表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/110

71_モンク、ニヒルに笑う。です

 三角帽子のお兄さんは、険しい顔で俺達にそう言った。鼠……? お菓子を食べる鼠だろうか。このポップコという街にも、何かしらの魔物が蔓延っていたりするのかもしれないな。

 ……というかだな、俺はこんな所で道草食ってる場合じゃなくてだな。さっさとワノクニまで戻って、とにかくまずは居場所の分かっているルナとだけでも合流しないといけないんだが……。


「最近、なんだけどね。この街では、夕方から夜に掛けて巨大鼠が食べに来るんだ」


 まさか予想の通りとは。現金な鼠だな。


「そうなのか? 至って平和そのものといった様子であるが。お菓子も無くなってはいないだろう」


 モンクが喫茶店の中を物色しながら言う。確かに、何かが食べられている様子はないよなあ。


「いや、人を食べに来るんだ」

「怖えわ!!」


 何それ!? いきなりホラー展開に突入なの!?

 お菓子の国に巨大鼠が人を喰いに来るとか、子供の夢を壊すのも大概にしろよ!!


「……どうも、最近魔物の様子がおかしいんだよ。本来魔物と人間は住み分けをきっちりしているから、お互いのテリトリーにさえ入らなければ、魔物も襲ってこない筈なんだが……最近は、魔物の方から襲って来る」


 三角帽子のお兄さんは、飲み物のストローをいじりながら言った。


「マリンクイーンも、ある日突然海から姿を消してしまったようだし」


 ――マリン、クイーン。あの大群を動かしていたのは、魔物使い――サラミ・サンドイッチだった。

 もしかしたら巨大鼠にも、ビーハイブの連中が絡んでいる可能性はあるのか。そうだとするなら、あまり気を抜く訳にもいかないな……。

 そもそも、何故サラミがビーハイブに加担しているのかも、現状だとよく分かっていないことだし。

 そういえばこのお兄さん、三角帽子がサラミとよく似ているな。


「……あんた、もしかして魔物使いだったりするか?」

「あ、よく知っているね。いかにも、僕は『海の街ボウモア』から来た魔物使い。ケントって言うんだ。よろしくね」


 ――もしかして。


「サラミ・サンドイッチという名前に、心当たりはないか」

「サラミ・サンドイッチ……? その人も、魔物使いなの?」


 ……駄目か。もしかしたらと思ったんだけど。まあ、魔物使いだからといって同族の名前を全て覚えている訳でもないだろうし、こればっかりは仕方がない。

 俺はドリンクを飲み干すと、ケントに聞いた。


「ケントはどうして、ポップコに来たんだ?」

「ここにはね、お菓子を食べるのが好きな、フレンドリーな魔物が寄ってくるんだよ。恥ずかしながら僕は新米だから、ここで自分のパートナーを探しているというわけ」


 なるほど、そんな理由があったんだな。ということは、この街もまた、魔物使い御用達というわけか。

 確かに、来る途中で小さな魔物をいくつか見たような気はする。偽物の飴玉やビスケットに必死でかじり付こうとしていたが。


「さて、そろそろ行かないと。本当に危険になってしまうね」


 ケントは席を立った。

 ――瞬間、とてつもない地鳴りがあった。俺もモンクも、驚いて席を立つ。

 地鳴りは激しい音を立てて、段々と大きな音になっていく。


「――どうやら、手遅れのようだな」


 モンクがいつになく、深刻な表情で言う。……マジか。俺、今度は巨大鼠と戦わないといけないのかよ。


「まずい。鼠のレベルは三十五。今の僕じゃあ、全然相手にならない」


 あー、それ俺もさっぱり相手にならないわ。今に始まった事じゃないけどな。

 ……あれ? でも、そんなレベルだったら。俺は駄目でも、モンクなら。


「その名を、『スッゴイデッカイ・ネズミ』と」

「そろそろ、なんか捻った名前にしない?」

「え?」


 完全にこっちの事情ですけどね。分かってるよ、この突拍子もないチグハグな世界にネーミングセンスを求めるのは間違っている、なんてことは。

 それでもさ。両壁のオッサンとか、もうちょっとさあ。あるでしょ。なんか。

 瞬間、扉が轟音を立てて壊れ、鼠の――――

 ――――鼻?


「きた!!」

「えええ!? でかすぎだろ!!」


 スッゴイデッカイ・コウモリとか、そこまで巨大化してなかったじゃん!!

 どうしよう。今の俺には、相変わらず武器が無いんだが。

 モンクは両手に魔法を使い、巨大な斧を手に取る。俺を見ると、鼠の方を指差した。


「アルト!! 妾達で片付けるぞ、あんな大したこと無い鼠なぞ!!」

「いや大したことあるよ俺にはすっごい大したことあるよ!!」


 とはいえ、モンクのそばを離れると俺が死にそうだから俺は付いて行くしか無い!!

 喫茶店を出て、俺達は外に出た。気が付くと既に日は落ちていて、そうかとっくに宿に戻っていないといけない時間だったか。

 室内だったので、時間を忘れていたかもしれない。

 辺りには、スッゴイデッカイ・ネズミの大群が――……


「十文字開放!! <ファーストコンタクト>!!」


 モンクは叫び、魔法陣を切った。ったく、どいつもこいつも好き放題魔法使いやがって。俺にも何か寄越せってんだ。

 いや、その前にその戦闘力を俺にください。お願いします。


「さあ、暴れるとするかの……!!」


 白髪褐色ロリは、不敵な笑みを浮かべた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ