表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/110

31_何故か歳を取るほどパワーが強いです

 戦士選抜も決勝トーナメントという折り返し地点になり、選手紹介も終わった。今の段階では、誰が勝つのか分からないが――……

 少なくとも言えることは、俺の勝ち目はあまり見えないということだけだ。

 Bブロック、俺の対戦相手は斧を振り回すおっさん。モンク・コーストとかいう人だ。既に準備運動を始めていて、自分の身の丈ほどもある斧を軽々と振り回していた。

 見たところ刃は殺されているようで、ビーハイブの連中ではないようだが……油断はできんな。


「それでは、対戦の方に移りたいと思います!! みんな――!! リッチーズに・行きたいか――!!」

「「イエ――!!」」


 だからどこなんだよ、そこは。

 いかん、今回ばっかりは突っ込んでいる場合じゃない。なんとかして、このおっさんに勝つ方法を考えないと……。思えば、俺は今まで相手のスピリチュアルな弱点を突いて巧みに言葉責めすることで、どうにか勝って来た。

 勝ち目が見えないのは、このおっさんにスピリチュアルな弱点が見当たらないせいだ。

 ……あれ、俺、最低じゃないか。気のせいか。

 つまり精神攻撃ってことじゃないか。


「アルト、相手は手強そうね……」


 ルナがモンクの斧を見て言う。あの攻撃に一発でも当たったりしたら。正直、俺の身が心配だ。

 下手すると、刃がどうとか関係なく殺されるかもしれない。

 今のうちに考えるんだ。ビストロとかいうガキでさえ苦戦した俺だ。この『どう見ても強キャラ』相手にどうやって戦ったらいい……


「アルト!! スピード命だよ!! あたしを見習ってがんばって!!」


 残念だが、俺にはお前の瞬速は真似するに真似できんよ。

 トゥルーは自分がこれから戦うかのように、準備運動をしていた。出来ることなら俺も、お前に席を譲ってやりたいよ。


「アルトさんアルトさん、すごく大きな斧ですね」

「ああ、そうだな」


 そして、ミヤビは何気ない一言を言った。


「振り回すの、すごく大変そうです」


 なんとなく、その言葉が耳に残ってしまった。どうなるのかは分からない。……だが、何かのヒントのような気がしたのかもしれない。


「それでは、両者リングに上がってください!!」


 ステージと言えよ。リングって、ますますプロレスみたいじゃないか。

 俺は敏捷の鉢巻を装備し、冷や汗をかきながらステージに上がった。モンクというおっさんは、俺を舐めるでもなく、馬鹿にするでもなく、ただ真剣にステージに上がる。

 一番厄介なんだ、こういうタイプが。落ち着いていて、ちょっとした隙を見逃さない。

 格ゲーにおいても、そういう奴が安定して勝っていたりするんだよな。

 俺の攻撃力の足りなさは折り紙つきだ。さて、どうやって戦えば良いだろう。


「小僧。戦いに情けはいらん。全力で掛かって来い」


 情けかけて欲しいわ――!!

 恥も外聞もなく、全力で掛けて欲しいわ――!!


「それでは――!! レディー・ゴ――!!」


 先手必勝。俺はすぐに斧の攻撃が届かず、かつ俺がステップを踏めば攻撃が届く位置に移動した。軽く前後に動きながら、モンクとかいうおっさんの隙を探す。

 おっさんは特に動くでもなく、俺のことをじっと見ていた。

 ……くそ、戦術を見られているのか。


「おおっと――!? 両者硬直状態だ――!! まだ攻撃は何も繰り広げられていないぞ――!?」


 うるせえよ余計なこと言うな!! このおっさんの攻撃が一度でも当たれば、俺は死ぬかもしれないんだよ!!

 ただの高校生バーサス斧男の運命やいかに。

 おっさんは俺の動きを見ると、笑った。


「はっはっは、ビストロという小僧との戦闘を少し見させてもらった。攻撃は拙いが、戦闘に関してまったくの初心者というわけでもなさそうだ」


 ……俺の動きは既にバレていたのか。どうする、しかもこの人、こんな話をするということは俺より遥かに強いっぽいぞ。

 勝ち目が見えないぜ……


「短剣という武器の特性をよく活かしている。身軽で動きが素早く、相手の間合いよりも内側に入ってラッシュを仕掛ける。よく訓練された、リーチの短い者の戦い方だ」


 うわーん、ありがとうおっさん!! その通り、俺は間合いと戦術だけは格ゲーで死ぬほど鍛えてあんだよ!!

 ゲームだけど!!

 だからといって、それが直接的に勝利に繋がったことは一度もないけどな!!


「だが、踏み込みが甘い。アッパーの隙に付け入った攻撃をするとき、あの時の君でも最大ダメージを与える方法は別にあった」

 ――ふと、俺は動きを止めた。

 俺のパワーではなく、動きの部分に対しての指摘。

 そんな所まで見られているのか。


「御託はいいな。そろそろ、行かせて貰おう」


 いや、いいよ!! もっと御託言って!!

 俺は動きを再開し、少しおっさんと距離を取った。

 くっそ、自分から下がるっていうのは、格ゲーでも有名な負けパターンの一つだ。完璧に圧されている。

 ビビってんじゃねえよ俺!!


「いざ!! 参る!!」


 おっさんは一歩踏み込み――踏み込みが深い!! 大きな斧を持っているから、そんなに大きな一歩は踏み出せないと思っていた。これほどに身軽とは。

 俺は咄嗟に後ろにジャンプして、おっさんの斧攻撃をかわした。

 おっさんはそのまま一回転して、俺へラッシュを仕掛けてくる!!


「どうした、受けてみろ」


 受けられるかアァ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ