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24_今から本気出す、です

「こんのやろー……ちょこまか動きやがってちゃんと戦え卑怯者!!」

「何が卑怯だ。俺には俺の武器しかない。お前にもお前の武器しかない。ただ、それだけの話だぜ……!!」


 追撃だ。俺は少し転がって横っ腹を抑えているビストロに走った。そう、ビストロはそろそろ起き上がってくるだろう。

 起き上がりに二択を仕掛けるのは、格ゲーの基本中の基本だ。

 ビストロの動きを、しっかりと観察する。俺は少しジャンプし、両膝をビストロに見せ――上段ガードだな。予想通りだ。

 ビストロの目の前で着地すると、足払いを放った。立ち上がったビストロが再度転ぶ。


「おわっ!!」


 これを、中段とすかし下段の二択と言う。

 なんとまあ、たったこれだけの知識で戦っているとは。俺も慣れたものよ。


「キャ――!! ダーリーン――!!」


 トゥルーよ、俺はいつお前のダーリンになったんだ。

 まあ、応援されて悪い気はしないが。お前が戦った方が、多分強いだろうに。

 しかし、ラビット・ダンスの使い方も、敏捷の鉢巻の使い方も、なんとなくだが分かってきた気がする。パワーもリーチも飛び道具もないが、動きが素早いというキャラは山ほど触ってきたからな。

 まあ、言うほど素早くもないのが困りものだが。


「喰らえ!! <ボードアッパー>!!」


 起き上がり昇竜。……ふっ、青過ぎるぜ。無敵技を起き上がりと同時に撃つなんていうのはな、格ゲー界じゃ一番最初に捌かなければならない行動なんだよ……!!

 俺はバックステップし、ビストロの攻撃をかわした。


「な、なんで……!? なんで読まれてんの!?」

「お前が俺に寄越した十フレーム(想定)。謝るなら今のうちだぜ!!」


 再び、俺は前に詰める。ボードアッパーの隙に合わせて、俺は短剣を突き出した。

 弱パンチ!! 弱キック!! 弱パンチ!!


「おおっと――!! アルト選手、ビストロ選手を滅多打ちだ――!1」


 ダメージはほぼ無いだろうな、残念ながら。

 弱い武器に加えて、刃も殺されている。今更だがこの短剣、今までに受け以外で役に立ったことねえな。

 俺は右脚を出し、ビストロの胸元目掛けてヤクザキックを放った。


「ごらぁっ!!」


 多少ガラの悪い掛け声になってしまったことは否めない。だが、これが俺の最大コンボだ。ビストロは再びステージに転がった。

 ビストロのHPバーを確認する。……半分も減ってねえ。

 いくら知識があるからとはいえ、やはり体術では無理がありすぎか……


「ダーリンすてき――!! キャー!!」

「……おいトゥルー、お前ちょっと落ち着け……」


 暴走し過ぎだ。俺はステージ端まで戻り、落ち着かせようとトゥルーの頭を撫でた。

 ……駄目だ。目がどっか行ってる。乙女の顔だ。


「すてき……」


 まあ、トゥルーも見た目は大層可愛いので悪い気はしないが。それにしても、ちょっとやり過ぎだよなあ……


「アルト、起き上がってくる!! 馬鹿の相手なんてしてないで!!」


 ルナが辛辣な一言を浴びせる。まあ、そうか。今はこいつに構っている場合ではない、な。


「……弱そうだったから、馬鹿にしてた。もう、手加減しない。……本気で、やる」


 ――なに?

 手加減、だと……?

 俺はその言葉を聞いて、口元が引き攣る事を抑えられなかった。……手加減だったのか? 今の、手加減してたの? せっかく格好良い感じだったのに……

 瞬間、ビストロのスケートボードが――巨大化した。


「<レベル・セカンド>!!」


 ……あー、ね。そういうタイプのやつね。覚醒技撃つと一定時間パワーアップするとかいうタイプのやつね。

 この場合、効果時間ってあるんだろうか。……あるよな? あってくれ……


「……そうかよ。それで、どのくらいなんだ? 効果時間のほどは」

「教えない」


 あはは!! まあ、そうだよね!! 今までがちょっと異常だっただけだよね!!

 スケートボードはカヌー程の大きさになり、以前より横幅も広くなっていた。あんなもので殴られたら、俺は一発KOってところだろう。

 戦隊ヒーローの最終兵器みたいなもん持ってきやがって……


「<ホイール・スパイク>!!」


 どひゅん、と音がしたかと思うと、ロケットランチャーのような軌道を描いて――気が付くと、ビストロは俺の目の前に居た。俺は屈んで、どうにかビストロの下を潜る。

 ひええ!! 頭の上をウニみたいなのが通過していく!! 必死で前に走ると、ビストロと距離を取った。

 もう横になんて避けられるような幅じゃない。死ぬ。

 こ、これは短期決戦になるぞ。どうやって対抗すれば……


「コレを出させたって所までは、褒めてやるよ!!」


 わーい!! 褒められた!! 全然嬉しくねえ!!

 こんなもん、突撃してるだけでいつかは避けられなくなって終わりじゃねーか!! ビストロは一度ホイールの針を引っ込め、またこちらに向かって走ってくる!!

 な、何かないのか!? 何か!! 上から放物線を描いて飛んで来る攻撃なんて、ジャンプじゃ避けられ――


「砕けろおおオオオ!!」


 ちゃんと角度を計算してやがる。前にジャンプできない、後ろに跳べば場外、横には移動できず、潜ることもできない。

 こ、ここまでか――……

 俺は目を瞑った。


「憲法第一条!! 『モモンガと言わなければ攻撃できない』!!」


 ――あれ?


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