初めまして、新たな学校よ
俺は職員室の前に来ていた。
というのも今日から転校するということになっているからだ。
この世界に来てすでに10日ほどが経った。
今日の日付は4月6日、この学校の始業式の日であった。
俺は家庭の事情で引っ越してきて、2年からということになる。
そして今日は始業式の前に担任の教師と会うことになっている。
「失礼します。今日から転校することになった双神凪です。今日からお世話になる担任の方にあいさつに来ました」
「おう、話は聞いている。入ってくれ」
俺はその言葉通りに扉を開け職員室に入る。
そして職員室にいるボサっとした髪のスーツを着崩した男性が手を挙げて俺のことを呼んでいた。
「俺が今日からお前の担任になる吹上鉈欺だ。まぁ、少々変な名前で覚えにくいと思うがよろしくな」
「あっよろしくお願いします」
男は20後半ぐらいで、騒ぐほどではないがなかなかのイケメンである。
きっちりとした服装に、髪型、髭などを整えたら女子にモテると思う。
「んじゃ、ついでに校内も案内してきますわ」
突然、その男は職員室にいた他の教師陣にそう言うと立ち上がる。
俺としては学校の案内は同じ学生の誰かがしてくれると思ってたから少し驚いている。
「おいおい、すぐに始業式が始まるぞ? それにそれは教師のする事じゃないだろ」
近くにいた教師の人も俺と同じ風に考えたのかそう言ってきた。
「正直校長の話とかめんどいので適当に抜ける理由がほしいんですよ」
あっ、この人とは仲良くなれそうだ。
俺はその男の態度を見て自分と感性が似ているように感じてそう思った。
「んじゃ、行くか」
俺は吹上先生の後に続いて外に出て行った。
「あの、先生。どこに向かってるんでしょうか?」
今現在は人があまりいなさそうな校舎裏に来ていた。
そこに何があるというわけではなさそうで、どうしてこんなところに来たのかわからなかった。
「んま、こんなところでいいか」
そう喋ったかと思うと、俺はいつの間にか後ろの壁に叩きつけられていた。
ようやく何をされたかと分かった時には首に指が付きつけられていた。
「いくつか問う、正直に答えろ」
先ほどまでにとは別人のようで鋭い視線に恐怖を覚えた。
俺はその恐怖に耐えられず言われるがままに黙ってうなずくしかなかった。
「お前は何の目的でその姿で居る? その姿でいる目的はなんだ?」
「もともとこの姿ですから仰る意味が分かりません……」
「……嘘ではないな…………。次だ、お前に親はいるか?」
「普通にいますが?」
その後もいくつか質問が続き、意味が分からない質問が多かった。
「すまなかったな。とりあえず嘘ではないようだ」
そう言葉で言いながらもどこか納得してなさそうに体を解放してくれた。
その後は普通に学校を案内してくれた。
どうやら一学年8組まであり、俺は6組らしい。
すでに始業式は始まっているらしく、クラスには誰もいなかった。
ほかにもPC室や、保健室など様々な場所を案内してくれたが先ほどの印象が強すぎて頭に入らなかった。
「おい。双神、聞いてるのか?」
「はい、聞いてます」
「はぁ、その様子じゃ聞いてねえだろ……」
吹上先生が言ったようにほとんど聞いてなかった。
というよりしゃべってたのにも気づかないレベルである。
「さっきはすまなかったな。とりあえずお前にそっくりな奴が知り合いにいてな、お前がそいつに化けているんじゃないかと思ってな」
先ほどの態度が嘘のように今は気怠そうにしていた。
「ほれ」
そう言っていつの間にか目の前にあった自販機でココアを買いこちらに投げてくる。
そして先生自身も同じのを飲んでいた。
ちなみにそのココアは自分の好きな製品のものであった。
「せめての詫びだ。自分でやっててなんだが、怪我はしてないか? 一応しないように注意したんだが……」
「いえ、大丈夫です」
そう言えば先ほどは一切痛みを感じてなかった。
痛みを感じる暇もなかったのかと思っていたのだがそうではなくちゃんとどこかにぶつけたりしないようにしてくれたらしい。
「とりあえずそろそろ始業式が終わるはずだからそうしたら俺が先に教室に入るから呼ぶまで廊下で待っていてくれ」
「分かりました」
それからは始業式が終わるまで自販機が置いてある場所で待ち、その後は2年6組の廊下の前で待った。
「おら、男は残念、女子も残念だったな。特にイケメンでもない転校生だ。入ってくれ」
若干女子の方が多いぐらいだろうか、40人ほどの人物がいた。
縦に6個、横に6個ずつなので36人いることになるのだろう
その女子の中には美人が多く、男もイケメンも結構いた。
そして、その中には次元もいた……。
「(おい、お前は1年じゃねえのかよ!?)」
「(昨日まではそうじゃったが今日からは2年に進級したのじゃ)」
そんな風に次元と目で会話をする。
小説とか漫画で読むとなんで目で会話できんだよっと思ってたが人はやる気になればできるらしい。
「おう、じゃあ自己紹介よろしく」
そんな俺たちの目でのやり取りを知らないように吹上先生はそう言った。
「双神凪です。趣味は小説で深夜アニメも結構見るのでライトオタクだと思います。小説家になりたいというサイトなども見てるので、気軽に声をかけてください。よろしくお願いします」
俺は無難な自己紹介をする。
そこからは彼女はいたことがあるかとか、見てるアニメが何かとか様々な質問が来て、普通に返した。
能力を聞かれたのは若干驚いたが、この世界では当たり前なのだろう。
「んじゃ、双神は氷上の後ろの席だ」
そうして示されたのは前からも窓から2番目の席だった。
左斜め後ろには次元もいる。
そして、目の前には髪が白い少女。
根元が若干黒いので染めているのだろうか?
とりあえず氷上という少女の後ろの席に座る。
「おい、おい」
その言葉と共に後ろの席から肩を叩かれる。
「転校生、俺は船井翔だ。よろしくな」
「おう、よろしく」
そうやって話をしてきたのはなきぼくろが印象的なイケメンだ。
「とりあえず初めの忠告だ。お前の目の前の奴と俺の左に座ってるやつには注意しろ。俺の左にいる奴は世界で10人しかいないSSSランクだ」
次元がSSSランクなのは知っている。
なんといってもその能力によってこの世界に来たのだから。
「次にお前の目の前の奴なんだが――」
「あなたは私と同じ気配がする…………」
唐突に目の前の少女が振り返り言った。
翔は少女に聞こえないように最大限に声を小さくして言う。
「――重度の厨二病だ」
超能力のある世界で厨二病も賛否両論があると思いますが、あえて出させてもらいます。
そして言わせてもらおう。
現代の厨二病は痛いものではなく、愛でるものである。っと