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30_トーナメントは曲者ばかりです

 さて、決勝トーナメント初戦。俺はステージ脇まで到達し、周りをずい、と見渡した。

 予選(?)の時以上の観客が居る。もしかして、本戦だけ見るという奴も居るということなのだろうか。まあ、百何十人も戦っているのをいちいち見る奴って結構物好きだよな。

 その物好きがかなり居たのだから、セントラル・シティの戦士選抜というものがいかに有名なイベントであるかがよく分かる。


「レディ――ス・エーンド・ジェントルメン!! いよいよお待ちかね――、決勝・トーナメントの・スタートだ――!!」


 さすがの歓声である。おそらく、ベストエイトに残るような連中だ。俺とは違って、かなり強い奴が多いのだろう。

 ルナがそっと、俺の手を握った。


「がんばって、アルト」

「……おう、ありがとな」

「決勝トーナメント出場者は、ステージに上がってください!!」


 言われた通り、俺はステージに上がった。最初の方で見た屈強な男達は、今はあまりいない――ふむ、所詮はモブだったか。

 ステージに上がったメンバーの中には、王宮で見たタマゴ・スピリット、そしてムサシ・シンマもいる。さすがに八人ともなると、ステージ上はガラガラだ。選ばれた者であることがよくわかる。

 え、俺、ここにいていいのか……?

 しかも、七人しか居ないんだが……


「それでは――、栄えある決勝トーナメント出場者、とても個性の強いメンバーを紹介します!」


 初めちゃうのかよ。残りはどうすんだ。

 当然、俺がAブロックなので俺から紹介されることになるか。

 俺は少し緊張して、改めて観客を見た。


「Aブロック代表!! 的確な受けと個性の強い技、そして究極の奥義『呪い』で数々の宿敵を葬ってきました!! キングオブ・ダメオ!! アルト・クニミチ――!!」


 え、あれ? 今俺、キングオブ駄目男とか言われた?

 なんで? 俺、何か司会者に喧嘩売るようなことした?


「Bブロック代表!! 巨大な斧を自由自在に振り回す、原始の国から来た野蛮人!! モンク・コースト――!!」


 斧使いのモンクか。モンクと言えば、武闘家のイメージがあったが。

 わりと中年という時期は過ぎているくらいの年齢の男だったが、力自慢なようで、自分と同じほどの質量を持った巨大な斧を振り回していた。

 ……え、Bブロック代表? ……ってことは、俺、こいつと戦うの……?


「Cブロック代表!! みんな知ってるあの男!! 決めポーズとその名前だけで対戦相手をひるませる!! タマゴ――!! スピリット――!!」


 おお、さすがスターだな。ルナの王宮で全裸待機をしていた男は、今はリンゴのアップリケを付けた白い戦闘装束に身を包み、観客に向かって投げキッスをしている。


「ありがと――う!! ありがと――う!!」


 ……なんか、一人だけ目立ってて腹立つな。


「Dブロック代表!! 壮絶な色香で名立たる強敵を骨抜きにしてきた魔性の女!! フルート・ビクトリアン――!!」


 おお、いかにも清楚な感じの美女だ。ルナとよくにた金髪だが、こちらはストレートだ。ルナはどちらか言うと、猫っ毛っぽい感じだからな。

 そういえば、初めて会った時のルナはツインテールだったのに、いつの間にかその髪はおろされている。あれ、いつからだろう……武器屋に居た時は既にこの髪型だった気がする。

 どうしてあの時はツインテールだったんだろうなあ。

 ていうか、こいつが魔性の女なのかよ。ほんと、人は見掛けによらないな。


「Eブロック代表!! 全ての能力が人並み外れているという噂!! もしかしたら人ではないという噂まであります!! ムサシ・シンマ――!!」


 ――あれだ。俺の気になってる奴。

 無表情で、紹介にすら返事もしない。だけど、どう見ても新真だよなあ、あの男。どうしてこんな所にいるんだろう。

 ……決勝まで上がって来たら、聞いてみるしかないだろうか。


「Fブロック代表!! ……は、現在遅れているそうで、まだここに居ません」


 お前か――――!!

 ……しかし、紹介させないためにわざと遅れているとかだったら、結構策士だな。


「Gブロック代表!! 自身の絵に魔力を込め、様々な異常現象を創り出す戦いのアーティスト!! ワドリーテ・アドレーベベ――!!」

 俺は、眉間に皺を寄せてその女を見た。


「っああ――――――!!」


 女が俺を見て、不敵な笑みを浮かべた。


「あれ、あんた。残ってたんだ。意外――」


 俺に適当な説明だけして参加させた、ベレー帽の女!! ……そうか、参加者だったか。運営が参加してはいけないというルールも、無いんだろうしな。

 いや、それにしたってこいつには返さなければいけないものが沢山あるぜ。何せお前のせいで、俺はルールすら分からずに参加したんだからな!!


「積年の恨み、覚えとけよ。まず何で俺、ナンバーオブ・ビーストなんだよ。百人ちょっとしか居ねえだろうが」

「あ、それ私の趣味ー」


 なんと適当な。ベレー帽の女――ワドリーテと言ったか。は、俺の事など無視してリリヤンをやっている。

 懐かしすぎだろ。何でステージ上でリリヤンやってんだよ。


「Hブロック代表!! ……何で勝ち上がって来たんだ? 二日酔いのオヤジ!! ……オヤジ――!!」


 いや誰だよ!!

 オヤジ――とか叫ばれても、困惑するだけだよ!! 迷い見え見えだよ!!

 司会者も無理して盛り上げようとしなくていいよ!!

 ……まあ、あいつは気にしなくていいか。ワドリーテの相手のようだしな。


 ひとまず、俺の相手はモンクとかいうオジサンだ。

 ……いきなり戦うポイントが難しそうな相手だ。何せ、俺には正攻法など使えないのだからな。

 さて、どうするべきか。


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