かくして俺は超能力を使えるように
「さて、自己紹介もこのぐらいにして本題に行きましょうか。雛から聞いたけど災難だったわね。それに消されてないってことは性格的にも問題ないってことかしら?」
消す? それはどういうわけだ?
「雛はこう見えても強大な力の持ち主でしょ? 色々利用されそうになったりしてるから人一倍警戒心が強いのよ。安心して、今の時点で生きてるってことはすでに雛に身内って認められたってことだから。よっぽどじゃない限りどんなことしても守ってもらえるわよ」
「木里!」
消す。
それが俺を殺すかもしれなかったことを俺は理解してしまった。
この子供みたいにしか見えない少女、実年齢だとしても俺と同じ年のこの少女が人を殺すのはぞっとした。
「勘違いしてほしくないのが雛は冷酷でもないし、この世界の命も軽くないってこと。雛もまだ一人も殺したことがないこと」
次元が誰一人殺したことがないことにほっとした。
それはこの見た目が幼い少女が手を汚さないで済むこの世界か、次元が人を殺めなかったことかは分からなかった。
「木里、それ以上は許さないぞ?」
「はいはい。それじゃあ頼まれてた事をしますか」
戸崎さんは今までのニコニコした顔から真面目な顔になった。
それにつられて自分も自然と背筋が伸びる。
「お願いします。って僕はどうすれば……?」
「何もしなくっていいわよ。ただ私が見るだけだから」
そう言って戸崎さんがメガネをはずす。
それ以外特に何かが変わった気がしなかった。
「はい、終わり。とりあえず私たちと一部以外大して変わらないみたい。私たちと変わってる部分は多分世界を表す場所だから超能力は問題ないはずよ?」
「えっと……」
超能力が使えるか調べるって言ってたので大がかりなのを想像していた。
それが何が起こったかもわからないうちに終わって拍子抜けしたし、いったい何を言えばもいいかよくわからなかった。
戸崎さんは目薬を取り出し、そのまま自分の目に差す。
「ごめんね。この世界にとってこの能力は有名だから知ってるもんだって思ってた。説明ほしいよね?」
「あっ、はい」
「私の能力は情報操作、それは言ったよね?」
それは自己紹介の時に行ってたので素直にうなずく。
「それの補助的な能力としてすべての情報が見えるの。たとえばこのコーヒー。このコーヒーには味という情報、物質としての情報、色としての情報とか様々な情報が含まれてるの、だからその一部を改変して、ちょっと飲んでみて?」
これはひょっとして……間接キス!?
と思ったが戸崎さんは特に気にした様子もなく俺を見ていた。
なので俺も素直に飲む。
「甘い……!?」
ミルクや砂糖を入れたのとは違う。コーヒー自体がもともと甘かったかのように苦味が一切なく、ただ甘かった。
「驚いた? 情報操作はすべての情報を操れる」
それが本当だったら重力や、人間の本質すらも変えることができるのではないか?
世界の情報も見えるといった。
ならば、世界の情報を書き換えることができるのじゃないのか?
地球が丸いって情報や、動物がそれぞれの言語ではなくすべて日本語をしゃべるといったように。
そして、最後には生という情報を書き換え自由に殺すことも……。
「フフ、君が何考えてる当ててあげよっか? 確かに世界の情報を変えることはできるかもしれない。でも、これぐらいは簡単にできるけど物質の種類や変更しようとするものによって体力を消耗する。世界や生き物の情報、形の変化とかは相当消費するからね、人間100人の体力をすべて使っても足らないだろうね。それに情報を直接見るってことはそれだけ多くの情報が入ってくるから目が疲れるの。だから目薬が手放せないのよねぇ」
超能力も万能ではないということなのだろう。
便利な能力はそれだけ制限も多いってことだ。
「それに未来の情報は見れないから君がどんな能力かわからないけどね」
「能力が使えることが分かったのじゃから早速これをなめてみよ」
そういって渡されたのは能力の説明を受けてた時に見せられた飴だった。
俺はそれを若干のためらいのうちに受け取り舐める。
「イチゴ味……」
普通においしかった。
なんだろう……。
これで本当に超能力を使えるようになったのだろうか……すごく不安である。
「基本的に子供のうちに舐めさせるものじゃから子供が好きな味にされてるみたいじゃな。木里、悪いがどんな超能力かもう一度見てくれないか?」
「はいはい。わぉ、これは珍しいことにディアル能力者よ」
ディアル? つまりは能力は二つか!?
「つまりは俺TUEEEが……「100人に一人ぐらいの確率じゃな」……待ってるはずないですよねぇ」
ちっくしょう。
わかってたよ、しょせん俺は凡人だなんて!
「能力は水流操作と……あら、風力操作じゃなく空気操作ね。ランクはそれぞれCとSかしら?」
「ちなみにEはないと変わらない、じゃがまずいないのじゃ。Bが平均で、AからSとなる。そこから一個ずつ増えてSSSが最高じゃな」
「ちなみにSSSランクは世界に影響を与えるような能力ってわけなの。あくまで目安であって全部操作の子なんて見た能力はすべて使えるけどBまでしか能力を発揮できないみたいだから世界に影響なんて与えられないからね、その点雛はSSSらしいSSSってことかしらね」
「って、ことはそれなりに強い?」
「まぁそれなりってことね。まず超能力のランクが低くっても使いこなせばランクが上の者にも勝った例があるから、えっと……名前は何かしら? 君と似てたと思うんだけど……」
「それより超能力さっそく使ってみていいですかね?」
俺はその誰か知らないやつよりもさっさと自分の超能力を使ってみたかった。
水と空気を操れるのなら色々と面白いことができそうだ。
「まだ駄目よ? 初めて超能力を使う際は暴走や、事故が起こってもどうにかできる人と、広い場所でやってね」
それは安全のためにらしい。
まだ能力の使い方を知らない人が使うと周りの人にけがをさせたりするらしいからだ。
「それじゃあ私は仕事があるからこれで」
そういって戸崎さんは席を立つ。
「雛は私が休みに入ったらゆっくりと説教するから!」
そう言い残して去って行った。
「…………木里の説教……じゃと!?」
次元が震えてたのはまた別の話である。