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91_泉の守り神は沈黙を守る金です

 ゴールドナイト・ドラゴンは巨大な身体をのそりと持ち上げ、金色のでかい剣を手に取った。

 侵入者発見、といった所だろうか、特に声を発することもなく、まるでガードマンのようだった。

 もしかしたら、こいつは持ち場を離れることが出来ないタイプの中ボスなのかもしれないな。

 現に、剣を手に取るが、それきり襲ってくる様子はない。

 もう少し近付けば、ゴールドナイト・ドラゴンの攻撃圏内かもしれない。

 俺はミヤビの台車を掴むと、そろりそろりと後退した。


「アルトさん、戦わないんですか?」


 ミヤビはそんなことを言っているが、生憎と俺にはガードマンに対抗するためのトークなど思い付いていない。

 ゴールドナイト・ドラゴンは剣を抜いて、戦闘体制に入った。大丈夫だ、この手の魔物は持ち場を離れる事はないから――

 そうして、ゴールドナイト・ドラゴンは一歩を踏み出す。


「あー、お約束とはいかないような気はしてたんだぜ、マジで。考える時間なんてくれそうにないなーって、ちょっと考えてはいたんだよ」

「アルトさん!! 攻撃が来ます!!」


 ミヤビはそう言うが、いかにゴールドナイト・ドラゴンの剣が巨大と言っても、攻撃が届くような距離には居ない。

 今の内に、素早くここから離れて――

 ゴールドナイト・ドラゴンは剣を上に掲げ、そこから魔力が吹き出した。

 瞬間、俺とミヤビはゴールドナイト・ドラゴンを含む円形のドームに閉じ込められた。

 ドームは半透明で、光が入らないので少し暗くなる。

 まあ、この暗雲空間で明るいとか暗いとか言っても、仕方ないんだけどね。


「あー、束縛系ね。それもなんとなく気付いてはいたよ」


 すまん、嘘だ。正直、逃げてしまえばこっちのもんだと思っていた。

 ゴールドナイト・ドラゴンはその体制のままで、更に魔力を放出する。恐るべき数の火の玉が、俺とミヤビに襲い掛かった――!!


「いや、火の玉は普通ドラゴンの方が吐くもんだろーがよ!!」


 俺の抗議も何処へやら、ゴールドナイト・ドラゴンの攻撃は続く。

 一歩も動くことなく、剣を高らかに掲げて魔法を唱え続けるその姿はまさに賢者――!!


「ゴールドナイト・ドラゴンは魔法が得意なんです!! 気を付けてください!!」

「ナイト的な要素は一体どこに行ったんだよ!!」


 ドラゴン何もしねえし!! 見た目バグってんじゃねえの!?

 ゴールドナイト・ドラゴンは更に魔法を唱え、氷のつぶてを飛ばしてくる。堪らず俺はシルケットとシーフィードを呼び出し、風の力を使った。


「<エアロブラスト>!!」


 氷のつぶてはゴールドナイト・ドラゴンに跳ね返り、攻撃はそのまま返される。

 便利だな、風の能力。こんな風にも使えるなら、盾はいらないんじゃないか。


「アルトさん、電気です!!」


 ――はっ!? 風の力に見惚れすぎて、ゴールドナイト・ドラゴンの挙動を確認していなかった!!

 ゴールドナイト・ドラゴンは全く動かずに魔法を唱え――もうお前剣を捨てろ。

 俺は咄嗟に、ミヤビの台車を掴んで横に飛んだ。

 勿論、風の力を使う事も忘れない。


「おわあっ!!」


 俺たちの居た位置を、無数の雷の槍が貫いて行った。

 ……なるほど。電気系の攻撃なら、風の力でガードはできないか。やるな、ゴールド賢者ドラゴン。

 とにかく、一瞬でもヤツの気を逸らす事が出来れば、ミヤビの台車を泉に向かって押し出す事ができるんだ。ならば、俺の仕事は台車として、ゴールドナイト・ドラゴンの足止めをすること……!!

 俺はゴールドナイト・ドラゴンをよく観察し、特徴を探した。


「また基礎魔法が来ます!! 避けてください!!」


 基礎魔法だったのか。名前すら分からない雷の魔法を、俺はどうにか交わし続けた。

 とりあえず、魔法使いが相手なら弱点は近付く事だよな。

 もう、見た目に惑わされるのはやめよう。俺は雷の攻撃を風の力で避けながら、ゴールドナイト・ドラゴンに近付いて行った。

 俺の台車を操る技術も向上したもんだ。雷攻撃はミヤビにも当たることはない。


「近くに来れば、どうかなーっと!」


 ゴールドナイト・ドラゴンは剣を構え、俺に向かって振ってきた。――なるほどね。近接戦闘の範囲内に移動すれば、剣も役に立つって訳か。

 ドラゴンはなんか、ずっと寝てるが。

 大振りだし、近接戦闘の範囲内でひょいひょい避けていた方が楽だな。縦に振られる巨大な剣を右に避け、俺はそんな事を考えた。


「ところでミヤビ、ドラゴンの脇に台車を押し出したら、泉まで行ってくれるか?」

「……へ? それは多分、可能だと思いますけど」

「よーし。じゃあ、タイミング見て押すからな。こけるなよ」


 俺はゴールドナイト・ドラゴンの気を逸らすための口実を探した。

 ゴールドナイト・ドラゴンは、縦にしか攻撃をしてこない。……どうやら、攻撃パターンは同じようだ。

 相手に対策されていれば、新しい攻撃が来るといった所だが。魔法攻撃と違って、近接戦闘にはあまりパターンがないのだろう。

 無機質な分だけ、スリーピング・シープよりも楽かもしれない。

 俺は長剣を確認し――よし、あれだな。


「ミヤビ、いっせーのでいくぞ。覚悟しとけ」

「は、はいっ!」


 ゴールドナイト・ドラゴンの次の攻撃が来る――――

 俺はそれを巧みにかわし、ミヤビをドラゴンの隣に向かって放った。

 ゴールドナイト・ドラゴンの攻撃対象が俺とミヤビに分かれ、一瞬そこに隙が生じる。

 ……さーてと、いっちょやってみっか。


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