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見つけたのは、本当に偶然だった。
「きったねーの、もう死んでんじゃねぇ?」
「さわるなよ、汚れるぜ?」
みぞれ混じりの雪に濡れて、ぐちゃぐちゃになった段ボール。
それを悪ガ……子供達が傘でつついて壊そうとしている。
普段なら声などかけないが、その時は何故か声をかけてしまった。
「何をやっている」
「げ」
「お、おっさんには関係ねぇだろ!」
おっさん。
……おっさん。
「俺はまだ25だ」
「十分おっさんだろ」
「おい、そんな顔の怖いおっさんなんか放っておいて行こうぜ」
おっさんと呼ばれた事に傷付いた俺を放って、子供達はいなくなった。
何をつついていたのか、と段ボールを覗き込むと。
「あいつら、なんて事を」
その中には、灰色の汚れた子猫がいた。
「にぎゃーっ!」
生後1ヶ月経ってるかどうかすら判らない、本当に小さな小さな子猫。
かなりの期間何も食べていないのだろう。子猫らしいふっくらとした体つきではなく、ガリガリにやせ細っていた。
それでも必死に威嚇してくる子猫の後ろに、もう1匹。
「お前、その子を護っているのか」
薄汚れてはいるが橙色の毛並の、更に小さな子猫がいた。
舐めて毛繕いでもしてやっているのか、威嚇している子猫より随分と綺麗だ。
ほとんど動けず、呼吸でどうにか生きていると判る程度だった。
急がなければ、死ぬ。
「行くぞ」
両手で2匹を抱き上げる。
片手でまとめてつかめる程、小さい命。
死なせる訳にはいかない。
「にぎゃーっ、にぎゃーっ!!」
殺される、とでも思っているのだろうか。
自分もぼろぼろなのに、灰色の子猫は必死になって橙色の子猫をかばおうとしている。
だが。
「みゅぃ…」
「にぃ!?」
人肌が暖かったのか、橙色の子猫が俺の手にすりすり、と頬を寄せてきて。
それをみた灰色の子猫は、暴れるのをやめた。