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102_厳重なる大地の神、ノー・マルドです

 流石に、オレツエー邸の周囲に人が集まってきた。自らケルベロスに變化している様をゴードソの人々に見られているが、最早気にする余裕も無いようだった。……馬鹿め、自ら地雷を踏むようなことをしやがってからに。

 まあ、既に話し合いで解決出来るような段階ではないのだろう。まあ、俺はゴードソの人達が作った家を根こそぎ破壊しただけなのだが。

 あ、純金の教祖様像は気に入らなかったので壊させて貰ったが。


「『勇者の目』を返せ、小僧」

「やーなこった」


 パンナコッタ、と続けて言おうかと思ったが、教祖様の態度が更に悪化しそうなのでやめた。

 実際の所、このケルベロスはそれなりに強いんだよなあ。パスタのバズーカでもビクともしない肌を持っているし、さてどうしたものか。

 まあ、俺が取ることの出来る選択肢なんて一つしか無いんだけどね。

 俺は『勇者の目』を装着した。同時に、なんだか聞き覚えのある声が聞こえてくる。


『久しぶりな感覚だ。……貴殿は私の主であるか』


 一本筋が通った男のような、しっかりとした声が頭の中に聞こえてきた。イ・フリット・ポテトはあんなにふざけていたのに、他の神は意外とまともな奴ばっかりなのかな。

 身体に力が漲るのを感じる。まるで俺に、数千年生きた侍の魂でも憑いているかのような気分だ。

 まだサムライさんは生きてるって、俺。しっかりしろ。


「そうだ。このケルベロスを倒したい。力を貸してくれ」

「――懐かしいな、友よ」


 今度は、『勇者の目』からはっきりとそう聞こえた。俺が頷くと、突如として地震が巻き起こった。


「――な、何だ!? 何が起こっている!!」


 大地が揺れる。オレツエー邸の周りに集まってきた人々も、何事かと辺りを見回していた。だが、震源など特定出来る筈もない。そいつは、この『勇者の目』から発生しているのだから。

 俺は堪らず、膝を突いた。地面が盛り上がるような錯覚があり、俺の目の前に巨大な――髭面の男の姿が浮かび上がる。

 あるいは落ち武者のような、あるいは――大剣豪のようにも見えた。


「私は厳重なる大地の神、ノー・マルド」


 それは熊を二回りほど大きくしたかのようなサイズだった。同時にネックレスから、シルケットとシーフィードが登場した。


「懐かしいね、ノー・マルド」「懐かしいよ、ノー・マルド」

「双子か。お前達とまた出会えるとは、私も運が良いな」


 ……知り合いか? やっぱり神なのだから、知り合いなのだろうか。しかし、このパワーは恐ろしい。俺のレベルは一切変わっていないのに全身は力に溢れていて、今なら初めてちゃんとした『攻撃』ができそうだ。

 イ・フリット・ポテトと地球で暴走した時を除けば、初めて。そういう意味だが。

 俺は右手を翳し、大地に念じた。


「<グリーンウォール>」


 地面からツタがぐんぐんと伸びて、俺の周りを取り囲む。


「怪しげな術を……!!」

「バーカ。『勇者の目』の力だっつーの」


 ケルベロスは俺の目の前に現れたツタの壁を噛み砕こうとした。だが、その攻撃は途中で止まる。

 大地の神の底力、舐めちゃあいけないぜ。


「<エアロブラスト>!!」


 今度はシルケットとシーフィードの力を借りて、ケルベロスに一撃。突風にケルベロスは退いて、更なる攻撃の隙を作る。

 俺は宙を舞い、高速でケルベロスの回りを飛び回った。


「な、なんだあれ……!!」

「すげえぞ!! あのガキ、何だか分からないがつええ!!」


 まさか指をさして色々言われるとは、俺も出世したもんだな。

 ついこの間まで、俺は『呪いの言葉』くらいしか力の無いパーティーリーダーだったのに。


「援護します、アルトさん!! <にゅんぱっぱ劇場>!!」


 お前それは違うだろ!! 援護になってないだろ!!」

 ……と思っていたのだが、ピンク色の空間は俺を避けるように動き、ケルベロスを取り囲んだ。

 ミヤビは立ち上がり、タンバリンを叩き始める。


「にゅんぱっぱ! あそれ、にゅんぱっぱ!」


 ――あ、そうか。

 これ、そういう魔法だったのか。

 ミヤビの『にゅんぱっぱ劇場』は、決して皆でわいのわいの遊ぶという魔法なのではなく、敵の足止めをするための魔法だったんだ。

 今気付いたのか、ただふざけて自分達も巻き込まれていたのか。それは分からないが。


「なんだ……? 身体が勝手に……」


 例えて言うなら、これはタマゴの『輝かしい筋肉』の強化バージョンとも取れるだろうか。

 すげえな、ミヤビ。大したものじゃないか。

 パスタは状況に付いて行けず、ただ俺とミヤビを呆然と眺めていた。

 さて、それじゃあ俺も今繰り出すことのできる、最強の攻撃技を使わなければな。


「行くぜ、ノー・マルド!!」

「承知した!!」


 ――俺の右腕からツタが伸び、まるで筋肉のように盛り上がった。

 何故か、俺はその能力の使い方を知っていた。使い慣れているかのようだった。やがて俺の右の拳は自分と同じくらいのサイズの巨大な拳になり、俺はそれを構えて真上に跳ぶ。

 シルケットとシーフィードの能力のお陰で、俺はケルベロスの遥か上から飛び降りる事が出来る。


「<アース・マグナム>!!」


 俺は叫び、大上段から真っ直ぐに拳を振り下ろした。



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