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アニマチオン・うろな町店  作者: 山田さん
3/11

休憩時間

お昼休み中の事務所。


「おつですー」

「あっ、黒塚さん! 聞いてくださいよ!」


昼飯を買いに行こうとした俺を引き止めたのは、山口さん。


「やっと4Vが出たんです!」

「マジで!? すげぇ!」

「でもAS振りにしようと思ったのに、HACDの4Vなんですよ」

「じゃあ型変えちゃえば?」

「Bが低いんで、無理に変えると交代読み交換で出してからのアタッカーぐらいにしか使えないんですけど、多分当たり負けしちゃうんですよね。もともとスカーフ巻いて使う奇襲型だったんですよ」

「マイナーは全部奇襲しか勝ち目ないもんなー」

「はぁ…もうちょっと粘ってみます」


そう言って山口さんは椅子に座って左右のボタンを交互に長押しする作業に戻った。

彼女はキャラクター担当で、某動画の実況者でもある。このことを知ってるのは、多分俺だけかな。唯一、うちの店でガチ勢だった俺と一緒にご飯食べてるときに『あーその型いいですねー。今度動画で使わせ』ってうっかり言ってしまったためバレた。俺は動画が上がったら教えてもらって、たまに反省会ならぬ戦略会議をすることもしばしば。

俺たちが事務所で狩りに精を出しているときでも、隣で社員が店長に叱られている時でも、絶対にその作業を中断することはなかった。

飽くなき執念こそが勝利をつかむのだ。

なので俺が昼飯を買って戻ってきてもまだその作業は続いていた。

片手はその作業をしていて、もう片方の手で食事、それ以外は他の人とのトークを楽しんでいる。器用なんだか行儀悪いんだか…

そんな山口さんは、今度行われる実況者大会に参加することが決まっていて、そのための育成の前の厳選中らしい。

統一タイプの実況者大会らしく、ゴーストタイプを使う山口さんの天敵である悪タイプの人が同じ予選リーグにいるらしく、その対策を練りながらの厳選と調整のし直しらしい。俺はそこまでやったことない。せいぜい努力値を2つにわけて振り分ける程度。調整とかはめんどくさいからやらないだけで、知識はある。種族値もほとんど覚えてるし。


「えー。魔王様って結局死んじゃうんですか?」

「死ぬってゆーか、魔王として機能しなくなるんですよ。だから魔王は死ぬって感じ」


「あのゲーム面白いですよねー。僕、ずっとやってましたもん」

「マジで? 買ったのかー。ってことはカード払いでしょ?」

「カード作ったらいいじゃないですか。どうせもう大人なんだし、使う機会なんかいくらでもあるし」


「で、あの監督が作ったのが今季のアニメなんですけど、全然ダメですわ。やっぱりあの時がピークだったんですよ」

「へ、へぇー」

「それでね、あの監督ってあの人気の作品が有名ですけど、その前に作ったアニメの方が俺は面白いと思うんですよね」

「へ、へぇー」


いろんな話が聞こえてくる事務所の長机。

そんな光景を見ながら聞きながら、買ってきた麻婆丼をパクパクと食べていた。


「あの、黒塚さん、休憩中すみません。これなんですけど、どこにあるかわかりますか? 赤井さんも照井さんもお客さんに捕まってて…」

「これは…B6男の棚の、左から3つめぐらいのコーナーやってるとこあるじゃん? あそこの…って行くわ」

「すみません」

「お客さんは?」

「予約カウンター前で待ってます」

「オッケー。じゃあ持っていくからお待ちいただくように言っておいて」


俺は口をティッシュで拭いてから立ち上がった。

こうして俺の休憩時間が削られていくのだった。


専門用語ラッシュでした。


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