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異世界トリップしても俺TUEEEなんて夢のまた夢でした  作者: 棘田 清棘
異世界トリップしても平穏な時なんてありませんでした
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行きましょうか

「どうやら一晩寝て、落ち着いた様じゃな」


 朝起きて、リビングに行くとすでに次元が座っていた。

 すでに着替えていて、食パンを食べている。


「落ち着いたってどういうことだ? 俺は昨日から落ち着いてたつもりだが?」


「昨日ずっと泣き叫んでいたようじゃが?」


 ばれていた……。

 この年になって泣いてる姿を見られるのはめちゃくちゃ恥ずかしい……。

 それにもし気づいたとしても言わぬが花じゃないの?


「顔が思いっきり引きつっておるぞ? それにあれだけ大声で泣けばいやでも気づくわ」


 どうやら昨日、俺は想像以上に大きな声で泣いてしまっていたらしい。

 引きつってると指摘されてから自分でもようやく顔が引きつってるのが分かった。


「んで、昨日言っていた用事はすんだのか?」


 俺が椅子に座るとテーブルの上の6枚切りの食パンが袋ごと渡される。

 どうやら勝手にやらということらしく、袋の中からパンを一枚出すとテーブルの上にあったジャムを付ける。


「問題ない。ちゃんと今日会える約束を取り付けたのじゃ」


「ふーん。で、どこの誰なんだ? その俺の身分をどうにかしてくれるってやつ」


「うむ、若いが能力がその職業がぴったりってことでな、政府に直接勤めておる。じゃから戸籍を一つぐらい紛れ込ませるのは楽勝じゃろ」


「やっぱそれ犯z――」


「仕方なかろう。戸籍が存在しない人物の戸籍を作ろうとしてるんじゃ。お主ぐらいの年で戸籍がないのはおかしいからのぅ。なに、心配するな。儂も、奴も政府から必要とされてるからそうそう刑に処されることはない。まぁ、多少動きに制限がかけられるかもしれないがな」


 そう言って最後の一口のパンを口に放り込むと椅子から立ち上がる。

 

「とりあえず10時から約束あるからそれまでに準備してくれ」


「了解っと」


 と言っても特にやることはない。

 何故ならこっちにあるものなんて携帯と漫画、財布ぐらいである。

 お金は同じであったから問題なく使えるみたいだ。

 ちなみに全財産は2000円ちょっと、財布に入れとくのはこんぐらいだと思うが飯に行ったりするとすぐに無くなるでだろう。

 ポイントカードなどは店があっても全て使えないと考えていいだろう。顧客情報が違うのだから。

 携帯は圏外、カードも携帯もそもそもこっちの世界で登録してないから当たり前だ。

 つまりは元の世界から持ってきた漫画を読む以外にできることがないのだった。


「ってことで読みましょうか!」


「のぅ、あとで儂にも貸して欲しいのじゃ」


 次元もこの某週刊誌を読みたがっていた。

 それにしてもこの世界でこの漫画はどうなっているのだろうか?


「なぁ、こっちには超能力があるんだよな?」


「そうじゃな、火炎操作(ファイアー)距離操作(ディスタンス)視覚操作(ヴィジュアル)など様々なものがあるぞ?」


「ん、全てに操作が付くのか? まぁ、それは置いといて、この超能力がメインのこの漫画はどうなってるんだ?」


 俺が指差したのは超能力が原因で様々な問題が起きるギャグ漫画だ。

 透視のしすぎで内臓とかまで見えたり、サイコキネシスの細かい制御ができなかったりする漫画である。

 超能力が万能ではないというものネタにしたものであるが、実際に超能力があるこの世界ではどうなっているのだろうか?

 昨日の時点こっちの世界にも元の世界と同じ漫画があるのは確認していた。

 ならば元々超能力が存在している世界では超能力や異能力バトルものではどうなってるのだろうか? まさかそのままというのは無いだろう。


「うむ、それは若干内容変わっとるな。超能力であることは変わらないが複数の超能力があり、それがすべてSSSランクという規格外の能力となっておる」


「んじゃ、この超人スポーツ漫画は?」


 これは少し前に脅迫事件があり話題になった漫画だ。

 とあるテニス漫画の再来と言われてあり、人間にはできないであろう技が数々存在するのである。


「うむ、スポーツには超能力が禁止されておるからのう。主人公たちの日常パートで使う能力がなくなったぐらいじゃな」


「どうやって超能力を使ったかなんてわかるんだ?」


「ふむ、お主の世界に超能力がないからわからんのか。製造方法は不明じゃが、ある程度の組織になると超能力を使ったか判別する機械が置いてある。それを使って超能力を誰が使ったか判別するのじゃ。超能力を使った残滓で種類までわかるのじゃから犯罪対策にもなっておる」


「へぇ~」


 そんなやつがあるのなら便利だろう。

 超能力はみんな同じ能力じゃないみたいだからそれだけでも犯人が絞れるし。


「これは?」


 それはあるものを食べたら超人的な能力を得るという大人気海賊漫画であった。


「異世界には超能力が存在しないってことになっておる。だから変わらないと思うのじゃ」


 へぇ~。

 ならば超能力が存在しないならば異世界に行って超能力で無双するのもありそうだ。

 と思ったところで自分が毎日見ていた小説サイトを思い出す。

 そのサイトがこっちにもあるならば無双系の小説にこっちにはないタイプが生まれてそうだったからだ。

 超能力を持ったまま異世界に行って無双するというものが流行っていてもおかしくない。


「なぁ、小説投稿サイトの小説家になりたいは知ってるか?」


「うむ、読むだけじゃが儂も登録しておるぞ」


 正直言って意外だった。

 小説が趣味ならばともかくネット小説はまだ知名度が低いからだ。

 同じ趣味のものがいるのでテンションが上がってしまう。

 その後も小説家になりたいの話題で次元と盛り上がった。

 最近文庫で書籍化が多くなってきたや、エタってしまってもったいない作品などの話である。

 気づけば時間を忘れて話し込んでいた。


「ん? やばい、もう行かないとやばいのじゃ」


「まだ10時まで40分ぐらいあるじゃないか」


「移動時間があるじゃろ」


「えっ? 次元操作なら瞬間移動的なものできないの?」


「一応できんこともないがそれ用の能力じゃないから移動場所の細かい操作ができないのじゃ。まだ上空高くに飛ばされる程度なら何とかできるのじゃが、宇宙空間とかに出たら取り返しがつかん」


 と言うことだった。

 先ほどの超能力ギャグ漫画のように超能力にも欠点があるらしい……。


 その後は普通に移動した。

 歩き、電車、また歩きである。

 超能力があるというから何か特別な移動方法かと思いきや元の世界と変わらない交通方式であった。

 そして辿りついたのはファミレスである。


「ちょっと遅いわ。こっちは珍しくあなたが頼みがあると言ったから仕事の休憩時間に隙を見つけて来てあげたのに」


「木里、わざわざすまんのじゃ」


 そこにいたのはメガネをかけたスーツ姿の真面目そうな人であった。

 品定めをするような眼でこちらを見てくる。


「そこにいる男の子が雛の被害を受けた子ね。初めまして、私は戸崎(とさき)木里(きさと)。情報操作の能力を買われて政府の直轄として働いてる者よ」


 そこで咳払いを一つし、笑みを浮かべながら口を開く。


「名前を逆から言ったりしたら社会的に殺すから」


 その笑顔がこれ以上なく怖かった……。




「ちなみに雛は後でお仕置きね」


「あんまりじゃ!?」

とさききさとさんの登場です。

出番はこれからもあるけどヒロインになるかは不明。

ちなみに名前でからかわれた過去があるので逆から読むととか言わないでね

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[良い点] すぐに人を脅すやつらしかいないのか?初対面で?きっつ
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