表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/110

39_バーサス決めポーズ、です

 戦士選抜、二日目。俺は再び、ステージへと帰って来ていた。

 なんと、これに勝てば決勝である。ベストフォーに残ったというのは、個人的にはかなりすごいことだ。ルナとトゥルーの支援もあって、だが。

 そういえば、ミヤビって支援魔法も使えるって聞いた気がするけど、一向にその頭角を表さないな。……まあ、戦士選抜は基本的に対戦中の支援は禁止なわけだし、やることもないんだろうけど。

 極めてグレーに近いブラック(つまり違反)と、ねちっこい精神攻撃で戦う俺。

 外道中の外道である。

 なんとでも言え。勝てばよかろうなのだ。


「さて――!! 準決勝だ――っ!!」


 観客も盛り上がるなあ。でも、今回の対戦は多分混沌とした展開になるぜ。

 薄ら笑いを浮かべながら、俺はステージ端に向かった。


「アルト!! 頑張って!!」


 ルナが可愛らしい応援をくれる。俺は軽く手を振ると、ステージに上がった。


「シープコーナー!! 意外な方法で勝ち上がり続けてきた男!! その実況のし辛さは圧倒的!! アルト――!! クニミチ――!!」


 悪かったな、戦いが分かり難くて。


「解説のジヨン・カービラさん。彼はどうでしょう」

「ジヨン・カービラです。いやあ、戦士選抜も盛り上がってきましたねー」


 お前誰!?

 居なかったじゃん!! 決勝トーナメント一回戦ですら居なかったじゃん!!

 なんで急に解説とか付いてんの!? そろそろ選抜終わるよ!?


「そうですねー。クニミチは、セントラルのスラングで『脇の下』という意味ですからね。脇が活躍しそうですねー」


 てめえ脇の下で挟むぞ!!


「対するは!! 決めポーズだけで敵を圧倒してきたこの男!! 無駄な前振りは天下一品!! タマゴ――――!! スピリット――――!!」


 あれ、今日は普通にステージに上がってきた。タマゴは俺を見ると、良い笑顔になって頷いた。

 ごめん、悪いけど何のアイコンタクトなのか全然分からない。

 なんで急に以心伝心の友みたいになってんの。


「みんな――!! 俺様の名前を――!! 知ってるかい――!?」


 しかしタマゴが叫んだ時の、この観客の息のぴったり合った黙り具合は一体何なんだろう。


「タマゴ――!! スピリットさ――――!!」


 輝くリンゴのアップリケ。タマゴ・スピリットが壇上に立った。俺はいつも通り、短剣を抜いて構える。

 さーて、どうなることやら……


「ダーリン!! そんな変態に負けないで――!!」


 トゥルー、応援ありがとう。お前本当にこいつ嫌いなんだな。

 応援に邪悪な念がこもってるよ。

 とにかく、タマゴ・スピリットは頭のおかしい動きで相手を翻弄し、その中に技を仕込んで戦うという、あざといスタイルらしいということは前回の戦いで学習した。それなら、俺にも考えがある。

 俺は喉を鳴らして、試合開始の合図を待った。


「それでは――!! レディー!! ゴ――!!」


 開始と同時に俺はタマゴの真正面を避け、ステージ端を走り出した。とにかく、『輝かしい筋肉』を受けてしまったら、俺は戦闘不能になってしまう。それだけは避けなければならない。

 どういう効果なのかもよく分からないが、真正面に居るよりは横に逃げていた方が安全なはずだ!!


「アルトくん、俺様の攻撃を恐れているね?」


 おっかねえよ!! 悪かったな!!

 だが、俺もルナのために勝たなければならない。悪いが、ここは先手で仕掛けさせてもらうぜ……!!

 俺はタマゴの横を取ると、タマゴに向かって走った。


「ふんばりっと!!」


 この、攻撃を繰り出す瞬間の間抜けな掛け声なんとかならないのかよ。

 俺は少しテンションを下げながらも、タマゴに向かって短剣を繰り出した!!

 タマゴはその短剣を――手の甲で受け止めている!? な、なんだかよくわからないが、さすがだぜ……だが、俺の攻撃もここからだ!!


「タマゴ!! しりとりをしよう!!」

「しりとり……だと!?」


 タマゴが驚いて、目を見開いた。……そう、まず最初にしなければならないことは、俺のペースに乗せること。

 奴のペースに乗っかっていては、よく分からない攻撃を受け続ける駒になってしまう。それだけは、なんとしても避けなければならない。

 一回戦のフルートのようには、なってはいけないからな。

 先手必勝だ!!


「リンゴ!!」

「お、おっとっと……ゴリラ?」


 俺は勝ち誇った笑みを浮かべた。


「――――ラッパ」


 タマゴは驚愕の表情になり、頭を抱えた。――もう、気付いただろう。こいつは格好付けるのが得意な男。ならば、ほぼ全てのステータスで負けていそうな俺にも、対抗の手段はあるってことさ。

 俺は膝をついたタマゴを、白い目で見詰めた。


「ぐ、うっ……!! まさか、こんなにも速く攻撃を仕掛けられるとは……!!」

「――ほら、言えよ。お前の番だ」


 腕を組み、屈んだタマゴの背中を蹴ることも忘れない。奴の目には、俺が残虐非道な男のように映ることだろう。


「……く、くそっ!! なんて奴だ……」

「俺は言えるぜ? ――ほら、言えよ『パンツ』って。この、大勢の観客が居る前で叫んでみろよ」

「ぐっ……!! ぐおおおおっ……!!」


 まともに強そうなキャラほど、俺の不得意とするところだ。タマゴはまさに、その真逆を行く存在。尖ったキャラクターには、必ずそれ相応の落ち目や弱点があるということだ。

 ――悪いがこの勝負、俺の方が優勢だと思うぜ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ