来ちゃいました。異世界!
異世界に行ってみたいて、皆も一度ぐらいは考えたことがあるんじゃないだろうか?
特に漫画や小説を読んでる人には多いと思う。「異世界行ってハーレムを作りてー」とか「異世界で魔法を使いたいよなぁ」などと思ったことが。
冷静になると、現在モテてない人間が異世界に行っただけでモテるわけもないし、異世界と言っても魔法が存在しない世界なども多い。
だけど、そんな冷静になる必要もなく、夢や憧れの世界で本当に行けるとは思わなくっても行きたいと考えたことぐらいは何回もあった。
かくいう俺もその一人である。
異世界というのはそれだけで重要な要素である。
それだけでこれ以上ない非現実的なものであり、だからこそある程度なら他の現実的でない部分を無視することもできる。
価値観の違いや、次元の違いなどにより、普通だと思ってた人間が急にモテたり、強大な力を得たりしても異世界に来たから前の世界の法則など関係ない。
あくまでも俺個人の考えであり、賛否両論も多いだろう。
つまり何が言いたいかと言うと非現実的なことに憧れるけどそうそう起こらないよねっていうことだ。
と、ここまで思考してきたがそれはただの現実逃避である。
現実逃避、つまりは現実を受け入れたくない状況にあるのであった。
異世界に来るなど思ってもいなかったし、ありえないと思っていた。
しかし実際には現在、俺はどこかもわからない場所に来ている。
どうしてこうなったのだろうか?
それは毎週月曜日に発売する某少年誌を買った帰りのことである。
突然地面に穴が開き、突然のことにあわてて避けようとしたが無駄であった。
慌てて飛び越えようとした俺は突然穴から出てきた手に対応できずに、そのままその手によって穴に引きづりこまれた。
そして俺は異世界に来た――。
いや、正確には異世界かどうかは分からないのだが、それでも今までいた場所とは違う場所に瞬間的に移動していたということに変わりはない。
「あぁ、知らない天井だ」
「おい、寝るな」などと少女の声が聞こえる気もするが気のせいであろう。そんな風に思いながら天井を見た。
「寝るなと言ってるじゃろうが!」
頭上に足が降ってきた。
正確には蹴りが飛んできただろうか?
気が付けば死の恐怖からか、本能的な部分でその蹴りを回避していた。
「あぶねぇな!?」
「なぜ儂が事情を説明しようとしてる時に寝ようとしとるのじゃ!?」
「少しぐらい現実逃避させてくれよ。ついでにどこだよここ、そしてお前は誰だよ!?」
「今からそれを説明しようとしとるんじゃろうが!」
目の前にいる小学生ぐらいの少女がそう怒鳴る。
黒髪のツインテールであり、どこかの制服かブレザーにチェックのスカートを履いていた。
蹴られる寸前にスカートの中を見たが、残念なことにスパッツを履いてやがった……。
「一つ言っておくとスパッツで残念だって顔に出ておるからな……」
どうやらスカートの中を見たのに気づかれていたようだ……。
「とりあえずお主に一つ謝っておきたい」
そう少女が前置きをする。
その申し訳なさそうな表情から、この小学生ぐらいの少女が負うには重い話をしようとしてるのが分かった。
「なんだよ。スパッツを履いてたことか? それならスパッツをこの場で脱いでくれればいいぞ」
だからこそ、冗談を言う。
これで少しでもつらい顔をしなくてもいいように……。
まぁ、その代償に、回し蹴りによって吹っ飛ばされ、フローリングに頭をぶつける羽目になったのたが……。
「お主も気づいておると思うが、おそらくここはお主から見て異世界になんじゃと思う。そして、お主は必要に迫られて儂が召喚したなどと言うわけではなく、儂の趣味による事故によってここに来たってことじゃ」
どんな趣味してたらこんな事故になるんだよ、と突っ込みたいところだがそれよりも重要なことがある。
それはここが異世界であるということだ。
「俺も地面がなくなって、誰かの手につかまれてここに来た時は異世界だって思ってたよ。だけどここは俺が住んでる所とそんなに変わらねーぜ? あえて言うなら家具が豪華になってるぐらいだな。床もフローリングだし、窓も透明なガラス、電気も変わらないし、何より使ってる言葉も日本語だ」
そうなのだ。
来たときは異世界かと思ったが元いた地球とそんなに変わらない。
蹴られたり、寝転んだ床はフローリングだし、キッチンも見えたがIHだ。
テレビも薄型のテレビであり、机も木製であり、ソファーも店で売ってるのを見たことあった。
だからこそここが異世界だと思えないのだ。
「ふむ、やはりお主の世界もこことそんなに変わらないようだな。では説明するって言っといて悪いが儂もお主の世界がどんな所かわからないのでいくつか質問させてもらう」
そうやって目の前の少女が言う。
こちらも現状をしっかりと把握したいので文句はなかった。
「この星の名前は?」
「地球」
「住んでたところは?」
「日本の首都である東京。もっと詳しく言うか?」
「いや大丈夫じゃ。ならば戦争はどうじゃ?」
「それはあるかってことか? 日本じゃ長い間やってない。ベトナムだかどこかではまだあるらしいが大国が絡むような大きなのはないな」
「漫画やゲームなどの娯楽」
「麦わら帽子の海賊主人子の奴や歌が年末のでかい歌番組になった奴とかが売れてたなぁ。ゲームはP○4が最近発売された。任○堂とプレ○テーションの2強か? まぁ間違ってる可能性もあるが……」
「魔法」
「どっかにあるかもしれんが基本的に創作物の中だけだ」
「超能力」
「それも創作物の中のみ」
「科学力」
「科学力って言われても分からんけどスマホってのが普通に普及してるし、パソコンは大体誰でも使ってる」
「世界共通言語」
「英語か? 俺は簡単な英語しか喋れんけど」
その後もいくらかの質問が続き、いい加減飽きが来たところで質問が終わる。
少女は先ほどの質問で何か分かったのだろうか? ふむ、とうなずき口を開く。
「間違いなく異世界じゃな」
「おいおい、聞いてなかったのか? 麦わら帽子の海賊漫画の話になった時少し目を輝かせてたのを俺は見逃さなかったぞ? そんな娯楽系の創作物が違う世界でもあるとは思えんからな」
「なぜそう言い切れる?」
俺が見た限り俺がいた世界と変わらない。
ビルがあって、テレビがあって、中世ヨーロパ風ではなく、魔法も存在しない。だがそれでも異世界じゃないと言い切れるかと少女は言う。
俺の様子を見て少女は真剣な表情で言葉を続ける。
「お主は並行世界を知っておるか?」
「知ってるよ。もしもの数だけ世界は存在するとかだろ? だけどそんなもしもなんて星の数ほど、と言うより無限に存在すると思うんだが……」
「その通りじゃ、世界は人間が用意した単位では表せないほど大量に存在する。そして、儂らの世界とお主の世界を大まかに区別すると超能力が存在しておるか、してないかじゃ」
超能力が存在する。
そのことに俺はあっけにとられた。
「ほかにも超能力の種類とかで分けることもできるじゃろうし、ゲームとかでも若干の差異があった。じゃがもっとも違うのはこの点じゃろう。お主が来てしまった原因も儂の超能力のせいじゃ」
そうして少女の横に黒い裂け目ができた。
少女はその黒い裂け目に躊躇なく突っ込むと中から何かを取りだす。
それは店にでも売ってそうな飴の袋だった。
しかしその袋にはどこの会社かも味も何も書いておらず、無地でであった。
「儂らはこの飴をなめて超能力を得る。成分や理屈は知らぬが、この飴を舐めてから儂は次元を操る次元操作と言う超能力を手に入れた」
「待てよ、そんな強力な力を誰もが持ってるのか?」
次元を操る力、人一人を趣味などと言う理由で気安く異世界から連れてきたとしたらそれは相当な力であろう。
そんな力がありふれていたら戦争も激化してるし、様々な問題が起きる。
そしてそのうち世界が滅ぶだろう。力を持つのは善人だけでないし、善人も力の使い方を間違えることもある。それが巨大な力だとしたら進むのは破滅の道だ。
「もちろん儂のは特別に強力じゃ。超能力のランク付けでは10人しかいない世界最高のランクであるSSSじゃ」
「自慢か? 自慢かよ? はっ、そうか。少し変わってるがこれも異世界トリップ、ならば俺TUEEEの展開が……」
「ないとは言い切れないが、限りなく低い上にそれ以前の問題としてお主には超能力が使えんって可能性も残っておる」
「なんだよ、少しぐらい夢見させてくれよ」
「人に夢と書いて何て読むかしっとるか?」
「儚いですね、知ってますよ。ところで名前は?」
「むっ?」
呆けたようにそのようなかわいらしい声で返してきた。
ちょっとかわいいって思っちまったじゃねぇか!?
それでも表面には出さずに口を開く。
「むじゃねえよ、お前の名前」
「まだ名乗ってなかったのかのぅ?」
少女と色々ありすぎて自己紹介などしたような気分にでもなっていたのだろう。
そんな風に言っていた。
「次元、次元雛じゃ」
「そうか、俺は双神凪だ。よろしく」
基本的に不定期ですが最新の投稿日から一週間以内には投稿しようと思っています。
第二話はできれば明日の9時になります(予定)
感想、評価、酷評など色々お待ちしております。
まだまだつたない部分があると思いますがこれからよろしくお願いします。