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96_不思議の機械の教祖様です

 パスタという素晴らしい人材を手にした俺は、その後も頼み込んで色々な台車を作ってもらう事にした。モンスター○ールばりに腰にソフトボール状の台車をいくつも装備した俺は、ちょっと満足してパスタの家の外壁にもたれ掛かった。

 いやあ、俺ってば台車として随分と成長したな。俺の成長ではないけど。


「こんなもんでいい?」

「いやあ、最高だよパスタ。苦しゅうない、近う寄れ」

「わーい。苦しゅうない、苦しゅうない」


 パスタが何も考えず、脳天気に俺の下へ擦り寄ってくる。ふはは、苦しゅうない。苦しゅうない。

 ミヤビが唇を尖らせて、少し不機嫌になっていた。

 つかつかと俺のそばに歩いて来て、ゲフゥッ!?

 ……鳩尾に拳をいただきました。

 苦しい。


「……ミヤビ、ちょっと手加減しろ」

「ぷいっ、です」


 ミヤビはそっぽを向いた。……可愛くない奴だな。そこが可愛いけど。

 というか、こういう時はシモンズから出てきたりするのな。普段は一切シモンズから出ない癖に。

 自分の足で歩けるのだから、自分の足で歩けよ。太るぞ。


「それじゃあ、教祖様を倒してくれるんだね!!」

「よし、行くぞミヤビ!! トーヘンボクの悪魔を倒しに!!」

「はい!! 行きましょうアルトさん!!」

「……おいコラー」


 まあ、流石にそれは冗談である。俺ともあろう者が恩人に泥を塗るなど、言語道断だ。横断歩道は周りをよく見て渡りましょう。

 俺は腕を組んでパスタを一瞥すると、言った。


「――言っておくが、俺は強いぞ?」

「わーい!! 頑張って、アルト・クニミチ!!」


 ……あまり調子に乗ると負けた時キツいので、余計な事は言わないでおこう。

 この世界に来て、俺も大分調子が出てきたな。こうやってひょいひょいと裏ボスまで倒して、次なるシナリオへと駒を進めようぜ。


「教祖様はケルベロスみたいな変身するけど、アルトなら大丈夫だよね!!」


 ――え?


「……教祖様って、人、じゃないのか?」

「あ、勿論人だよ? 最初は人なんだけど、ぼく見ちゃったんだ。ゴードソの裏で教祖様の信仰に反発した人が、ケルベロスに変化した教祖様に食べられちゃったって」

「乗れミヤビィ!! 走れ脇の下号!!」

「脱・出・ですー!! わーお!!」

「……おいコラー。ゴロンズじゃなかったのかよー」



 結局、教祖様と戦う事にはなりそうだ。途中からは本気で台車を転がして逃げようかと思ったけれど、よく考えたら『勇者の目』は教祖様の所にある訳で、どの道俺はそのケルベロスとやらと戦う事になる。

 俺は新しくなった台車にミヤビを乗せ、ゴードソを案内して貰った。特に何の変哲もない炭鉱っぽさのある場所だったが、目に見えて新しい建物がゴードソの奥に立っていた。


「あれが、教祖様の作った『オレツエー邸』だよ」


 なんと身も蓋もないネーミングセンス。ゴテゴテした金色で、あまりにも趣味が悪い。

 まあ趣味も悪ければネーミングセンスも悪いと言った所か。馬鹿め。モノの価値は素材じゃねえよ。

 新しい台車を貰って少しだけ調子に乗った俺は、そんな事を考えていた。


「で、どうなんだ? 信仰拡大のほどは」

「……残念ながら、教祖様の魔力の強さに惹かれて、少しずつ『本物なんじゃないか』っていう話が広まっちゃったんだよ。お陰で今では、結構な人数が教祖様の思い通りデスよ」


 ……なんということだ。教祖様って一体、このゴードソに何をもたらす存在になろうとしているのだろう。

 もしかして、街ごと乗っ取ろうって話じゃないだろうな。俺、そんな奴と戦いたくないぞ。


「さて、何から始める? アルト」

「んー、そうだなあ……何か、面白い感じの仕掛けが欲しいな」

「面白い感じの仕掛け?」


 パスタが俺の言葉を繰り返した。ただ戦って倒したとしても、既に信仰してしまっている人々は元に戻らないんだろうし……。皆の目を覚まさせる何かが欲しいな。

 とりあえず、酒場にでも向かってみるか。



 酒場に辿り着いた俺、ミヤビ、パスタの三人は、屈強な男達に囲まれていた。……うん。なんというか、ゴードソの機械屋舐めてたわ。

 二メートルはあろうかという屈強な男達が、やれあそこの機械はどうだ、こっちの設備はどうだという話をしていた。

 何でこんなに肉体労働系なんだよ。もっと開発者って言ったら、ひょろい白衣の感じじゃないの。

 うーむ、どうやって情報を集めようか……


「オイ、そこの」

「え? 俺?」

「お前、こないだの戦士選抜で優勝した奴に似てるな。名前、なんてーんだ」


 ……おや。


「あ、それ俺っすよ。アルト・クニミチっす」

「おお、やっぱりお前だったのか!! いやあ、似てるな―と思ったんだよ」


 話し掛けてきたのは、ハゲにバンダナを巻いた、妙にガタイの良い素敵ヒゲのオヤジだった。糸目が眩しいぜ。


「最近、冒険の方はどうだい? 順調かい?」

「ああ、まあ俺に掛かれば余裕っすよね、旅とか」


 とりあえず適当な事を言うことにした。おおー、と周りから歓声が漏れる。

 何で急に俺、こんなキャラになっているんだ。まあ、良いんだけどさ。

 これを機会に、教祖様の情報を集めるとしようか。


「ところで、最近ゴードソにはさぞかし素晴らしい教祖様が居るっていう話を聞いたんですけど」

「ああ、そうなんだよ。なんでも、世界の秘密を知っているとかなんとか言っているらしい」


 ミヤビがその言葉に、少しだけ反応した。

 世界の秘密ってのは、ビーハイブが追い掛けている真実とやらとイコールだったりするのか……?

 だとしたらそいつを捕まえて、情報を聞き出した方が良さそうだな。


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