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あれから三日。
ようやく、雪が家に帰ってくる。
「ただい」
「雪っ!!」
「……はい、ここよ」
キャリーバッグの中にいた雪を、そっと抱き上げ、優しく撫でる。
両の前足にぐるぐると包帯を巻いたままの姿が痛々しい。
「にぃ……?」
撫でる感触で起こしてしまったのか、少し目をあけて俺を見上げた。
何故か俺の肩に登ってきた楓と琥珀も、逢えて嬉しいんだろう、みゃあみゃあとないている。
「にぁ」
俺を見上げたまま、雪が。
俺の手を、ぺろっと、……舐めた。
「雪……っ」
そのまま、また眠ってしまったが。
それでも。
「ありがとう、雪、ありがとう」
お前と、楓と、琥珀。
俺の、大事な。
「お前と楓と琥珀……俺の家族が、ようやく揃った」
大事な、大事な、家族。
何故か固まった皆をそのまま置き去りにし、自室に戻る。
猫用の布団はちゃんと3つ用意した。餌入れや猫砂トイレは、縁側に移動した。
襖の下部分を改造し、いつでも出入り出来るよう猫用出入り口もちゃんと作った。
部屋の隅にはキャットタワーもちゃんと用意した。おもちゃだってあれこれ買い込んだ。
ここ数年で一番散財した自信がある。
「今日からここがお前達と俺の部屋だ」
そっと雪を寝かせると、楓と琥珀がすぐに駆けよる。
「起こしては駄目だ」
言い聞かせると、理解したのか2匹とも尻尾を振ってくれた。
猫は人間の言葉が判る、その学説を俺はあの日から信じている。
判る筈だ、だってこの子達は俺の家族なんだから。
それからしばらく、楓と琥珀の傍に俺も寝転がり、雪の寝顔を見ていた。
何時の間にかそのまま寝ていたらしく。
「みゃーぁ」
「みゃっ、みゃっ」
楓と琥珀の鳴き声で、目が覚めると。
どうして自分がここにいるのか判らない、そんな感じの雪が。
ちゃんと目を覚ました、雪が、いた。




