鯖立て
アニマチオン内で、今流行っているゲームが存在している。
『ボックスアート』というゲームで、一応無料ゲームなのだが、時間経過で手に入れることのできるアイテムを、ノータイムで手に入れることができるのだ。アニマチオンメンバーでは、ほとんどが無課金勢。
そのゲームというのが、サンドボックスゲームと呼ばれる、非常に自由度の高いゲームで、そのゲーム世界の中で、ブロックを壊したり、敵に襲われたり、町の建物に立て籠って化物の驚異から逃れたり、あるいは敵が出てこないモードでのんびりと廃墟での生活を楽しんだりと、のんびりしたりせかせかと楽しんだりできるゲームだ。
今日の休憩時間も、その話でもちきりだった。
「昨日、籠城してたら、トラップを抜けてきたゾンビにショットガン撃ったら、床ごと打ち抜いちゃって超大変でしたよ」
「あるある過ぎてなんにも言えねぇ」
「危険が危ないからねぇ」
「それが慢心ですよ。最新の注意を払えって、どっかの大尉もよく言ってるじゃないですか」
「私も早くやりたいですー! うちのパソコンのスペックじゃ足りなさすぎてゾンビがカクカクで時を細かく飛ばして近づいてきてましたもんー」
「早くパソコン買えし」
そんな会話をしている日々が、アニマチオンの日常として確立しつつあった。
そしてそれから数日後。
「ついにパソコン買っちゃいました!」
このセリフを口にしたのは、前に事務所でボックスアートの話をしていて、パソコンのスペックの問題でできなくて羨ましがっていたAV担当の棚町さん。
「そこで皆さんにお願いっていうか、お誘いなんですけど……」
その時に事務所で休憩をしていたボックスアートのプレイヤーに向かって言った。
「みんなでサーバー作ってやりませんか?」
「え? 鯖? でもウチのパソコン、そんなにスペックないしなー」
照井さんが言う。
「俺のはスペック的にできるだろうけど、そこまでパソコン立ち上げてる時間は長くないし……なにより電気代ががが」
AV担当の平井さん。
「俺もスペックは……」
これが俺。
「大丈夫です! プレイよりも先にサーバーの立て方とMODの入れ方を覚えましたから!」
「なんでだよ。先にプレイしてみろよ」
「動画とかでは見てましたけど、いざ自分でやると操作が難しくて、ゾンビにすぐやられちゃうんですもん。周りに気をつけながらアイテム作るとか無理です!」
「自信満々に言うなよ」
「だからー、鯖立ては私がやるので、誰か一緒にやりませんか?」
ここまで言われてやらない人は誰もいなかった。
結局のところ、こーゆー自由度の高いゲームは、みんなでやるのが一番楽しいのだ。話題の共有もできるし、一人でやるよりも進展度が半端なく早い。単純に作業効率が何倍にもなるわけだし。
そんなこんなで、パソコンのスカイプのIDを教え合い、夜に棚町さんが立ててくれたサーバーに集合ということになった。
スカイプでは会話ではなく、主にチャットでの会話となった。
俺もサーバーに入ると、すでに照井さんと棚町さんが入っており、ログでその二人がいることはわかったのだが、早速二人の姿が見えなかったので、マップを見てみると、近くの町にいるらしかったので、木を取ったり草を取ったりしてその場所へと向かった。
途中で平井さんもやってきて四人が揃った。
チャットに文字が打ち込まれる。
棚町『揃ったので、新人を助けてくださいませ』
平井『自給自足の世界だ』
棚町『ひどい!』
照井『新人いびりだー』
黒塚『とりあえず家の中をトラップだらけにするんでしょ?』
平井『ホームアローンごっこですね。わかります』
白い三階建ての一軒家に四人で集まると、二人は他の家を漁って食料を調達。一人はトラップ作りの材料調達。もう一人は武器を調達。
分担するだけで効率はあっという間に上がり、食料を調達していた棚町さんは、照井さんと共に行動をしているうちに操作に慣れていた。平井さんはトラップ作成のための材料を調達してからの作成までの流れがスムーズすぎた。完全に効率厨の働きっぷりだった。
俺は町を回ったり、木材からボウガンを作ったりして、人数分+αの武器を用意しきった。
平井『も少しで夜ですよー』
棚町『戻らないと!』
平井『トラップ設置しちゃいますよー』
照井『戻らないと!(使命感)』
黒塚『俺、屋根裏で武器作ってるんで、各自持って行ってください』
平井『いつの間に屋根裏に!?』
照井『ザル警備ですな』
そんなこんなで夜にる前に家の窓の補強をしたりトラップを設置したりして、各自が武器を持って夜を迎えた。
もちろんゾンビは昼間でも活動はしているのだが、夜になると元気になって走って襲いかかってくるのだ。だからこそ夜が本番。
棚町『ドキドキしますー』
照井『サポートは任せろー。バリバリー』
黒塚『やめてー!』
平井『書籍コンビは仲良しですねー』
黒塚『入口付近は書籍担に任せろー』
照井『バリバリー』
棚町『私たちは?』
平井『二階の窓から入ってくるでかい虫とかをやっつけましょうか』
棚町『了解です!』
こうして長い夜が始まるのだった。
ゲーム編は特に続きません。