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18_武闘家は挑発的です

 とりあえず、足をどかして欲しい。

 俺の目の前に現れたのは、長い赤髪をすらりとなびかせた、スタイルの良い女だった。ルナはどちらか言うと美女って感じだが、こいつはなんというか、あれだ。

 そうそう、元気系。元気系だから発育が良い。

 オヤジか、俺。


「すいません、ちょっと踏まれる趣味とかないんで……」


 ぐりぐりと踏みにじられた。

 うわ、こいつ見た目に反して結構サドじゃないか。いや、見た目に反してないのか。見た目通りにか。どっちなんだ。

 女はネグリジェを着ていてスカスカなので、なんというか目のやり場に困る。


「あんた、呪いの言葉とかいうので勝ってた奴でしょ。意外と動けるかと思ったけど、そんな事なかったみたいだね」


 何しろ、ゾウの時の大跳躍はルナの力あってこその功績だったからな。本来の俺はご覧の通りの弱さだ。

 ……しかし、エルメスの時から着実に周りのレベルが上がっているような気がする。これが俺の予想する通りのファンタジーの世界なら、段々敵は強くなっていくんだろう。

 俺、こんな弱さで大丈夫なのか。


「あんた、名前は?」

「そこまで覚えていたのに名前は覚えていないのか」

「だって、戦いのレベル低すぎるし。覚えるまでも無かったのよ」


 ……腹立つな。なんだこいつ。

 俺はようやく離された女の足を横目に立ち上がると、腕を組んで女を見た。改めて正面から立つと、女のスタイルの良さが少し悔しい。

 ペチャパイなら良かったのに。いいか、世の中胸がある奴っていうのは性格が悪いと相場が決まってだな。

 いや、こいつを見たからそう思っているだけだ。俺は胸が大きい奴も大好きだ。

 誰に弁解しているんだ、俺よ。


「……フランケン・シュタイン」

「あっそ。フランケン、夜は静かにしなさいよ」


 本当に興味ねえんだな!! がっかりだよ!! 俺がっかりだよ!!

 しかし、この世界の人間はフランケンシュタインも知らないのかよ。それはそれで悲しいな。


「お前の名前は?」

「トゥルー・ローズ。しっかり覚えときなさいよ、雑魚」


 いちいち頭にくる奴だな。

 俺は若干青筋を立てるが、怒りはしない。紳士だからな。

 いや、戦ったら絶対に負けるからじゃないぞ。断じてそういう訳ではない。ただ、ちょっと女の子に怒るのは気が引けるだけだ。

 ……はー。


「はいはい。それじゃあトゥルー、おやすみ」

「あんた、明日のあたしの相手だから」


 ――とんでもない事を言って去っていきおった。

 マジか……


 次の日、俺は重い身体を引き摺りながら、ステージへと向かった。夜更かしはお肌に悪いんだよ。勘弁してくれ。

 まあ、代わりにルナとミヤビがよく眠れたようなので、それはそれでいい。

 ミヤビは何も気付いていないが、ルナは少し心配そうにしていた。


「……大丈夫? 顔色悪いわよ」

「実は昨日、コウモリに襲われてな」

「えっ……!? まさか、私を狙って――」

「そのまさかだ。危ない所だった。だがしかし、問題はそんな所じゃないんだ」


 ルナが青い顔をして、俺を見た。まあ、奇襲というよりは鬼蹴って感じだった。

 もちろん、トゥルーの話だが。


「朝ごはんが美味しくなかったのですか?」

「うん、ミヤビ……お前はどうか、いつまでもそのままでいてくれ」

「なんかバカにされた気がします!!」


 そう、問題はそんな所じゃないんだ。

 俺がステージに立つと、観客が一斉に歓声を上げる。俺も出世したもんだ。


「ホースコーナー!! 二回戦では驚くほどの大跳躍を見せました!! ザ・呪い使い!! アルト・クニミチ――!!」


 ザ、て。シンプルなんとかシリーズかよ。

 俺は苦い顔をしながら、対戦相手を見た。


「そして、シープコーナー!! 速さ、威力、技、連携、どれを取ってもピカイチ!! モモンガ流ケンポーの使い手!! トゥルー・ローズ――!!」


 なんだモモンガ流ケンポーって。すげえ弱そうだけど。

 トゥルーは長い赤髪を後ろで一本にまとめ、三つ編みにしていた。髪の色と同じ真紅の服はチャイナドレスのような造りで、胸元と太腿が見えている。エロい。

 装備も持たず、丸腰でステージに上がると――トゥルーは、俺に向かって挑発的な笑みを浮かべた。

 ……やばい。既に気圧されている。

 俺は覚悟して、敏捷の鉢巻を巻いた。


「一発で気絶させてやる」

「……フン、上等だ。言葉の力ってやつを見せてやるよ!!」


 一応口だけは達者でなければ。俺は笑みを返し、短剣を抜いた。

 丸腰で戦って、二戦も勝ち上がってきたような相手だ。相当の覚悟はしておいた方がいいな。

 ステージの端から端まで距離があるにも関わらず、俺はふんばり小剣術の構えを取った。


「それでは――!!」


 瞬間、トゥルーがぽかんと口を開いた。何事かと、俺は眉をひそめた。


「……アルト?」

「レディー!!」


 ――俺の名前を口にする。


「ゴー!!」


 瞬間、トゥルーは般若のような恐ろしい顔になって、俺に――牙を剥いた。


「フランケンじゃ、ないじゃない――――!!」


 えええ!?

 怒るとこ、そこかよ!!



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