表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃亡人生  作者: クク
第一章 “呪われた姫君と愚かな賢者”
1/18

プロローグ・こうして彼は迷宮へと逃げる

 感想、批評などお待ちしております。アドバイスやご指摘をいただければ嬉しいです。

 世界は狭かった。


 前を見ても後を見ても、そこには過去しか打ち捨てられていない。


 右を見ても左を見ても、そこには執念しか無為に漂っていない。


 世界は――狭かった。


 だけど、空は高かった。


 上を見上げると、そこには蒼穹があった。決して届かない、悠久の空があった。


 だから彼は、悟った。


 自分は、自分たちは、飛ぶしかないのだと。飛ぶことでしか、澱みきったこの世界から抜け出せないのだと。


 だけど、どれだけ高く飛ぼうと――世界は狭かった。



*   *   *



 夢を見ていた。


 小さな世界しか知らなかった、あの頃の夢。


 自分が捨てた、あの狭かった世界の夢。


 外に広がる世界を知ってしまったが故に、彼は空を飛べなくなった。


 それでもよかった。惨めに地を這うことになっても、それでもよかった。


 そのお陰で、あの世界から逃げ出せたのだから。


 ベッドから起き上がり、のろのろと部屋を出る。


 この酒場で美味くも不味くもない夕飯を食べるのも、今日で五十日目になるのかと考えると少し嫌になってきた。


 部屋に戻って今日は自主休業にしようかと真剣に悩んだが、日が暮れた今からが一番騒がしくなるこの宿屋兼酒場では、まともに寝れる自信がない。


  古くなって黒ずんできてる階段を下りて、まだほとんど客が入っていない酒場のカウンターの一番端に座る。五十人を収容できるこの広くも狭くもない酒場は、あと一時間もすれば客で一杯になるが、この時間帯なら何の心配もいらない。


 何時もの如く無難に今日の店主のオススメを注文して、出てきた料理をもくもくと口に運ぶ。


「あー……、今日も普通の味だ」




 中庸な宿で平凡な夕食。この迷宮都市に迷い込んでからちょうど五十日目である今日は、何時もと同じくこうして夜を迎えたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ