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16_応援は色気と共にあります

「<ラビット・ダンス>!!」


 踊り……だと!?

 既に跳躍の姿勢に入ってしまった俺は、そのままスーパー戦隊のごとく飛び上がった。飛び上がりながらステージを再確認し、俺はルナの姿を発見する。

 ルナは水色のドレスを脱いで、あれは――チアリーダーだ!! きらきら光るチアリーダーのような格好になって、ポンポンを振って踊っている!!

 どこからあんなもんを……

 色々と揺れるものが俺の跳躍力と興奮を加速させる。


「フレー!! フレー!! ア・ル・ト!!」


 恥ずかしそうにやっている所がなお可愛らしい。しかし、支援が魔法でなく踊りとは……。もちろん、こんな事をするのはルナだけなんだろうな。

 俺は頂点に達すると一回転し、短剣を下に向けて落下を始めた。

 目指すのはもちろん――スッゴイデッカイ・ゾウの、鼻の先から数えて背中の鱗の十五番目――一、二、三、四……あそこだ!!


「な……なんだあれは!! エルメスの時は、あれほどの跳躍力などなかったはず……!!」


 ステージ端で俺を見ているゾウのヒーラーが、驚いて目を丸くしている。

 そりゃあ、そうだ。これは俺の力じゃないんだから。

 だが、一応演技だけはしておく。


「ふっ……残念だったなあ!! 俺を怒らせてしまったのがお前の最大の過ちだぜ!!」


 一応熱いキャラも演じておく。

 ……いや、好きでやってるわけじゃないぜ。ちょっと格好良い感じだから調子に乗ってるとかでも、ないぜ。


「ぜああああああっ!!」

「ちっ!! 時間切れか!!」


 落下は加速し、俺はゾウの弱点目掛けて短剣を刺――――!!


「まいった!! 降参だ!!」

「のわあああああっ!?」


 降参宣言をされ、俺は慌ててバランスを崩し、ゾウの背中に落下した。

 ぼすん、と無機質な音の後に、俺はべしゃり、とステージに崩れ落ちた。

 ぐんぐんとゾウは小さくなり、子犬ほどの大きさになった。

 ――静寂が訪れた。


「降参だ!! 降参宣言が来ました!! 勝ったのは恐るべき跳躍力の持ち主!! アルト・クニミチだー!!」


 ……あれ、これもしかして、俺逃げてるだけで勝てたんじゃね?

 ……あんまりに、あんまりだ。



「じゃあ、あれも私を狙って来た奴だったのね」


 試合が終わって控室に戻ると、開口一番ルナはそう言った。俺は頷き、ベッドに腰掛けた。

 スッゴイデッカイ・ゾウは特にそれっぽいことは言っていなかったが、ステージ端にいたゾウのヒーラーがそう言っていたから、間違いはない。

 しかし、二戦続けてこれだ。一体運営側にどれだけルナの敵が混じっているのか、分かったもんじゃないな。


「もしかして、この国はもう何者かに洗脳され始めているのかしら……」


 ルナはそう言って、窓の外を見詰めた。

 確かに、どいつもこいつも王女を狙ってここまで来たとしたら、これはもうテロにしか見えない。背後で何か、とても大きな団体が控えているとしか。


「……ルナを捕獲したり、あるいは暗殺することで、得する奴って居るのか」


 ルナが嫌そうな顔をして俺を見たが、俺は真っ直ぐにその瞳を見詰めた。本気であることを、分かってもらいたかった。

 こんなふざけた世界でも、人は人だからな。


「……いるわ。多分目的は暗殺じゃない、捕獲よ。それで、『王女の口付け』を奪うつもりなんだわ」

「奪って、どうする? 『王女の口付け』は、『勇者の血』と共鳴させるためのもんだろ?」

「勇者の血? ……ああ、それも一つだったわね」


 それも、一つ? ってことは、他にも何かあるってことか……

 ミヤビが珍しく真剣な表情で、こちらを見ていた。


「アルトさん、『王女の口付け』は、『勇者の血』に関わるだけのアイテムではないのですよ」

「そうなのか」

「はいです。世の中に伝わる、『四種の神器』を覚醒させるためのアイテムなのです」


 おいおい、またそういうなんとかかよ。三大魔導器具だの、シモンズの伝説の攻撃魔法だの、色々あり過ぎだろ。

 と思ったが、そうか。よく考えてみりゃ、『勇者の血』って剣なんだもんな。ということは……


「剣と、盾と、鎧と、兜ってとこか?」

「おお、アルトさんすごいですね! 大正解です」


 本当に、大筋はファンタジーRPGのそれっぽいな。細かいところは酷くずさんだが。

 世界各地を冒険して、伝説の武器防具を集め、最終的には魔王と対峙する、という。

 幼い頃は憧れたけど、いざ蓋開けて大人になってみると、懐かしさが先行してしまったりする。


「勇者の血、勇者の骨、勇者の輝き、勇者の目。この四つで、四種の神器です」

「……なるほど。んじゃあ、そいつを確保さえしてしまえば、後はルナ次第になるってことか」


 ルナは難しい顔をしていた。世界の鍵に自分が関わっているということも驚きだろうが、俺にはそれ以上の――何か、おかしな違和感みたいなものを覚えているように見えた。

 この世界は、おかしい。ルナの口からそんな事を、聞いてしまったからなのかもしれない。


「まあ、心配すんなよ。戦士選抜が終わったら、俺の家でのんびりしようぜ」


 顔が怖かったので、一応フォローはしておく。ルナが少し嬉しそうに笑って、俺を見た。


「いいの?」

「まあ、ここよりははるかに安全だからよ。ミヤビと三人で人生ゲームでもしようぜ」

「私はすごろくがいいです」

「変わんねーよ!!」


 どうにも、連帯感の出来つつあるチームだった。




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