幸福論
世界に幸福や不幸があるのは
何が原因と考えますか?
原因が消えたら
そこはきっと
素晴らしい世界
でしょうか
人間は
幸福を追求する権利がある
私は不幸な人間だ
いっそのことお金など
無くなってしまえばいいのに
そう思い、
私は生徒たちと
修学旅行で来ている
京都の神社の賽銭箱に
五円玉を放りこんだ
私は教師をしている
だが借金に追われる生活なのだ
親が作った借金は
子がどんなに頑張って公務員になったところで、
全て借金に吸い取られる
無駄だと知りながらも
私は目を閉じ
手を合わせた
パンパン(手を叩く音
目を開けるとそこは見慣れた町だった
私は今京都の神社にいたはずだった
いきなりワープなどする筈がない私は携帯で日付を確認した
2032年06月27日
私は驚いて携帯を落とした
しかし町は木一本変わっておらず、見知っている人の顔も変わっていない
私は携帯が壊れているだけだと、それを拾い上げ、
幸い日曜日だったため
そのまま帰ろうとした
歩いていて
私は思った
町全体の雰囲気がとても良く、
道行く人みなが笑っている
そして私は
驚いた
学生がたこ焼きを注文し、
たこ焼きを受け取って
お金も払わず笑顔で挨拶し
帰っていったのだ
私はそれを見て
立ち止まっていると
たこ焼き屋のおじさんが
「おにいさんは何にする?」
と訊いてきた
節約も心がけているので、買う気も更々無かったが
流されやすいタイプの私は
つい八個入りを注文してしまう
値段がどこにも書いてないことに私は動揺し、
「いくらですか」と尋ねた
すると
「いつの時代の冗談だ。2020年に円制度は無くなったろう(笑)」
私はそれにひどく驚いたが
深く問うとややこしいので
「そうでした(笑)」
と言って立ち去ろうとした
その時
「万引きは許さんぞ!!」
と言ってきた
「だって円制度は無くなっ…」
「あんた政治に全く関心を持ってないな。お金の変わりに笑顔が採用されたんじゃないか。今この町も笑顔で回っているだろう?」
「じゃあ何の為に働くんですか?」「笑顔の為に決まってるだろう」
私だったら
笑顔の為に働こうとしはない
しかしこの町の人は…
「さあ貴方の笑顔を見せてもらおう」
笑うなんて最近
考えたことも無かった
職員室でも一人
授業だってこちらが一方的に話をするスタイルで
笑い及び笑顔などうまれない
どうやって笑顔を
作るのだろう
私は笑い方を
忘れてしまっていた
「上手く笑おうなんて思わなくていい。歯をくっつけながら口を開けてみろ。そして嬉しかった思い出を思い出せ」店主にアドバイスをもらい
私は従ってみた
そして私はたこ焼きを手にした
笑うことが
こんなに苦しいなんて
初めてだった
次の日私は学校へ向かう
この世界にはお金がなく
笑顔で回っている
という事を肝に銘じて
車を走らせた
「おはようございます新川先生」職員室に入ると
他の先生方が
温かく迎えて呉れた
そして私は彼らの顔が
変わっていないことに
ここが未来であるということを
信じられない気持ちにもなった
「お、おはようございます」
そして授業では
生徒が活発に手を挙げて
教師と生徒の両者が
積極的に学ぶ
授業スタイルになっていた
私は笑う事が自然になり
笑顔が苦しいなど思わなくなった
私の授業は
笑顔溢れるよい授業として
評価を受けて
借金も当然存在しとおらず
全てが笑顔で買えて
私は幸福だった
マネーレス社会こそが
私の望んだ社会だ!!!!
「先生」
廊下で一人の女子生徒に
声をかけられる
彼女は声が小さく
身長もクラスで一番低く、
表情に乏しい性格の子だった
「どうした南、」
「先生。どうしたら上手く笑えますか」私はその質問にぐっときた
まるでこの社会を知る前の
自分だったからだ
私はたこ焼き屋の店主に
言われた通りを教えた
「上手く笑おうなんて思わなくていい。歯をくっつけながら口を開いてみなさい。そして嬉しい思い出を思い出せ」
彼女はその通りにし、
私に笑顔を向けた
その笑顔はとても美しく、
眩しかった
そして次の日から
彼女は
クラスで一番明るい子になった
「先生。ありがとう」
そう言って南が差した笑顔は
とても自然で
魅力的であった
私は笑顔の為に働く意味を
知ることができた気がした
「先生っていつも笑顔だよね」
一人の生徒が言い出した
「だよね〜見てるこっちまで笑っちゃう(笑)」
ははははははははははは
そういって私たちは
いつまでも笑い続けた
ははははははははははは
ははははははははははは
笑い続けた
ははははははははははは
ははははははははははは
ははははははははははは
ははははははははははは
「おい、笑いすぎだぞ」
ははははははははははは
ははははははははははは
「静かにしてくれ!!」
ははははははははははは
笑い声が大きすぎて
私の声など届いていない
私は笑い声に窒息しそうになる
私は耐えきれなく
教室を出た
職員室に入ると
私を見て
連鎖的に笑いだす
ははははははははははは
ははははははははははは
ははははははははははは
町を歩いても
電車に乗っていても
店に入っても
電話をかけても
笑い声がやまない
ははははははははははは
ははははははははははは
ははははははははははは
何がそんなに
可笑しいんだ!!!!!!
気が狂いそうだ
うわあああああいあああ
ーーー五年後ーーー
「優勝は…"あらかーわいわい"さんです!!!」
「あらかーわいわいさんは三年連続Rー1グランプリ優勝で、殿堂入りです!!!」
ワアアアアア!!!(歓声
私はピンお笑い芸人"あらかーわいわい"として売れまくった
毎日何千人もの人を笑わせ
幸福を見つけている
もちろん
給料は視聴者の笑顔と笑い声だ
金が消えて
笑顔の世界となった
しかし主人公は
自分が大きくなるに連れて
金の世界に戻りたいと
思ったはずじゃないでしょうか
金社会で生きる貴方は今
幸福ですか?