表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アニマチオン・うろな町店  作者: 山田さん
7/11

声優さん

「ではこちらから1番、2番、3番、という形で順番に並んでくださーい」


さっき放送が入ってイベントを始める前の整列に取り掛かった。

とはいえ、そこまで人数が集まらず、ざっと見ても30人いるかいないかだった。キャパ100人に対してこの人数は、少々問題ではあったが、ほとんど初めてのイベントに近いものもあるんだから上々と言えるだろう。もちろん店側の感想であって、メーカーさん側からしてみたら物足りないどころか爆死同然だろう。


「あ」

「やっほー」

「やっぱり来たんですね」

「私も好きだもん。ハルチ」

「何番っすか?」

「8番」

「んじゃ奥進んでくださいな」

「了解ですー」


てるみんさんこと、内村さんも来ていた。さすが幅広いオタクは地元のイベントには顔を出すのか。さすがとしか言えない。ちなみに照井さんは、今頃書籍の仕事をしながらイベント参加スタッフじゃなかったことを悔やんでいることだろう。こればかりは仕方ない。お仕事ですから。

こーゆー中の人イベントというのは、男性声優は女性が、女性声優は男性がそれぞれ偏るものだのだが、アニメがアニメなだけに、女性…というか親子連れもいてびっくりした。ってことはCD2枚買ったのか。すげぇな。きっと子どもにせがまれて参加させることになったんだろうけど、子供だけだと心配だからってもう一枚買った的な感じか。でも親の方もまんざらじゃないみたいで、ニヤケてるように見えなくもない。

と、ダラダラ整列をしていると、当日券も地味にはけていたようで、なんやかんやで50人近く集まった。それでも予定していたスペースの半分しか埋まってないもんだから、後ろの方はスカスカになっている。

それでもそれでも半分も埋まったんだから、我が店のスタッフに感謝していただきたい。何様だよ。


『それではまもなくお時間となりましたので、雪野ハルコさんのトーク&握手会を始めさせていただきます』

「「「おーー」」」

パチパチパチ


まばらな拍手が鳴り、司会進行のうちの社員の紹介と共にゲストさんが前に登場した。

整列を終えた俺は、そのままお客さんの後ろに立って、イベントを見ていた。スタッフの特権である。

マイクを渡されたゲストさんが照れ笑いと共に自己紹介を始めた。


「どうもはじめまして。雪野ハルコです。魔女っ子のイリーナちゃん役をやらせていただいてます。って、こんなに人集まってるんですね! ちょっとびっくりしちゃいました。前のところではこの半分くらいだったんで。アハハ」


ダメだ。可愛い。

お客さんも失笑しているものの、みんな同じことを思っているだろう。


「あっ、じゃあもう始まるみたいなので、マイクお返ししますね」

「えーでは一応トークをしまして、それから握手会のほうに移りたいと思います」

「あ、私にもマイクあるんですね」

「準備は万端です」

「一応さっきこんなこと質問しますから考えておいてくださいねっていうのを聞いているんで、ちゃんと考えておきました」

「それは言わなくてもよかったかもしれないですね」

「すみません」

「いえいえ。今日はここが最後だということで、時間オーバーしちゃっても大丈夫なんですよね?」

「はい。でも長くなりすぎるとお店に迷惑がかかっちゃうかもなので、なるべく早く終わらせるように努力します」


「えー! 長くていいよー!」


ここでお客さんからの一声。その声に笑いが起きる。

お客さん側からしてみれば長いほうが嬉しいだろう。でもお店側としては短く収まるとそれはそれで都合がいい。俺個人としては、長引いても構わない。ちょっとこの声優さんが可愛い。


「とりあえず質問のほうをしましょうか」

「はい。おねがいします」





「というわけで、トーク会のほうは以上としたしまして、引き続き握手会へと移りたいと思います」


トーク会は大成功だったと言えるだろう。可愛かったし。

俺もこれから魔女っ子を見てみようと思った。朝は起きれないからネットでだけど。

順番に握手していくのを見ていたのだが、本当にすることもなくなってきたので、書籍の仕事のほうに戻ることにした。

人ごみをかき分けて戻ると、作業台に置いたパソコンで照井さんがカチカチと告知を作っていた。


「戻りましたー」

「おさぼりお疲れ様です」

「ひどいですわ」

「私が参加したかったのに変わってくれない黒塚さんが悪いんですよ」

「店長命令だったんで仕方ないですよー」

「感情こもってないですー」

「書籍の仕事どうです?」

「もうみんなほとんどすることなくて、赤井くんがコーナーやってて、あとは返本と補充回ってもらってます。私は告知してました。それで5時半くらいから場所空け始めようかと。それもちょっとしかないんで、下の子に教えながらやってもらおうかと思ってます」

「じゃあ俺、教えます?」

「あっ、私教えます」

「……じゃあ俺がレジっすか」

「そうっすね」


早番が5時半で帰るため、レジの人数が足りなくなる。それを各部門から招集しているのだが、下の子をレジに入れることが多い。しかし今回は場所空けを教えるために、ほかの人がレジに入らなければならない。遅番は俺と照井さんと下の子。で、下の子がレジに入れず、照井さんがレジには入れないとなれば…そーゆーコトである。


「……まぁイベント見てきたし、入りますよ」

「そんなつもりじゃなかったんですけどね。まぁ日曜日なんですぐ空きますよ」

「そーゆーフラグ立てるのやめてもらっていいですか?」

「あら失礼」

「じゃあまぁそーゆーことで。俺、締切とか確認してきますわ」

「お願いしますー」






おしまい

……オチナカッタ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ