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「雪」
その場に座り、抱き寄せ、撫でる。
「雪」
暖かい。冷たくない。
「雪」
最初は鳴いていた雪だったが、零れる涙に気付いたのだろう、ぺろぺろと俺の頬を舐めた。
泣かないで、そう言ってくれているんだろう。
だが、いいんだ。この涙はうれし涙だから、いいんだ。
「もう、いい。もう、いいんだ、雪」
もう、いい。
「お前達が居てくれる。それだけで、俺は十分だ」
もう、いいんだ。
「ようやく、諦められた」
抱きしめている雪と、膝の上に座る楓と琥珀を交互に撫でる。
「俺は最低だ、雪」
まだ俺の涙を舐めている雪。
もういい、舌がしょっぱくなるぞ。
「俺は、自分の我が儘に4人を巻き込んだ。
挙げ句無理して、倒れて、お前を殺しかけた。楓や琥珀にも、辛い思いをさせた。
俺は、里親失格だ」
里子の事をちゃんと考えられなくて、何が里親だ。
藤堂さんの言った通りじゃないか。
「親父、お袋、すまない」
2人が大事に大事にしてきた子供達を、俺は不幸にするところだった。
「それでも、俺は」
俺は。
「なぁ、雪、それでも、俺は」
俺は。
「お前達と同じように、鈴香と、洸と、夕菜と」
そして、何より、誰より、きっと。
「……桜と」
俺は。
「家族に、なりたかった。……家族で、いたかったんだ」
そう言った途端、襖が勢いよくあけられて。
4人が、部屋に入ってきた。




