っても気にする必要すらございませんわ」
「気にする!むしろ気にする!」
来年には2人とも高校生なのに、いつまで経っても子供だ。
「何微笑ましい笑みでこっちみてんだよ、竜兄!」
「何故微笑ましげにこちらを見ておりますの、竜兄様!」
「本当に仲良しだな、お前達は」
「「仲良くねぇ(仲良しじゃありません)!!!」」
ほら、仲良しだ。
「ここに置いておく」
雪に声をかけ、ミルクを置き、仲良しな2人を引きずって庭を出て家に入った。